エスポワールに行かないで

茉莉花 香乃

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side和ー5

10

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翔悟さんが俺を抱きしめて、耳元で、

「ズボン降ろされてたそうだ。レイプされたかとエスポワールのマスターが心配してた。だから、その検査」

その時、裕樹と月島が部屋に入って来た。

「和希!」
「裕樹、大丈夫?」
「うん、僕は大丈夫だよ。ごめんね…」

と抱き付いて泣き出してしまった。

ちょっと痛かったけど、裕樹の頭を撫でて、柔らかい髪を梳いた。

「心配かけてごめんね…。俺も大丈夫だよ」
「仲直りしたんだね。良かった…」

と俺と翔悟さんを涙でぐちゃぐちゃの顔で見て、笑った。
相当心配していてくれたのか、安心した顔は嬉しそうに綻んでる。

今思うと、教室で永井さんの話をしていたのは、祐樹から見て永井さんがただの友だちだとわかっていたからなんだろう。俺が変に勘違いしているなんて微塵も思ってなかったから、普通に話題にしていたんだ。

「翔、告訴はしない。被害届も出さない」
「良いのか?被害届だけでも出しといた方が良いんじゃない?」

首を振って、手を握り締めた。
『忘れたい』これが本音だ。
状況の説明やその他の事を考えると、そっとしておいて欲しい。

「わかった。月島くん、叔父さんに連絡してくれるか?…和、オレ、仕事なんだ…行ってくる」

ぎゅっと抱きしめて、触れるだけのキスを落として翔悟さんが部屋から出て行った。

裕樹は擦り傷と精神的なショックだけのようで、俺の落ち着いた様子を見て、裕樹もようやく落ち着いたようだった。
なので、裕樹はやはり今日退院できるそうだ。良かった、殴られてなかったんだ。
元から入院しなくてもいいくらいの怪我だったのに、マスターが無理矢理入院させたらしい。月島並みに裕樹の事を溺愛しているから…。

「ねえ、誰が助けてくれたの?」

翔悟さんに聞きそびれてしまった。


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