sweet!!

仔犬

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care!!

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影はゆっくりと近づいてくる。


以外にも穏やかに水、木と過ぎて今日は金曜日。休み時間もクラスのみんなに問題を出してもらったりしながら過ごして、クラブに行くにも忙しそうなのでバイトに遊びに行くことにした。もちろんお供は試験ノート。

働かずに座るカフェはなんだか新鮮だ。金曜日にしては少しだけ来店が少ない。
カウンターに座って優は会計、秋がキッチンにいる背中を見つめていると春さんがティーセットを持ってきて微笑んだ。
 
「唯、腕はどう?」

「最近はぶつけていませんよ!」

「聞きたいのはそうじゃなかったけど……元気そうで良かった。はい、今日はアールグレイね」

なんだか久しぶりにさえ感じてしまう春さんは前に言った通りなんでも作ってあげるよと、相変わらず仏様のように優しい。

「ああ、春さんのマイナスイオンが……」

「おおげさだなぁ。ごゆっくりね」

あははと笑いながら、オーダーを取りに行く春さん。
今度は会計を終えた優がおれの前に来た。


「唯、新しい制服テスト終わったら買いに行こ」

「いいよ!決まったの?」

「うん」

こくんと頷く優は楽しみなのかご機嫌だ。優のこういうところ本当に可愛い。
手が空いた優に向けて、おれは持ってきたノートを広げ声を張った。

「そんな君にクイズ!」

「唐突だなあ」

「Ihad a bad tooth pulled out.を訳しなさい!」

「えーと……haveの過去形と名詞と過去分詞になるから」

キッチンにも声が響いたのか秋が笑いながら顔を出す。

「bad toothって……例文のチョイスがやばいな」

「「私は虫歯を抜いてもらった」」

「正解!」


2人とも素晴らしい。あの短期間で英語まで覚えている。けっこう良い点が取れるのではないか。

「おれが作った例文覚えやすいでしょ」

「有難い例文でした……あ……いらっしゃいませ」


くすくす笑いながら入店の合図のベルに耳を傾けた優が挨拶をする。すぐに春さんがにっこりと入り口に向かっていた。

「あの2人……」


見覚えのある紺ブレザーにグレーのスラックス。おまけにあの目つきの悪さ。

おれが2人を見てることに気づいた優が不思議そうに聞いてきた。

「知り合い?」

「いや……ガラ悪くて思わず……」

「唯が怒るなんて、女の子に酷いことしてたんだ?」


ふーんと観察する優。
さすが優様おれのことは何でもお見通し。

向こうの2人はおれに気づいてないのか、むくれた表情で奥の席に着いた。こんなに良いカフェだと言うのに相変わらずの不機嫌さだ。それでも春さんはニコニコとオーダーを取っていく。


なるべく顔を合わせない方が良さそうだと思って前に向き直し、テスト勉強に集中する。問題を出しながら時間を過ごすうちにその2人のことは気にならなくなっていた。

そのうちに何事もなく2人は退店した。


閉店1時間前、試験勉強をしているおれに気付いていた春さんが早く上がって良いよと秋と優を上げてくれた。やはり素晴らしき優しさの持ち主。

優と秋と一緒に控え室に入って2人は着てきた制服に着替ると秋が溜まっていたゴミをまとめていた。今日はお昼が混んでいたのか大きなゴミ袋5個といつもより多い。最後に外に出すんだけど、今日はもう出してしまっても良いだろう。

「えーと、赤羽さんに連絡しないと」

今日も今日とてお迎え付きのおれたち。時間の変更を知らせると、すぐに返事がきたようだ。
みんな優しいもので代わり番こにお迎えに来てくれる。

そんなに世の中が危ないのか、それとも相当おれたちが危なっかしいのかは定かではない。


「よし、赤羽さん来るまで勉強してくか」

「お!じゃあおれの例文の出番かな」

「残念だけど暗記物でーす」

「がーん」


項垂れたおれに笑いながら、みんな教科書やノートを出していく。しかしチラリとゴミ袋を見た優が先に片すかなと立ち上がる。優って試験前に掃除から始めるタイプだよね。

「おれもいく!」

「ちゃんと片手で持ってよね」

「優2つちょうだい」


仲良くみんなでゴミ袋持って、控え室にある裏口から外のゴミ置場へ。一瞬だしコートも着てないからドアを開けるとぴゅーと吹く風が冷たい。もう真っ暗な時間だ。

「ひー今年は一段と冷えるのう」

「おばーちゃん早くすてて」

プレハブのようなゴミ捨て場にぱたぱたと駆け寄りゴミを入れて鍵を締める。


「あんた、あのチームのひとりだったんだな」

「へ」


振り返ると居なくなったはずの2人がいた。紺ブレザーの2人が嫌な笑顔で立っている。
あれ、これやばくないか。1人は黒い機械を手に持っているしもう1人はバッド、典型的な武器チョイス。

秋がひきつった顔で話し出す。


「……あれはスから始まってンで終わる品物かなぁ」

「うん、バチバチするやつだと思う」

「え、まってど忘れした名前が出てこない」


おれのど忘れはが意外にも紺ブレザーのツボに入ってしまったらしい。肩を震わせて頑張って耐えている。せっかくなら笑えば良いのに。


「こ、こいつら………」

「笑わせんなよな、やりずらい」


耐えてなんとか顔を上げた2人がそう言うと突然口を塞がれた。紺ブレザーの2人ではなく後ろから。複数人、いつのまにか後ろに回っていたのだ。

目だけで横を見れば秋も優も驚いた表情で口を塞がれ完全に囚われている。んーとかふーとか言っても腕は痛いし解けなくて、だんだん力が抜けて、意識が朦朧としてきた。


今日覚えた例文が走馬灯のように蘇ってくる頃にはもう夢の中。



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