sweet!!

仔犬

文字の大きさ
43 / 378
battle!

10

しおりを挟む

「秋、優、怪我は」

「大丈夫……行くなとは言わないけど」

「唯……」

「うん、大丈夫」


声にうまく抑揚が付けられなくて素っ気ない返事になってしまった。それでも既に窓枠に足をかけ飛び降りてしまったので後で謝ろう。壁の飾りと階段の手すりをを使って下に降りていく。心の中は落ち着いている。体が勝手に動いているようだ。

視界の真ん中で銃を持って不敵に笑う男が氷怜先輩によって殴られた。リュウジだ。マサトもヒカルも呆然としたまま動いていない。
殴られ横に倒れて、銃が誠司さんの足元に転がってきた。床に押しつぶされてもまだ笑っている。

「なんだ、当たらなかったのか」

狂ってるのはこの人だ。




「おい、唯斗ケガは!……唯斗?」

「おれは、大丈夫です。サクラ姉さんが怪我を……」

氷怜先輩はすぐにおれのいつもの雰囲気の違いに気づきしゃがむように目線を合わせてきた。

「許せない……」

「悪かった……お前らを傷つけない約束だったのに」

違う、氷怜先輩のせいじゃない。おれがサクラ姉さんを窓に近づけさせなければ良かった事だし、やっぱりそもそも撃ったあいつがどう考えても許せない。おれのブチギレに先輩は気づいているようだった。流石に撃つ気はなかったが足元の銃をそっと自分の手に持った。


「おれに任せてください」

その横から誠司さんがまるでおれの心情が分かっているように話し掛ける。その目に同じ気持ちを感じた。


「それ、貸してください」

「お前……」

リュウジに背を向けて誠司さんが氷怜先輩に向き合った。先輩は誠司さんの顔を数秒見て諦めたようにため息をつく。


「……好きにしろ」

「ちょっと、氷怜!誠司くん、彼様子が」

「唯ちん、危ないからこっち来ちゃダメだよ」

おれの肩を瑠衣先輩が押さえた。

ゆっくりと誠司さんがリュウジに向き直して目の前まで移動する。彼の言葉はゆっくりと、低く重い話し方だった。


「……アンタ達は俺の地位じゃ飽き足らず仲間まで脅して……それでも俺が耐えてどうにかなるだけなら良かった。でも、無関係の人やあまつさえ女性にまで怪我をさせた……」

「この期に及んでまだ女の心配してんのか?とんだ神経だなあおい!」


銃を構えて彼が言った。


「ああ、狂ってますもんね、貴方が」

ズドンと耳障りな音が響く。
反動で彼の身体がよろけた。



「なんだ、アタラナカッタノカ」


誠司さんの笑みにリュウジの顔から始めて恐怖が生まれた。顔のすぐ横の床にできた銃痕に目を見開いた。


「お、お前、まさか本当に……」

「次は当てる」

「おい、やめろ!!」


頭に向いた銃にやっと本気で打たれることがわかっようだ。もう一度指をかける。そこでおれいつのまにか瑠衣先輩の腕を外し、制止する声も聞かずに走り出した。

銃の音が響くよりも先におれが叫んだ。




「バーン!」




そう言いながらリュウジの鼻にキャンディを突っ込んでやった。
ちなみに棒の方。


いきなり目の前に現れたおれに誠司さんが驚いた顔をした。目を見開いて状況について行けてない、そんな顔だ。それでもおれの心は晴れやかだった。


「誠司さん、あなたは同士です!」

「え?」
しおりを挟む
感想 182

あなたにおすすめの小説

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

【完結】期限付きの恋人契約〜あと一年で終わるはずだったのに〜

なの
BL
「俺と恋人になってくれ。期限は一年」 男子校に通う高校二年の白石悠真は、地味で真面目なクラスメイト。 ある日、学年一の人気者・神谷蓮に、いきなりそんな宣言をされる。 冗談だと思っていたのに、毎日放課後を一緒に過ごし、弁当を交換し、祭りにも行くうちに――蓮は悠真の中で、ただのクラスメイトじゃなくなっていた。 しかし、期限の日が近づく頃、蓮の笑顔の裏に隠された秘密が明らかになる。 「俺、後悔しないようにしてんだ」 その言葉の意味を知ったとき、悠真は――。 笑い合った日々も、すれ違った夜も、全部まとめて好きだ。 一年だけのはずだった契約は、運命を変える恋になる。 青春BL小説カップにエントリーしてます。応援よろしくお願いします。 本文は完結済みですが、番外編も投稿しますので、よければお読みください。

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪

【8話完結】いじめられっ子だった俺が、覚醒したら騎士団長に求愛されました

キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。 けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。 そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。 なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」 それが、すべての始まりだった。 あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。 僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。 だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。 過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。 これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。 全8話。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

処理中です...