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しおりを挟むだいぶお腹も満たされて料理はデザートに突入していた。瑠衣先輩相変わらず甘いものには目がないのかひたすらケーキを食べている。
「瑠衣先輩って普段から甘いもの食べます?」
「こいつ冷蔵庫にホールケーキ何個か常備してるぞ」
「ホールを!?」
氷怜先輩がさらっと教えてくれた。瑠衣先輩はそれが普通なのかソダヨーとケーキを食べながら頷いた。優が聞いていたのか不満げな顔。
「先輩達なんでそんな太らないんですか……」
「ちゃんと動いてるしなぁ」
暮刃先輩はそう答えたがそもそも太らない体質の人達だと思う。だってこれだけ飲んで食べて甘いものまで摂取してあの体型を維持できるわけがない。俺だったら一ヶ月で丸々してるはずだ。
悲しくなってきたがこうして美味しい料理を最近振舞われすぎて居るせいもあり、心配になったおれは筋トレの量は増やしている。お陰で体重はキープ。
大事なのは積み重ねと言い聞かせてこれからもこつこつ生きよう。
「それにしても唯斗くん遅いわね。あの子達と盛り上がっちゃったのかしら」
サクラ姉さんの言葉で氷怜先輩がさりげなく腕の時計を見た。料理も食べ終わっちゃうな。まあ、唯は食べ物より美容に集中してしまうのは良くあることだ。
だからちっこいのではと言いたくなるが、食べていないわけでもないからあれは椎名さんの遺伝だ。
その時静かな空間に騒がしい足音が響き渡る。それに眉を釣り上げたサクラ姉さんが入ってきたイノさんに的を絞ってツンと睨んだ。
「そんな歩き方教えた事ないわよね、私」
「す、すみません代表!!」
そんなサクラ姉さんにイノさんは姿勢を正して敬礼でもしそうな勢いだ。彼女の普段の指導法はもしかしたらスパルタなのかも知れない。
イノさんの雰囲気が明らかに変わっていた。
唯のメイクが彼の良さを引き立てていて数倍カッコいい。可愛いイメージの彼に男らしさと色気を引き出せている。さすがだな唯。
「イノさんめっちゃ良い感じですね!」
「え、ああ。あいつ凄えな感動したわ…………いや、その唯だけど」
褒められて一瞬忘れかけ、唯の話になるとすぐに思い出して顔をしかめる。プロのイノさんが慌ててくるような問題があったのだろうか。
言いずらそうにイノさんが話し始める。
「じ、実は今日すでにシャンパンタワーが6回注文が入ってまして……」
「絶好調じゃない……唯斗くんのメイクのおかげかしら」
嬉しそうに言ったサクラ姉さん。
優が首を傾げて暮刃先輩に6回って凄いですか?と聞くと自分の腕時計を指して最低でもこれが1回の値段で買えるよと笑った。
その時計車が買えると優と唯が話していたのを思い出す。ああ、気が遠くなってきた。
喜んだサクラ姉さんが手を合わせたがそれに安堵するでもなく彼は言いずらそうに話を続ける。
「それが鹿野と胡蝶が4回なんですが……」
「あら、今日は他にも頑張ってる子がいるのね」
さらに喜んだサクラ姉さんにイノさんがバツが悪そうに話す。俺は瑠衣先輩がケーキを口まで運んできたので口を開ける。
「唯です」
「ゲホッ」
ケーキが喉に詰まった。瑠衣先輩がイノさんの言葉に爆笑してフォークがぶれたのだ。
「何してんの唯ちん!!アハハハハ!!」
「げほっごほ」
「秋、ほらお水」
むせた俺に暮刃先輩が水を渡してくれたのでごくごくと喉に流していく。お陰で呼吸も元通りに落ち着いたところで頭を整理。
唯がシャンパンタワーを入れる?
いや違う、きっとユイって言うホストの人が居るんだろう。きっとそうだ。あれだけ先輩と約束したんだから。
それでも話の続きは俺たちが知っている唯だった。
「実はアゲハ達がきてから美容の話が止まらなくて、長くなりそうだったから俺少しの間抜けてたんですよ。そしたら戻ってきた頃にはアゲハ達が客として飲んでて。しかもあいつら唯斗気に入ったらしくてプレーヤーとしてフロアに連れてっちゃって……」
「え……じゃあ今は」
つまりなんだ、まさか唯は今ホストととしてフロアにいると言うのか。
「あの子達やるじゃない!」
唯を思わぬ形で参加させたことに喜んだサクラ姉さんだが俺は思わず氷怜先輩の顔を見た。優も眉間にしわを寄せて氷怜先輩を伺っている。
表情を変えずに氷怜先輩が酒を一口。
その次にタバコを口に運び一息吐くと足を組んだ。
「へぇ……」
たったそれだけの言葉とも言えないものだったが、壮絶な何かを感じ取った俺は慌てる。
「ひ、氷怜先輩!一応唯のために言っておきますがたぶんわざとでは」
「ああ、わかってる」
「わかってるからこそ。だよね氷怜……それにしても本当あの子は……あはは!」
「…………うるせえよ」
笑い混じりに肩を震わせて言った暮刃先輩の言葉に不機嫌そう氷怜先輩がそっぽを向いた。
たぶん唯も出たくてフロアに立っているわけではないはずだ。そんな簡単に約束を破る奴じゃないなんてこれだけ一緒にいればわかる。
それでも唯という人間はいろんなものに巻き込まれ、思っている以上にきっかけや人を引き寄せるのだ。唯としては歩いているだけのに天変地異が勝手に起きるし、鈍感な彼がそれに気づくのもこれまた遅い。
大方、あれよあれよという間に女の子達に席に座らされたのだろう。
「しかもすごい勢いで指名もらってて引っ込ませるにもタイミングがなくて……」
少しだけ氷怜先輩が眉を寄せた。暮刃先輩はいつもと変わらず微笑み、瑠衣先輩はいまだに肩を震わせて笑っている。
「さすがだねあの子は」
「ひー、よかったね……プフッ……唯ちん人気者で……あはは!!」
なにも答えない氷怜先輩に俺と優は立ち上がった。
唯ひとりで戻ってこれるとは思えない。だってフェミニストモードを発揮したら最後だ。
「連れ戻してきます!」
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