22 / 378
territory!!
4
しおりを挟む「じゃあ唯斗くんたちは偶然ネロとぶつかって追いかけ回されてたの?しかもそれを助けられて……やだー!すごい偶然ね、運命的!」
きゃー!と可愛い悲鳴をあげるサクラ姉さん。
さっきまで氷怜先輩が座っていた椅子で長い脚を組み、おれがまずいと言ったシャンパンを美味しそうに飲んでいた。うーん、大人だ。
今度はおれがその椅子に近い方に座りその次に秋と優だ。
サクラ姉さんはひとしきりおれたちの事情を聞くと楽しそうな笑みで顎に手を当てた。シンプルなジェルネイルが綺麗な指を飾っている。
「でも君たち好かれたのね、ここに呼ばれるなんて」
「あー、でもおれ肩怪我しちゃって、もう病院もやってない時間だったからここに……」
肩に手を当てたおれにサクラ姉さんが一瞬顔をしかめた。
「あ、やられたわけでなく自分で突撃しちゃって。でもそんなに酷くないです!」
「そう……?早く治ればいいわね」
おれの言葉に少し安心したようだが悲しげだ。言うべきではなかったのだろうか。
でも続いて出てきた言葉は少し楽しげだった。
「たぶんここに最初から連れてこようと思ってたんじゃないかしら」
「え?」
「だって舜くんがいたならその場で見て判断出来たと思うのよね。たぶんタイミング図ってたのよ。あ、氷怜くんじゃなくて舜くんね。彼ほーんとによく見てるから」
噂好きな女子高生みたいな顔でサクラ姉さんが笑った。秋も優も少し驚いている。
「な、なぜ?」
「うーん、何故だろう?でもあれはかなーりの悪ガキよ」
「ふっ……」
優が1番に笑い出した。いや、頑張って抑えてるけど肩まで震えてる。優ったら赤羽さんのこと悪ガキってもしかして思ってたの?
あの人たちに悪ガキと言えるのはこの人くらいではないのか。
「サクラ姉さん……一体何者なんですか」
「私?そうねぇ、後で知ると思うし今はナイショ!」
「えー!」
おやつを取り上げられた子供のようにおれたちの声が被った。その様子に彼女は笑うとちらりと腕の時計を見た。本日2度めの車が買える時計だ。
「あの子達遅くない?こんな可愛い子達ほっとくなんて」
「まだ、30分もたってないんで!……でもこんな綺麗なサクラ姉さんと話せて光栄です」
何故かきょとんとしたサクラ姉さんはおれに向いていた視線がゆっくりと秋と優に移る。立ち上がるとわざわざ移動して2人とこそこそ話を始めた。
ええ、おれも入れて。
「ねぇ、2人とも、唯斗くんっていつもこうなの……?」
「出会った時からです」
「女の人相手だとフェミニストスイッチ入るんですよ」
何を話してるのか聞こえないが3人がこちらを見たので手を振ってみる。サクラ姉さんだけが返してくれた。
2人は見えてないかのようにスルーだ。なんてひどい。
それどころか楽しそうに目を合わせて秋と優は背もたれに肘をかけてサクラ姉さんがいる後ろを向く。今度は聞こえる声で2人がハモった。
「でもサクラ姉さんが美人なのはどう考えても事実ですね」
良い笑顔の2人にサクラ姉さんが少しだけ引き攣った。
「…………君たちは唯斗くんに感化されたのね」
「ねぇー!おれも入れてーーーー!」
3人の間にズバーと入れば優に邪魔だと引っ張られながらもソファに一緒に座り込む。おれの頭に顔を乗せた優に捕まりながらも問いかける。
「なになに、なんの話?」
「唯がやばい話」
「またそうやっておれだけ……」
心の木枯らし吹き荒れる。
伸びた足の向こうに秋の足があったので痛くない程度の力でつついてやった。
その光景をソファの背もたれに頬杖をついてサクラ姉さんが興味深そうに見ていた。どんなポーズでも、少し下から見上げても彼女は綺麗だ。
「君達面白いなぁ……うちで働かない?」
「ん?バイトですか?」
「うーん、それもおいおい?」
どこまでもヒミツで通す気らしい。
お茶目な彼女を嬉しいそうに小さめなスキップで元の椅子に戻った。
「でも本当に遅いわ……しょうがない、連絡すれば良いわね。それにわたしこの後デートなのよね」
「え、デートですか!良いっすね!」
秋の反応にウィンクを返したサクラ姉さん。
こんな魅力的な人の彼氏さん、絶対かっこいいだろうなぁ。
「どんな人なんですか?相手の方」
「うーん、私より歳上で、優しいホワホワって感じの人……ああ、でも彼の好みに今のカッコ合わないから着替えようと思っていて……」
たしかに彼女の今の格好はどちらかと言えばクラブ向きの格好かも知れない。丈の短いワンピースはサクラ姉さんの綺麗な脚を引き立てるがいささか扇情的だ。
「服持ってきてるんですか?」
「ええ、ここで着替えてもいい?」
「どうぞ!後ろ向いてます」
3人で見猿ポーズでソファの背もたれに埋もれると、するりと衣服の擦れる音がした。すぐにもう大丈夫よと返事がくる。
振り返れば黒のドレスに着替えたサクラ姉さんがいた。ノースリーブのシンプルなドレスだが背中が大きく空いていて、その分膝が隠れるマーメイドの形だ。ノースリーブには控えめなフリルが付いていて華奢な肩がさらに魅力的に見える。
「ううん、女性のお着替えほど尊いものは無いよね……」
「超綺麗です!」
「うふ、ありがとう。ホテルでディナーだから靴はこれで良いかな……あとは髪の毛とメイクと……」
ここまできたらおれの衝動が収まるわけがない。腕を勢いよくあげる。
「はい!ヘアメイクやらせてください!」
流石の立候補にサクラ姉さんも驚きだ。きょんとした顔も最高にキュート。
秋と優が知ってましたという顔して、やれやれと言いながらもおれのバックを持ってきてくれた。共犯者のような顔で秋がサクラ姉さんに告げる。
「結構、良い腕してますよ」
親友の推薦により笑顔で了承を頂いた。
46
あなたにおすすめの小説
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
王様のナミダ
白雨あめ
BL
全寮制男子高校、箱夢学園。 そこで風紀副委員長を努める桜庭篠は、ある夜久しぶりの夢をみた。
端正に整った顔を歪め、大粒の涙を流す綺麗な男。俺様生徒会長が泣いていたのだ。
驚くまもなく、学園に転入してくる王道転校生。彼のはた迷惑な行動から、俺様会長と風紀副委員長の距離は近づいていく。
※会長受けです。
駄文でも大丈夫と言ってくれる方、楽しんでいただけたら嬉しいです。
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。
或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。
自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい!
そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。
瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。
圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって……
̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶
【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ
番外編、牛歩更新です🙇♀️
※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。
少しですが百合要素があります。
☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました!
第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる