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kick!
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しおりを挟む「じゃあ次は俺らねー」
神さんと才さんが喋ると実はどちらかが口パクで、本当は一人で話しているのでは思うほど声までそっくり。ズレる事なく同じように話すから不思議な感覚だ。
「っていきなり2人ですか?」
「この世は多勢に無勢だからね」
「試合ならまだしも護身用ならそれを想定しないと」
「そーそー意味がない」
今度は2人で交互に話す姿は右も左もそっくりでいっつもあっけに取られちゃう。この2人がまたいつも楽しそうなんだよな。ジャンケンしてるの見た事あるけど永遠にあいこなんだもん、ワザとかと思うくらい。
唯が那加さんとツインテ写メ会を始めたのでまた俺の番が回ってきたらしい。よし、と意気込んだと言うのに後ろで瑠衣先輩が不吉なことを言う。
「ツインはオレと同じタイプだから気をつけてネ」
「まさか……喧嘩大好き楽しい事バンザイ族?!」
「えーナニソレダサーい」
ダサくてもなんでもそれはやばい事だ。あんなに美形で綺麗な顔した双子さんがまさかのそっちよりとは、やっぱり類は友を呼ぶのか。
「あ、でも瑠衣先輩に似てるって事はむしろやりやすい……?」
「ナマイキな子はオレが相手するケド」
「すんませんしたー」
瑠衣先輩と軽口を叩きながら、選手交代して俺が真ん中に出る。双子さんは同じタイミングで手を振った。
まずはこれから。
「右が神さんで左が才さん!」
「はいハズレ~!」
ブッブーとまた同時に言われると周りが笑い出す。まあ当てずっぽだから仕方がない。もしかして唯なら分かったりするのだろうか、優も案外人を見ているから分かるかも。
「えーと次は何からすれば良いですかね?」
俺が首をかしげると2人まで同時に首をかしげる。
2人は白のロングニットにスキニーとハイカットのレザーシューズのお揃い。茶が強い瞳にアッシュグレイの髪。細身でスッキリしていて美嘉綺さんとはまた違うけどやっぱり喧嘩とかに無縁そうだ。だけど楽しげに笑う。
「適当に一緒に動くから」
「適当に避けてね」
うわこの流れ本当に瑠衣先輩みたい。
適当さと言うかノリの良さと言うか。
「はい、じゃあ行くからねー!」
にっこにこで笑いながら同時に駆け出した2人に反射的に姿勢を整える。
あ、拳を握った。位置が低いから拳は基本的に内側に動くはず、それに同時に来るならそれはそれでやりやすい。
「よっと」
向かってくる拳をバネがわりに両手で下に押し込む。そのまま身体を持ち上げればひょいと2人の後ろに飛んでいく。うーん、なんか分かってきた。俺は避けるなら得意かもしれない、ダンスを踊っているようなものだ。
「うわ、避けた」
「流石に同時は簡単でしょ」
「じゃあどうする?」
「どうって……」
わざわざ話さなくても答え出てるんじゃないのかこの2人。これも瑠衣先輩と似てるかも。無駄なことで遊ぶタイプ。
「じゃあもう一回!」
そう言いながら2人はすでに俺を取り囲んでいた。いきなり前後は無理でしょとか思ったが実践ならこれが普通かも。とにかく間合いをとって両方の攻撃を視界に入れられるようにしたい。
どっちがどっちかわからないけど、1人が足を上げたのでまた俺は手を乗せて押さえつけるように飛んで避け、目だけはもう1人にって思ったけど見つからない。
「ざんねーん」
押さえつけていた1人の後ろにもう1人。そりゃ見えないわけだ。今度は上から拳。こうなればまた間合いを取るしかない。バク転で後ろに下がってもう少しで足が地面、と言う時に膝を後ろから突かれた。
「ぎゃ」
当然バランス崩して尻餅。神さんと才さんは息も切らさず、俺に向けてピースをした。
「バク転するのは」
「俺たちにはもうバレバレ」
「ですよねー」
2人同時に手を差し出されたので両手で掴むと引っ張られ立ち上がる。左手を掴んでいた方が俺のお尻をポスポスしてくれて埃を払うと、右手を掴んでいた手が頭に乗っけられた。
「まあでも、最初の一回はその間殴る事しないと思うから。不意を作るのに取っておきな」
珍しく片方が1人で最後まで話すので流石に確信。双子は双子でも先に生まれた方が兄なのだ。そしてそれが神さん。
「ありがとうございます。神さん」
ちょっと驚いた顔をして頭においた手でくしゃくしゃとさらに撫でられる。
「せーかい!」
神さんと才さん、良い兄弟だ。
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