sweet!!

仔犬

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care!!

4

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いつでもパーティなこのクラブ。今日は一段とお客様が多い。ズンと体に響く音楽に揺れる人の中に、何人か見知った顔。手を振ればにこにこと笑い返してくれた。

「唯ちゃん!今度また新しいグロス教えて~!」

「あ、リサさん!これあげまーす!」

「え、わ!ありがとうーー!」

ぽいっと投げたグロスを綺麗な細い手が見事キャッチ。リサさんはこの前グロスの色で盛り上がり意気投合した。多分似合う色のはず。
先輩たちと同じ年というが、かなり大人っぽくお姉さんっていう感じだ。式がなんとも言えない顔でおれを引っ張って行く。

「馴染み方が尋常じゃないなまじで……」

「え、何よく聞こえ……桃花ーー!」

「わ!」

ポスンと見つけた背中に体当りすると桃花は困惑しながらもおれだと認識した途端笑顔になる。可愛い、なんかもう可愛いんだよな。うさぎが猫か犬かそういう部類の可愛さ。式と一緒に長めの前髪を少しすいて軽くして、軽くセットしてあげたら余計に可愛さが増した。

もとネロの人たちと話していたようでおれに気づくと頭を下げた。お疲れ様ですとか言われちゃうと体がむず痒い。桃花がおれを慕ってくれるのと同じように、ネロの人達もいつも声をかけに来てくれるのだが相変わらず丁寧な低姿勢が抜けない。桃花にそっくり。


