sweet!!

仔犬

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「それにしても納得したわ。あんだけ目立つってのにその顔を使って売り出すのが面倒くせえで断ってた人間が雑誌に載ってるのも頷けるな」

「え?」

明らかに俺たちの事ではない。
いきなりなんの話だと思い唯と秋を見ても何も分からないらしい。きょとんとする俺たちをぴよちゃんが怪訝そうに眉を潜めた。


「まさか、それもしらねぇのか」

「何が?」

自分が一番めんどくさそうな顔をしながら椅子から立ち上がり机に向かうぴよちゃん。少し厚めの雑誌は今月号のいつもは俺も買っている雑誌だった。でも今月のはタイミング的に買いに行くチャンスを逃していた。

唯が首をかしげる。

「ぴよちゃん雑誌読むんだ」

「どんな偏見だそれ。しばくぞ」

教師とは思えぬ発言に唯がケラケラと笑う。
不満を垂らしながらもぴよちゃんはパラパラとページをめくり、ぐいっと俺たちに向け差し出した。駆け寄って3人で覗き込む。


「お前らが雑誌に出た1週間後にこれが発売されてる。お前らがお前らなら、こいつらもこいつらだな」


驚いた。
そんなありふれた言葉しか出ないほどページの写真を食い気味に見つめる。
3人が映るページ。右から派手なピンクの髪、だけど綺麗に染められたその色は驚くほど美しい顔に映えている。それは瑠衣先輩のいつも見ていたはずの姿だけど写真に残すとより一層綺麗に見えるのはモデルが良いのかカメラマンの腕なのかは計り知れない。
青い目がカメラに向かって八重歯を見せながら笑っている。その上がっている口角は色をつけた唇だ。


「瑠衣先輩、相変わらず、綺麗な顔してんな」


苦笑気味の秋だけど明らかに動揺していた。
唯が掴んでいた俺の腕に力を入れる。

モデルをしている瑠衣先輩はまだしもその隣の2人に目が落ちそうだったからだ。

公の場ではいつも隠していたヘーゼルグリーンの瞳も瑠衣先輩と同様に射抜くようにこちらを向いている。少し暗めのアッシュヘア、長めの前髪が綺麗な目を引き立てた。氷怜先輩の挑発的な誰にも真似できない視線は獰猛な獣のはずなのに品と色気を残している。唇は動かさず、その形の良さだけが鮮明に記憶に残るようだ。
唯が息を飲むのが分かった。

「これ、すごいこと、だよね?」

その質問に頷くことも出来ず俺は1番左の暮刃先輩を見つめた。
前より少し髪が明るくなったように感じる。髪も少し伸びただろうか。緩く巻かれた髪を片方だけ耳にかけ、ピアスが光る。いつか俺があげたものだった。
グレーの瞳はまるで本当にそこに居るかのように存在感。上品で紳士的微笑んでいるが分かる人間には分かる。
透き通る目がギラリと光る、これは彼にとって喧嘩を売る目だ。


「どいつもこいつも雑誌に飾るような表情じゃねぇだろ」


いっそ面白いと思っているのか、はたまたぴよちゃんが元そちら側だからなのか、クツクツと笑い出す。

俺は雑誌を持ったまま数秒動けず、唯が突然叫び出す事でその呪縛から解かれた。

「なに、なに!かあっこいいぃぃ!!」

秋も興奮した様子で唯に向く。

「やばい、よな。これ、ヤバすぎだよな?!」

「やばいしやばいよ!国宝級だよ!!ぴよちゃんなんでもっとはやく教えてくれないの!!」

「こんなん知らないのお前らくらいだよ!!!」

「やっべええ!!」

「うるせえ!!」

つられて秋も騒ぎだし、ぴよちゃんの怒号が飛び交う。
やばいばかりの会話に俺はようやく言葉を発せそうなくらいには落ち着いてきた。

たしかに奇跡だ。
あれだけ雑誌を毛嫌いしていた2人が瑠衣先輩と共に雑誌に載る。しかも顔出し、それもかなり挑戦的。

「なんでこんな事したんだろ」

「だから、お前らのせいだろ」

「いやでもあんなに嫌がってたのに……」

実際問題俺たちとしては全く構わない訳で、恋人がこんなに美しく格好良く雑誌に載るのならば万々歳だ。でもやはり、人前に出ると不機嫌さを醸し出すような人たちなのだから尚更不思議だ。

何気なく、そのページをめくるとさらに驚いたことにインタビュー欄がある。先輩達がインタビューを受けるって天変地異の前触れだろうか。

手元を覗いてきた唯がまた驚いた声を上げる。

「……それ!」


質疑応答のやり取りを俺は読み上げた。

今まで公に出ていなかった秘密多きno nameの実態について、もちろん深くまで触れてはいないが誰もが知るクラブについての事、自分達の当たり障りのない日常についてを語っている。注目の的である彼らがより魅力的に映る会話は流石としか言いようがない。

その中に指輪についての言及があった。
すぐさま確認するとたしかにブランド物の服の紹介、そしてモデルの私物と記された指輪は俺たちがあげた指輪だった。

インタビュアーは3人で同じシリーズものの指輪をつけているのはやはり絆のためなのかと。
そんな綺麗な質問の仕方を彼らに投げかけるのは雑誌としての見せ方だろう。白で統一された衣装は彼らの黒い噂とは真逆のものだった。

「たしかに俺たちがあげた指輪ってペアリングじゃないし、そう見られるよね。おれたちももらった指輪は知らない人から見たら3人でお揃いで仲良しだねぇって言われるだけだし」

唯が指輪を触りながら頷く。
たしかに、知らない人から見れば仲良しごっこの一面にしか思えないはず。それもあんな目立つ3人がつけていたら聞きたくなる。
絆としての指輪の意味をそれもあると答えたのは公にする上で万人受けするためなのかもしれない。普段あれだけ腐れ縁だと言い張る彼らが。そう考えると少しおかしい。

そう思いながらも読み進めると息が詰まりそうだった。
加えて本当の意味を答えたのは暮刃先輩だったから。


「これは俺が世界で1番愛おしい子がくれたものだよ。俺たち全員、そう言う相手がいる」


こんなものを見せられたら我慢していた気持ちが全部溢れ出そうだ。俺もだと叫びたい。
いつもこういう時に出し抜かれてばかりだ。

「ずるいなあ」

今にも泣き出しそうでなんとか堪える。代わりに握り潰してしまいそうな雑誌を唯がそっと離してくれた。秋も一緒に満面の笑み。


「そろそろ会いに行こうか」


頷いた俺。
今度こそ、素直に、対等に話せそうな気がする。

「青春なんだか、傲慢なんだか」

ぴよちゃんが呆れたように言う隣で不意に唯がまた雑誌を見出すとその端正な顔が目に入る。
心配なのは、少し痩せた気がすることだ。

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