sweet!!

仔犬

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territory!

4




料理はどれもこれも美味しくて箸もフォークもスプーンも止まらない。ここがどこで先輩達にとってどんなところなのかとかそう言った難しいことを考える暇もなかった。

「おいひい~、クラブの料理がこんなに美味しいなんて知らなかったね」

「確かに美味しすぎるなぁ、チーズとろけるぅ」

おれも秋もほっぺだがずり落ちそうなほど顔が緩んでいる。出来立て熱々で洋食のいいとこ取りをこれでもかと盛り込んだメニューだった。

「ご飯が不味いと全部嫌になるからねー」

豹原先輩はそう言っているが彼の持っているものはフォークでも箸でもなくシャンパンである。先輩たちはご飯とお酒半々のペースで食事をすすめていた。

お酒は母さんが飲んでいるのをひとくちだけもらった事がある。ビール。でも、あれは、不味かったなぁ……。
きっとそのうち美味しいとか思うんだろうか先輩達のように……あれでも先輩達は本当はまだ飲んじゃダメなんだけど、いや、あれはまだお酒とは言われていないのであって炭酸水と赤いジュースだ。そうなのだ。

そっと目を伏せ、逃げ道を探して隣の優を見ればアボカドのカルパッチョが気に入った優が黙々と食べていた。ジュースを煽る先輩を見てようやく口を開く。

「先輩達がお酒やタバコを吸っているところを見るとやっとチームのひとなんだなぁって実感しますね。怪我の手当ても料理も、普通の人の100倍は優しいけど」

「ああせっかく心のフィルターかけたのに~!」

「え、何突然」

「いいえ、続けてください……」


もう全部聞かなかったことにしよう。


「それは嬉しいな。それでも火の無いところに煙は立たないよ。買いかぶり過ぎだ」

天音蛇先輩がいつもと変わらぬ笑顔でそう言った。嘘でもなければ自責でもない。本当のことを淡々と言った、そんな感じだ。
噂は色々なものがあり、悪い噂も当然沢山ある。それでも先輩達の人気が衰えないのはおれ達に向けられた優しさのように、そういう所からきているんだろうな。

「まあ綺麗なもんではねぇよ。それなりだな」

「こっちの世界にしてはきれいな方ではあるよネ~」


獅之宮先輩も豹原先輩も核心には触れないので、あまりよくはわからないが自分の人となりを隠すつもりはなさそうだ。見えるものは見せる、そんな風に見えた。


「氷怜さんちょっといいですか」


ノックが二回叩かれ、獅之宮先輩の返事で席を外していた赤羽さんが顔を出す。ディナーを一緒に出来ず少し残念だったが、何やら忙しそうだ。獅之宮先輩と一言二言話すとすぐに赤羽さんは出て行ってしまった。


「どうかしたんですか?」

「ちょっと主要なメンバーを集めてんだ。今日の事でな」

「あの、実はおれのせいで先輩達の予定すんごい狂わせてたり……」


おれがわなわなと震えたのが面白かったのか先輩が余裕の表情で笑い返した。

「そんなんで俺たちは崩れねぇよ」

「でも……むぐ!?」

食い下がるもその途中でおら、食後のデザートだとケーキを口に入れられた。これもまた美味しんだよな、困ることに。

素直にもぐもぐするおれに満足した獅之宮先輩は足を組み直してドリンクを飲む。その光景が優雅で男らしい。

「言ったろ、あいつらが元々手を出したんだ。それもかなり悪質な方法でな」

「このテリトリーのルール、犯したのは向こうだからね。こちらも容赦なく最後まで正すつもりだよ」


やはり肝心な部分が分からず、どうにものめり込めない。思わず自分にやれる事が有ればなんでもと言ってしまいたくなるが、中途半端な助けなんて要らないはずだ。
秋も優も消化不良な顔で先輩たちを見ていた。


「なに、暗ーい。せっかくご飯食べてるのに、だいたいオレはボコボコに喧嘩出来ればそれでいいんだから~」

「はぁ、お前本当は頭使えるのにどうしてそう欲望に忠実なのか……」

「オレは身体動かしてる方が好きだからネ」


ベッと舌を出した豹原先輩。
その時おれは唐突に思い出した。服好きな優は良く雑誌を買うのだが、この前読んでいた雑誌に同じポーズのモデルが写っていたのだ。髪の毛は金髪だったが目の色や口の形、その横にあるホクロまで同じだ。まるでパズルのピースが揃うように記憶が蘇る。


「ゆ、ゆう、優……」

「ん?なに」

「この前見せてくれた、雑誌持ってる?」

唐突に聞いたおれに驚きながらも真剣さを汲んでくれたのか真顔ですぐにカバンから取り出してくれた。
さすがオシャレ番長だな君は、雑誌は愛読書だ。

「雑誌読むんだね」

「俺、服が好きなんですよ」

天音舵先輩と優の穏やかトークを横におれはペラペラと素早くページをめくっていく。

「えっと、あった!」

「え、あー」

「ん?……おお!」

覗いてきた秋も声を上げた。

ピシっと指をさして先輩達の前に雑誌を広げ、ショートケーキを食べようとしていた豹原先輩におれは叫ぶ。

「これ、豹原先輩ですよね?!」

「んー?あーソウネ。ポンピーン!」


ポンピーンのところで今度は苺を口に入れられた。

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