「今日もお邪魔してます!……お話終わったの?」

「終わりましたよ」

「はいピピー!ほら今日の分は?」

「お、終わったよ……?」


ちょっと目をそらすこの恥じらい方、次女の子に恋愛相談されたら伝授しよう、そうしよう。

「今日も可愛くて癒しだなぁ桃花」

「俺の最近の目標はあなたに可愛いと言われない事です……」

「え、なんでさ。可愛い事はいい事よ」

「どうせ俺なんてまだまだ……」

あれ、今日もネガティブスイッチ入ってるね桃花。うつむいたおれを式が小突く。

「だから可愛いって言うとこうなるんだって」

「ええ、いい事なんだけどなぁ」


そう言うが桃花は不満げだ。おれは別に嫌だって思わないし褒め言葉として使っている。秋も優もそこにこだわりがない人だがら気にしたことがなかったのだ。

うーん、と悩むが最適な言葉が思いつかない。そんなおれに一旦不満を仕舞うことにした桃花がキョロキョロとフロアを見渡す。

「今日人が多いですし氷怜さん達の所行きましょう。氷怜さんなら上に居ましたよ」

上と言うがいつもの部屋ではないらしい。赤い絨毯を引かれた階段の上にあるカーテンで仕切られたシートスペースだ。

式がおれの頭をつつき、階段上のソファに腰掛ける先輩たちを見つけた。暮刃先輩と瑠衣先輩、氷怜先輩の2対1でテーブルを挟んでソファで向き合っている。

遠目でもその美しさがよく分かるから見るたびに目がチカチカするのだ。

「いや~今日もカッコいいですなぁ」

「お前が言うとのろけすら通り越して新鮮に聞こえるな……あ……」

呆れた式が小さく声を上げた。
声をかけようと思ったら綺麗な女の人が先輩達にドリンクを勧めているのだ。



上に行こうとする前におれの腕を掴んだ式があーとかんーとか声を出しながら気まずそうにする。


「…………あとでにするか」

「え、なんで?」

「だって今あれ……」

「なにが?」

桃花まで気まずそうに眉を下げた。何が何だろう。とりあえず向かったおれに式も桃花も慌てた様におい、とかあの、とか言いながら着いてくる。何を焦っているのか。

階段を登り近くまで席の近くまで行くと、お姉さんは綺麗に微笑み氷怜先輩の耳元に口を寄せる。

おれは衝撃を受けた。


「そのグロスは!」

「え、おい唯!」

叫んだ式の声は耳を通り過ぎ、踊っている人やお酒を飲んでいる人をかき分けて綺麗なお姉さんを覗き込んだ。

「ヒアルロン酸入り高発色グロスですよね!」

「え!?……ぁ、ええ、そうよ?」

驚きながらもすぐに笑って答えてくれる美人さん。厚めの唇がセクシーだ。20代前半くらいだろうか、落ち着いて話せばすぐにいつもの自分を取り戻したようだ。

「あ、いきなりすみません。おれコスメ好きでよかったら使い心地教えて欲しくて」

謝ればキョトン顔。知らん男子にグロスなんて聞かれたらそりゃそうだ。それでも可愛らしく笑ってくれた。

「君、メイクするの?」

「あ、おれ高瀬唯斗って言います。メイクはしなくもないですけど、試していいものを他の人に教えるのが好きで」

「唯斗くんね私はコトネ。あはは、変わってるね~」

へへ、と笑えば、お姉さんは視線をグロスに向けそっかそっかと言いながらグロスを渡してくる。

「使ってみる?」

「え、いいんですか!」



盛り上がり始めたおれの横で式と桃花が唖然としていた。ソファでドリンクを煽った氷怜先輩が式と桃花に手をあげる。その指がおれの方に向いた。

「迎えありがとな」

「え、あ、いえ。あの……」

未だ呆然とする2人に瑠衣先輩がけらけら笑う。

「2人とも顔がポッカーン!」

「この調子でここにくる人全員と仲良くなってるよね」


暮刃先輩がくすくす笑っておれを見たのでちょうど塗らせて貰ったグロスを見てもらう。

「めっちゃ発色良くないですか!」

「うんうん、可愛いね」

子供でもあやすように答えられてしまったが、おれとしては満足だ。塗り心地も申し分ない。

氷怜先輩とも目があった何かを企んだ目はおれも同じ。
この前のお膝の上生活の仕返しを企んでいた所なのだ。ソファの横にしゃがんで下から覗き込んだ。


「このグロス、キスしたくなるがキャッチコピーなんですけど」

「…………マジで食ってやろうか」


流石におれがふざけたのを理解してくれたのか、とってもいい笑顔で頭を掴まれた。すぐに笑って、お姉さんの手を掴んで逃げ出す。

逃げ出すとは言ったが実はこのお姉さんがいつも彼氏さんと来て居たのを見たことがあるので探してグロスを借りたお礼を2人分しようと思っているのだ。すぐに見つけた高身長なお兄さんに話しかける。






「あいつが嫉妬すると思ったか?」

色々と驚きが止まらない式と桃花に氷怜が喉を転がして笑った。ハッとした2人が言葉を濁した代わりに瑠衣が答える。

「しないよね、あの子達みんなしないの~ツマンナイデショ~」

「それも可愛いんだけど、もうちょっとあるとさらに可愛いよね」


好き勝手自分の恋人の話を始める上司に2人は曖昧に笑うのが精一杯だった。それよりも唯の行動の方が気になる。

「え、でも唯わざと挑発しませんでした?」

「あれで、この前のちょっとした仕返し程度にか思ってないんだから笑えるよな……末恐ろしくて」

「つまり無意識……」

ため息混じりなのか諦めなのか楽しんでいるのかわからない表情で氷怜が唯の跡を目で追う。

式が唯を見つければ先ほどの女性と彼氏らしき人と3人で談笑しているのだから、さすが人間大好きな人種は違うと感心すらしてしまった。


「あー唯ちん連れ戻すついでに~あの2人も連れてきてくれる~?」


瑠衣がタバコに火をつけ下のフロアに煙を吐くと空間に溶けるように消えていく。その流れを追うとさらに下で秋と優が赤羽とさらに幹部の1人と話していた。
ここのバーテンダーでもある彼は唯達を弟のように慕っている。いつのまにか仲良くなっている2人も本人達は否定するが唯にそっくりだ。
しかも唯のフェミニストを受け継いで女性に悪い態度を取ったりしないのだから、当然のように彼等も人気がある。

暮刃が瑠衣の隣で宜しくねといつものように微笑んだが、その余裕は式と桃花にとっては逆に恐ろしい笑みだった。

2人はすぐに後を追うことにした。
ここで彼等を1人にするのが怖すぎる。

狼が笑っているのだ。




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