エスポワールで会いましょう

第二章

２ー07

「えっ、奈津美に…？」
「そ、そっ！神田さんって橘と付き合ってるんだろ？月島に取られちゃうかもよ～」
「……奈津美とは付き合ってないけど…」
「名前呼びで！なに？付き合って無いとか、あり得ん！」

その子は興奮して言ってくる。

「じゃあさ、二人は付き合っちゃうかもね。月島と神田さんならお似合いだよね」

「羨ましい！」とか「俺も彼女欲しい～」とかいろいろ言ってる。一人で盛り上がってるけど……誰から聞いたのだろうか？

奈津美が月島君と付き合うことは無いと思うけど、月島君が奈津美に告白したという事実は僕を苦しめた。

苦しい理由は知りたくない。









「ねえ、裕樹」
「なに？」
「最近、学校の中で迷わないと思わない？」
「そう言えば、この頃迷ってない」

もう慣れたってことだよね。ても、急にどうしたんだろう？

「中学の時はいつまで迷ってたか覚えてる？」
「いつだったかなぁ？二年の始めくらい？」
「違うよ。二年の三学期だよ。そして、一年の一学期は迷ってなんかいなかった」
「！……そうだったかな…そんなことないよ…」
「おばさんは裕樹が方向音痴だなんて思ってないよ。奈津美さんも言ってた。……修学旅行のホテルの中や街でも迷ったことなんか無かっただろ？」
「………」
「小寺先輩が卒業して、学校に来なくなってから迷わなくなったんだ」