sweet!!

仔犬

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secret!!

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「俺はあいつの面倒みてやってるわけ、とろくて鈍臭くて必死になってるからさ」


この人自分の自慢か、同期だと言う唯と同じテーブルの人の話しかしない。てか何で違うテーブルなんだろう、勝手についてきたのかな。
俺は微笑みながらキラネさんの綺麗な所作を覚えていた。灰皿はすぐに変えて水滴もさっと拭く、真似できるのこの辺かなと目星をつける。


キラネさん頭がいいから相手にどんな言葉を言えばいいのか先に話してヒントをくれるから、ゲーム感覚でちょっと楽しいんだよね。

でもこの人の会話はあまり聞いていて良いものでもない。名前はトシさんと言う若い商社マン。

「トシさんは今日お祝いできてくださったんですか?」

「いや?あいつに俺の昇進報告ついでに酒でも奢ってやろうかと思ったら今日はパーティがあるからとか言いやがるし、俺の昇進より大事な約束はどんなかと思って」


随分上からなんだよなぁ。
唯はトシさんの同期の人をすごい心配してるように見えるし、この人と喧嘩でもしたんだろうか。

「だけどさ報告した時のあいつの顔、泣きそうにしててさ、まじでウケる」

「でも、ご馳走してあげるなんて仲がいいんですね」

正直微笑んでられるのが不思議なくらい嫌なやつだけど、キラネさんが綺麗に微笑むのでなんとか頰がつられてくれた。

「俺がいないとダメなんだよ、あんな間抜けなやつ」

間抜けだろうか?昇進を聞いて先を越されたと傷付くなら夢や野望がある人だし傷付いてもアゲハさんのお祝いに来てくれる。それに多分、というか絶対、唯が懐いてるからいい人だと思う。

「てかリン。お前酒飲んでなくね?」

「この子今日が初めてだから、先に覚えさせることがあるの」

「飲めよ、つまんねえ」


この人飲み会でお酒飲めない人がいたら白けるとか言う人だな。キラネさんが微笑みながら軽く謝ると俺にお酒を作り始める。実はあらかじめ、そう言うことを言われるのを想定して席にはボトルが2本置かれている。片方は色がお酒と似ただけのジュース。

「あまり飲みすぎちゃだめよ」

「はい」


微笑んであえて喉を鳴らすように飲むと、トシさんは満足したようだ。これでお酒飲んでたら暮刃先輩のあの微笑みで氷河期がくるだろう。


「アゲハってやつまだ来ないの?」

「そろそろ回ってくると……ほら」

ちょうどアゲハさんがゆっくりと近づいてくる。綺麗な人だな本当、唯のメイクもすごいけど女性としての魅力に圧倒される。秋が応対してるのは女性のファンらしくてあそこはもう女子トークが盛り上がりすぎて秋が恋の相談してあげてた。


「始めまして、トシさん。アゲハです」


俺は驚いた。上から目線だったのは変わらないけど、トシさんが突然殺気を含むような目でアゲハさんを睨むのだ。恨みでもあるのかと思うけど初対面のはず。

席を立ったキラネさんがアゲハさんの耳元で何かを話すと、アゲハさんが微笑んだ。

「ありがとうございます、今日来てくれて」

「あんたのためじゃない」

「それでも嬉しいわ」

「……まじで見損なった」

「え?」

足を組んでソファの背もたれに腕を広げたこの人は、失礼な事を叫び出した。あえて他のテーブルに聞こえるような大きい声、唯の隣で同期さんが驚いて振り向いた。

「俺は俺なりにあいつのこと認めてたんだぜ。だけどここに通ってた挙句、ご執心な上、あんた程度の女を選んだ」

程度……ああ、やばい、眉間に力が入って笑うことができそうにない。元々、俺媚び売れるタイプじゃない。キラネさんとアゲハさんが微笑んでいたおかげで何とかなっていただけだ。

そんなアゲハさんは表情も変えていない。でも絶対にこんなこと言われていい気分なわけないし、言われていいはずがないんだよ。

「あー気分悪い……なあ、ここで1番高い酒と1番強い酒もってこい」

「かしこまりました」

それでも微笑むアゲハさんはボーイを呼んでお酒を持って来させた。流石に俺でもわかる、このお酒がやばいこと。

さっきよりも強いトーンで男が言う。

「飲めよ」

「トシさんは飲んでくださらないの?」

もうだんだんむかついて来て思わず口を挟んでしまった。俺たちはあくまで盛り上げを手伝って出過ぎた事はしない、そんな役だったけどこうなってくると許せないものがある。

「俺も飲むけど、お前らはそっちを飲め」

「はい」

やばい方を差し出され、承諾しないといけないのかアゲハさんの横顔を除いてもその答えはわからない。
唯ならうまくフォロー出来るんだろうか。遠くて唯と秋がこちらを心配そうに見ていたから少しだけ和んだ。だめだよ、お客様に集中しないと。

さりげなく俺にジュースの方と交換してくれるがアゲハさんは言われた通りそのお酒をおいしそうに飲み進める。もちろん売ってるから飲んだら死ぬとかじゃないけど、こんなペースで飲み進めるものじゃない。
お酒は強いからと聞いていたけど限度があるし、それにトシさんは今度は満足しなかった。
自分で飲めと言ったのに、アゲハさんが飲めば飲むほど不機嫌になる。

「アンタは良いよなあ、酒飲んで微笑んでりゃ金が入る。そんでそんなアンタに入れ込んでるあいつもあいつだ」

「……タクミさんには本当に良くしてもらっています」

それが引き金だった。
釣り上がった目が今にも殴り出しそうで、何とか堪えるようにトシさんは沈黙した。代わりに力の入った手でボトルをアゲハさんに押し出す。


「飲め、飲めんだろどうせまだ。なあ?」


アゲハさんはボトルを見つめそれでも手を伸ばそうとする。俺は優しく彼女の名前を呼んだ。


「アゲハさん、代わります」

「え……?」

アゲハさんの大きな目がやめなさいと言っている。
もう俺の手はボトルを握っていたしその願いは聞けなくて、微笑んで口に運ぶ。ボトルでも下品な動きにならないように、だけど見せつけるようにボトルの中身を飲み干した。別に不味くないから助かったけど、兎に角強い。喉の奥が刺激で騒めき、じんわりと熱くて、それが胃に移動していく。


「お酒強いんですよ、実は」


知らないけど。
取り敢えず今のところ気持ち悪くない。そしてこれを飲む時点で決定的なことがあった。

トシさんは鼻で笑うとやはり見下すように言う。


「いい飲みっぷりじゃん。カマトトぶってるこいつよりよっぽど…」

「トシさん」

「あ?」

「タクミさんに告白、しないんですか」







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