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battle!
3
しおりを挟むやってきました試合当日。天候は良好、傘は必要ありません。とは言えすでに日は暮れている。
人生2回目のクラブにおれはいた。
広いクラブが埋まるほどの人でひしめき合っている。殺気立った雰囲気が静かな空間に満たされて重力が1.5倍になったように重い。派手な人が多いのかと思ったけれどそうでもない。黒い服装の人が多い、特に派手なのは目の前の3人だ。
「よお、久しぶりだな……」
そんな3人にすでにおれ達は青筋を立てられ、今にもサンドバッグになりそうなほど怒らせている。
今回ばかりは何もしていませんよ。おれ達は案内された通り、顔合わせに行っただけなので黙ってましたとも。お口にチャック完璧だったのに。
相変わらずの派手な髪色の3人組はそれぞれ金髪さんがリュウジ、赤髪がマサト、オレンジがヒカル、というらしい。苗字は名乗られなかった。
おれ達と3人それぞれ追いかけられた奴らにめちゃくちゃ睨まれている中、先輩たちがそれを遮った。
「こいつらは試合には出さない。俺に勝てなきゃ意味ねぇだろ?」
「……良いんじゃねぇの、おれはお前達をぶっつぶせればなんでも良いからなぁ!?」
もうめちゃくちゃブチギレている。彼らはすこしテンションが高いし短気だ。先輩たちが言っていた通り、会話でどうこうなる人間ではなさそうだった。
その3人の後ろからスッと前に出た人間がいた。
初見での彼のイメージはお人形だ。
色白で綺麗な顔なのに感情が一切見えない。サイドとバックは短めだがの前髪は目にかかるほど長い。
「獅之宮さん、初めまして。ネロの中間役でまとめている誠司です……今日は、宜しくお願いします」
綺麗な声が響く。それでも彼の表情は変わらず、丁寧な話し方が余計に作り物のようだった。手を差し出した彼に氷怜先輩が応える。先輩よりもすこし背が低いがそれでもおれからしたら羨ましいくらいにすらっとしている。片方だけ開けられたピアスが魅惑的に見えた。
見つめ返す氷怜先輩にどこも見ていない目が合わさった。2人がなにを思っているのかは、想像もつかない。
見届ける赤羽さんがいつもの笑顔で指を鳴らした。
「さて、始めましょうか?」
「俺たちはいつでも良いぜ」
金髪リュウジくん、嫌な笑顔だな。悪意しかない。先輩達が瞬殺した彼らがそんな余裕で笑える意味がよく分からない。そう考えると彼はやはり物騒なことを考えているのだろうか。
2人の声にざわめき出す男たちには戦闘意識が色濃く出てきた。おれ達はそろそろお暇した方がいいかも知れない。邪魔になっては意味がない。
氷怜先輩がおれたちの前に来てしゃがんで話しかける。おれ達よりも姿勢を低くして安心させるように優しい声だ。
「上で良い子にな……閉じ込めるようで悪いな」
おれはありもしない上腕二頭筋に力を入れて元気に答えた。
「お留守番には自信があります!」
「唯のことは任せてくださいよ」
「ええ、せっかくカッコつけてるのに……」
秋のお兄ちゃん発揮するのここじゃない。
暮刃先輩も瑠衣先輩もおれ達の元に来るとそれぞれ声をかけてくれた。気になるのはすこし暮刃先輩の顔が険しい。
「君たちの部屋安全だからそこから出ないでほしい……ちょっと危険かも知れないから……」
「部屋が豪華って聞いたんでむしろ出ません、大丈夫ですよ」
いつも通りの優の返事にすこし安心した様子で腰に手を当てた。瑠衣先輩は秋に手を広げるように促すとポッケから10個以上はありそうな棒突きキャンディをボロボロ落としていった。色取り取り、みんな大好きチュパっとキャディ。
「おお全種類」
「それみんなで食べ終わるまでに終わるから~。ちなみにその金色のは特別だから最後にシナサイ」
「怪我しちゃダメですよ」
「ンー?するわけないよねー」
余裕な瑠衣先輩を最後に見送って、遂に開幕したのだ。
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