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secret!
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しおりを挟む新学期も始まってバイトも始まった。夜は実家とシェアハウスを行き来して1週間がすぎ、あっという間に土曜日の朝。
昨日はシェアハウスに泊まったので先輩達も一緒に見送りをしてくれる。サクラ姉さんからそこで待っててと連絡が来ると迎えにきたのは意外な人物だった。
「おはようみんな。また随分と重いプレゼントをもらったねぇ……」
女性だったら目が眩むような美形さんが家を見上げてちょっと驚いた様子。いやそうだよね、驚くよね。だって家だもん。
氷怜先輩はなぜか不機嫌そうに胡蝶さんを睨んだ。
「胡蝶なんでお前がくる……」
「サクラさんが強くて頭が切れる子探してるって言うから、それなら強くて頭が切れてついでに美しい俺の方が良いかなって……まあ、冗談はおいといて、送り迎えだけだよ俺は。拳を振うのはあんまり向いてないしね」
流し目で色気が溢れ出て、自信のあるセリフだって似合ってしまう。今日もセクシーな胡蝶さんが運転席で微笑んだ。
「腕、治って良かったね」
「あ!そうなんですよ。その節はお世話になりました」
「こちらこそ」
にこにこと話す胡蝶さんの雰囲気は落ち着いていて癒される。久しぶり会うけどビシッとスーツは変わらない。でもいつものような派手なものでなく、ボーイさんと同じスタンダードなものだ。それでも美しさは眩しいほど。
「今日は休みだったし君たちに会えるから思わず立候補してみたんだ。また雰囲気変えて……うん、可愛いね」
色気に甘さが混ざるとどうして視線が離せなくなるのか。きっとこうやって女の子に希望を与えているのだろう。
「……胡蝶さんの可愛いって言葉にはすんごい含みがありますね」
「そうかな?」
秋と優が苦笑いで返すと瑠衣先輩が後ろから2人に腕を回す。
「えらいえらい。ちょうちょには気をつけナサイ~」
「ひどいなぁ」
「特に唯ね」
「え?……あ!胡蝶さんと言えば、クリスマスにもらった香水ちょうど今日つけましたよ!」
「わあ、嬉しい。ありがとう」
何故か瑠衣先輩が爆笑し、遠い目をしたのは氷怜先輩だ。
そしてやはり何故か秋と優にほっぺを全力で引っ張られる。い、いたい、のびちゃう。
そんなおれにくすりと笑った胡蝶さんがちょいちょいと手招くので何だろうと窓を覗き込むと首筋に顔が近付く。
瞬間、引き剥がされて氷怜先輩の腕の中だ。
なにが起こったのか分からないけど、横目で何故かキャーっと騒いで秋と優の目を隠す瑠衣先輩が見えた。
「相変わらず警戒心ゼロだ……大変だね氷怜」
「早く行け……」
「氷怜が離さないと乗れないけど?ほら乗って3人とも、1人は助手席ね」
そう言われて氷怜先輩が助手席のドアを開けたので車に乗り込んだ。窓を開けて顔を出すと頭を撫でられ、それでも視線は胡蝶さんに向いている。
「胡蝶……任せた」
「……驚いた、らしくないこと言うね」
「ウルセェ」
後ろで秋と優も暮刃先輩と瑠衣先輩に向けてを手を振った。
「なるべく早く迎えに行くから」
「大丈夫だと思いますけど……連絡しますね暮刃先輩」
今日先輩達になにがあるかはふわっと聞いた。大事な人と話したり試合があったりするって。おれたちも深くは聞かないけどそれ以上の事なんだろうなとは感じている、流石に雰囲気がねぇ。
秋も優も当然安心させるように声をかける。
「あんまり血みどろしちゃダメですよ。あ、そうだ指輪を汚さずに」
「そんなヘマするわけないっ、ヨネ~」
「いてー!」
秋が安心させるように言うと瑠衣先輩のデコピンが飛んできた。
おれも先輩に薬指を差し出し、にっと笑って見せた。
「あれから外してないですよー」
「ん、良い子」
はい、良い子ですと答えたくなるような甘い笑顔に心臓を撃ち抜かれた。ずーるい笑顔。
しかもさ、先輩達もおれらがあげた指輪を一度も外していないから見るたびにへにゃっとしちゃうよね。
「番犬が指輪つけるなんて世も末だ」
「匂いつけに来る奴よりマシだろ」
言い合いながらも任せるって事は氷怜先輩はやっぱり胡蝶さんを信じてるんだろう。胡蝶さんはふっと笑うと閉じかける窓に向かって言う。
「そんな顔するんなら、早く切り上げて迎えに来なよ」
「じゃあ行ってきます!」
走り出した車から見えなくなるまで見送り、角を曲がったところでシートに座り直した。
先輩達はたぶん色んなことがあって、それならおれはその時その時を全力で。
気合を入れ直すと後ろから秋と優が仕方なさそうに、それでいてにやりと覗き込む。親友にお見通しだ。
「唯はもう終わり?」
変身の魔法なら大得意。
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