エスポワールに行かないで

茉莉花 香乃

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side和ー5

07

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ダメだ。

あの時も俺に触れてはくれなかった。

それに翔悟さんはあの人のものなんだ。甘えてちゃいけない。

「和、触っても良いの?」

優しくて逞しい腕で抱きしめて、囁くように嬉しそうに言ってくれる。

「…いっ、いよっ。む、無理…しっなく…ても…」

優しい笑顔は俺のものじゃない。

傷付いた俺に対する同情だ。同情に縋ってはいけない。

「本当はずっと触れたかった。二年前に俺に勇気があれば和は、オレから離れなかったのか?」

優しい手が服の中に入ってくる。

頭と顔だけ殴られたと思っていたけど、お腹も蹴られたのか殴られたのか、結構痛かった。
湿布と包帯でぐるぐる巻きになってる身体を優しく優しく触ってくれる。

「痛そうだな」

まだブルブル震える俺の身体を翔悟さんの手がゆっくりと撫でていく。

暴行の時にされた性的な触り方ではない。俺の身体に残っている嫌な記憶を上書きしてくれる。

翔悟さんに触られていると言う事実が俺を落ち着けた。

「ここが病室じゃなかったら。和が怪我なんかしてなかったら…。和、おやすみ。ずっと側にいてあげるから」

そして俺は眠りに落ちた。

眠る前に翔悟さんの唇が俺の口を優しく塞ぐ。触れるだけのそれは直ぐに離れたけれど、髪を梳く温もりは離れることはなかった。

「翔…」

…手を繋いでて…。


翌朝目覚めたら、まだ薄暗かった。
翔悟さんがベッド傍の椅子に座り俺の直ぐ側で寝ている。思わず手を伸ばして今も大好きな人の髪を梳く。

もう片方の手は翔悟さんが握ってくれている。
もう点滴は終っていた。
ずっと居てくれたんだ。

嬉しい。


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