撫子の華が咲く

茉莉花 香乃

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番外編ー弐 兼道の疑問

02

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今考えれば、もしわたしの子だとしても云い出せなかったのはわかる。
わたしには一目もその子を見せてくれることはなかった。あの屋敷で、男の子が遊ぶ姿は…見かけなかったように思う。

それでももう確かめることはできない。儚くなって何年経つか?

撫子と乳姉妹たちは身を寄せて、助け合い育ったのだろう。
撫子が健やかに育ったのはあの姉弟のおかげなのだろう。

そうでなければ、身代わりで入内など…、できるものではない。

そう云えば、政子は女御さまが屋敷に来られた時には『何故わたくしが世話をしなければいけないのですか?』と家令にブツブツ文句を云っていたのに女御さまを一目見て気に入ったのか、いそいそと入内の準備を始めた。

政子は三の君を溺愛しており、そして女御さまは…三の君に良く似ていた。

翌日、桔梗に会いに飛香舎ひぎょうしゃを訪れた。

「如何されたのですか?何か問題でも?もしやどこからか秘密が漏れたのですか?」

二人で話したいと、聞きたいことがあると伝えてあったはずなのに、秘密が露見したのかと聞いてくる。

それはいつも張り詰めて守っているからなのだろう。女御に仕えると云うだけで、後宮での生活は気苦労が多い。衛門や日向が上手く支えていると思うが一番気を張っているのはやはり桔梗だろう。

「何も心配するようなことはないから落ち着いて」
「そ、そうなのですか?良かった」
「桔梗…そんなに一人で抱え込まなくても良いんだよ。今では主上も兼房も知っていることなんだ。みんなで守ってあげられるんだから」
「はい、ありがとうございます」
「ところで、聞きたいことがあるんだ」
「ああ、そう云えば…取り乱してしまい申し訳ございません。そのようにお聞きしておりましたのに…。わたくしでわかることならば…何なりとお尋ね下さい」
「あなたしかわからないことだよ」
「はあ、それは?」
「女御さまの父君についてなんだが。母君から何か聞いてはいないだろうか?あなたの父君はあなたが生まれて直ぐに身罷られたと聞いたよ。では女御さまの父君は?」
「わたくしは…はきと聞いたことがないのです。…それより…惟忠…いえ、女御さまの父上のことをなにゆえお尋ねになられるのですか?」
「いや…ちょっと気になったものだから」

そうだな、女御さまがわたしの本当の子だったとすれば、桔梗が知っていれば云ってくるだろう。
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