天使のローブ

茉莉花 香乃

文字の大きさ
84 / 173
第五章

21

しおりを挟む
ダレルは移転魔法も成功しているから、今回の手紙移転も難なくできた。先生はみんなにお手本を見せるためと、難しすぎるのではないかと尻込みする子が一部で出てきているのに、景気付けのおつもりだったのだろう。

「いいですか?学園長へ手紙を届けるのに何も書かず出すのはあまりに失礼というもの。何か一言…そうですね、今回の意気込みとか、将来の夢など署名と共にその紙に書いて届けてください。
脅すわけではありませんが、あまり思い切ったことを書くと失敗した時……恥ずかしいですからね。以前…何年前でしたか…成功すると信じ、好きな子の名前を書いてこれが成功すれば告白しますと学園長に高らかに宣言したのに、直接その子に届いてしまい失敗して…失恋しました。その好きな子への思いが強すぎてね。学園や寮は手紙移転も移転魔法も使えませんから、その子の実家に届いたのですよ…可哀想に」

こんなこと言われたら、余計尻込みしちゃうんじゃないかな…。そう思ったけど、踏ん切りが付いたのかやってやろうじゃないかって思った子が多かったようだ。

魔法学の先生はバーンズ先生の他にも何人かいらっしゃって、非常勤で教えに来てくださる先生もいる。

六年生は全員が五年生より早く手紙移転を成功させたら、移転魔法を今年教えて欲しいと直訴していて、担当の先生は頭を抱えていらっしゃる。僕たちには是非六年生より早く成功させて欲しいと言われたそうだ。ロドニー兄上たち七年生が苦戦していたのに…勘弁してほしい…と誰もが思っておられるみたい。

この課題でもダレルの次に成功させたのはアシュリーだった。

「ねえ、学園長に何て書いたの?」

寮の部屋、アシュリーの膝の上で跨るように座ってる。重くないのかと心配する僕に、離れていたくないから…なんて言われたら嬉しくなっちゃう。

「ぁっ…んっ…はぁ…」

僕への返事の代わりにキスをくれる。いつもの始まりより激しく絡まる舌に息が上がってしまう。どうしたのかな?肩に添えていた手を背中に回し、抱きつく力を強くする。

僕だけに見せてくれる不安気なアシュリーの態度や顔は、信頼してくれている証。

だから、そんな顔はして欲しくないけれど、僕だけに…って思うと仕合わせだ。

『どう、したの?』
『んっ?何でもない』

キスをしながら会話する。
便利だよね、これ…。

『ダメ、だよ。僕には、ちゃんと、言って』

キスをやめて顔を覗き込まれた。寮に帰ってきた時とは違う落ち着いた様子に安心した。

「ほら、大丈夫だよ?俺にはジュリが付いててくれるから…。こうして、抱きしめて、キスすればそれだけで」
…不安はなくなるから…。
「だから、その不安を教えてほしいな。どんなアシュでも大好きだよ。でも、僕に秘密を持つのは嫌だ」
「ジュリ…愛してる」
「んっ?僕も愛してるよ。だから…ねっ?」

チュっとキスをして、誤魔化そうとするアシュリーの頬を両手で挟む。

「理由なんてないさ。ただ、漠然とした不安だよ。今日、手紙移転を成功させた。学園長からのお祝いと励ましの手紙をバーンズ先生から渡されたんだ」

学園長は成功した証として何かしらの手紙を書いていて、今年は忙しいと言っておられた。五年生は僕たちのクラスだけだから、そんなに変わらないと思うんだけどな…。

「その手紙にさ…期待してるとか、はっきり書いてないけど、こんなことは出来て当たり前みたいに取れる文章があって…頑張ったのになって思っただけだよ」
「僕はまだ、成功してないよ?」
「学園長に他意はないんだよ、きっと。陛下始め、国全体が浮かれてる。その原因が俺たちなんだなって思うと、ちょっとね」

