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date!
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「え、デートですか?」
「うん!」
ついに前日になったその日の夜、おれは桃花と電話していた。後夜祭であれほど頼もしい桃花だが定期的に不安になる時があるらしい。学校違うしいつもクラブにいるわけじゃないのでこうしてカウンセラーがわりに電話している。
「それは楽しみですね」
「そうなんだよ~、初めて出かけるんだよ」
「あれで初めて……」
「え?」
「いいえ何も」
よく聞き取れなかった。
日課のストレッチをしながら、秋と優に無理やり押し付けたパック2人はしてるだろうかと思い出す。自分のもちろんあるのでパックしながらスピーカー通話で一石二鳥よ。
「また優夜さんが服を?」
「そう!めっちゃいい感じ!」
「……あまり絡まれないように」
なぜか桃花はいつもおれが絡まれることを心配しているが、そもそも前の拳銃トリオくらいしか思い当たる節がない。
「目立ちますから、唯斗さん達」
「桃花の綺麗な顔の方が目立つけど」
「……俺の事は良いんですよ」
なぜか呆れ気味の桃花はでも、と声色を変えた。
「楽しんでください」
「うん、ありがとうね桃花」
素直に嬉しくてへにゃっとした顔になる。パックがずれてしまいいそいそと直していると、遠慮がちな声がかかった。
「……あの、俺も今度唯斗さんの料理食べたいです」
「え、いいよ?」
なんか式も桃花も遠慮しすぎじゃないか?
式はもしかしたら先輩もいたから遠慮したのかもしれないけど、おれの手料理なんてファミレスくらいの感覚でいいのに。OKの返事に桃花は嬉しそうにありがとうございますと言ったので要望を聞いてみた。
「何か好きなのある?」
「わ、リクエストしていいんですか?」
「いいよん~」
スピーカー越しの声が嬉しそうに跳ねた。桃花まじで可愛いんだけど、これみんなわかって欲しい。
犬、これは犬。
桃花はえーと、と少し考えるとこう言った。
「……卵焼き」
ズドッ
ベットの端に座っていたおれは見事にずり落ちた。隣の部屋の母さんがうるさいと怒っている。椎菜ごめんって。
「え、唯斗さん?大丈夫ですか?」
「ううん大丈夫だよ。卵焼きね!……たまごやきって、ふふふ」
「た、卵焼きダメでしたか」
笑い始めたおれに桃花が焦った声を出す。卵焼きを作って欲しいなんて言われたの始めてだ。
「ううん、ぶふっ。良いんだけどさ……チョイスがさ、あはは!」
「そんな面白いですか?」
最高すぎて瑠衣先輩くらい笑ったよね。お腹痛いもん。
おれにまで真面目な桃花はいつも敬語で実直だ。そんな彼が言う卵焼きになんか独特の面白さを感じてしまったのだから仕方ない。
「あー笑った。ねぇね、桃花」
「はい?」
だんだん、落ち着いてきたおれはやっぱり言いたかったことを言うことにした。桃花には素でいて欲しい。式みたいにさ。
「卵焼き作るし、もっと他のもたくさん作るから」
「はい」
「次会うときは敬語なしね!」
「え、ちょ」
勝手に電話を終了させて、驚いている桃花を想像してしまう。
もう面白くなってきた。にやにやしながらパックを外して鏡を見る。これはいいかもしれない。少しアルコールの匂いがあるけど、使用感は問題なし。みーちゃんに報告だ。
あれもこれも全部が全部、氷怜先輩に報告したくなってにやけてしまうのだ。はやく明日にになってほしい。
まるでこれの心を見透かしたように、通話の終わったスマホが光り出すと氷怜先輩からメッセージが届いていた。
楽しみだな
短いその文書なのに、愛おしすぎてハートのスタンプを鬼連打した。
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