幼い頃に気付いてしまったアシュリーは、今まで何度もこんな不安と向き合ってきたのだろうか?父君にも言ってなかったみたいだから、一人で抱えてきたんだ。
僕は気付いた途端にアシュリーが守ってくれた。

アシュリーの背中に腕を回し少しだけ魔力を集める。心を癒すのは身体を癒すより魔力の集中が必要だ。そして、完全に癒すことは難しい。

「ジュリ…ありがとう。でもね、俺はこうしてるだけで癒されるんだよ」

そう言って、キスをした。

「一番の癒しは…俺のを咥えて、可愛く啼いてるジュリが…」
「!……もう!」

は、恥ずかしいよ。

「今度の休みに、ジョナス殿下に会いに行こうか?」

アシュリーの提案に驚きながら、頷いた。あんなに殿下に会うなって言ってたのに。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

ユキ・シオン

那月
BL
人間の姿をした、人間ではないもの。 成長過程で動物から人間に変わってしまう”擬人化種”の白猫青年と、16歳年上のオッサンとのお話。 出会ったのは猫カフェ。白猫従業員としての青年と客としてやってきたオッサン。 次に再会したのは青年が人間として通う大学。オッサンは保健室の先生だった。 青年が金のためにヤバいことをしていて、あるトラブルが起こる。 そこへ見計らったかのようにオッサンが飛び込んで救出したのをきっかけに2人の距離は縮まり…… ※表紙絵は自作。本編は進むにつれてどんどん動物園と化します(笑)

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

隣人、イケメン俳優につき

タタミ
BL
イラストレーターの清永一太はある日、隣部屋の怒鳴り合いに気付く。清永が隣部屋を訪ねると、そこでは人気俳優の杉崎久遠が男に暴行されていて──?

ギャップがあり過ぎるけど異世界だからそんなもんだよな、きっと。

一片澪
BL
※異世界人が全く珍しくないその世界で神殿に保護され、魔力相性の良い相手とお見合いすることになった馨は目の前に現れた男を見て一瞬言葉を失った。 衣服は身に着けているが露出している部分は見るからに固そうな鱗に覆われ、目は爬虫類独特の冷たさをたたえており、太く長い尾に鋭い牙と爪。 これはとんでも無い相手が来た……とちょっと恐れ戦いていたのだが、相手の第一声でその印象はアッサリと覆される。

愛と猛毒(仮)

万里
BL
オフィスビルの非常階段。冷え切った踊り場で煙草をくゆらせる水原七瀬(みずはらななせ)は、部下たちのやり取りを静かに見守っていた。 そこでは村上和弥(むらかみかずや)が、長年想い続けてきた和泉に別れを告げられていた。和泉は「ありがとう」と優しく微笑みながらも、決意をもって彼を突き放す。和弥は矜持を守ろうと、営業スマイルを貼り付けて必死に言葉を紡ぐが、その姿は痛々しいほどに惨めだった。 和泉が去った後、七瀬は姿を現し、冷徹な言葉で和弥を追い詰める。 「お前はただの予備だった」「純愛なんて綺麗な言葉で誤魔化してるだけだ」――七瀬の毒舌は、和弥の心を抉り、憎悪を引き出す。和弥は「嫌いだ」と叫び、七瀬を突き放して階段を駆け下りていく。 「……本当、バカだよな。お前も、俺も」 七瀬は独り言を漏らすと、和弥が触れた手首を愛おしそうに、そして自嘲気味に強く握りしめた。 その指先に残る熱は、嫌悪という仮面の下で燃え盛る執着の証だった。 毒を吐き続けることでしか伝えられない――「好きだ」という言葉を、七瀬は永遠に飲み込んだまま、胸の奥で腐らせていた。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター
BL
 ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。 自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。 ――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。  そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように―― 「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」 「無理。邪魔」 「ガーン!」  とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。 「……その子、生きてるっすか?」 「……ああ」 ◆◆◆ 溺愛攻め  × 明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる

ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。 そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。 「一緒にコラボ配信、しない?」 顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。 これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。 ※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。

処理中です...