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rival!!!
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しおりを挟む春の驚いた顔、それでも彼は静かに微笑んだ。
「……君がいつも不機嫌だった理由が今分かったよ」
「だろうな」
春はあり得ないほど自分に向けられる好意に鈍感だった。それなのに他人事には察しが良いのは余計に李恩を逆撫でした。その気遣いで自分以外を構う全てが許せなかったから。
椅子に腰掛けると李恩は足を組む。
隣に座れと手で合図すれば春は大人しく横に座った。こう言うところも昔から変わらない。李恩がどんなにわがままを言っても春は穏やかに笑って頷くのだ。
「まさかだったか?」
「……うん、そうだね。君の事、可愛い弟みたいに思っていたから」
「……可愛いねぇ」
今よりも可愛げは無かったような気がする。
当時はもう春をどう独占するか、そんな事しか考えていなかった。微塵も気付かれないこの想いも、春に近寄る女も男も、全て許せなかった李恩は気が狂いそうなほど焦っていたように感じる。
「なんだかほっとけなかったんだ、君の事」
つまりその焦りだけが伝わっていたのだ。春は李恩に深く踏み込もうとはしなかった。なのに絶対と言って良いほど李恩から離れたりしなかった。その春の存在に救われるのに、同時に優しい瞳に恋愛感情がない事に絶望する日々。
蘇る記憶があまりにもどす黒い。組んだ足先を見れば、磨かれた革靴。麗央が靴を綺麗にしろ、まずはそこからだと、とうるさかったからだ。
また黙り込む李恩にお決まりのように春が話し出す。
「李恩、よく怒ってたもんね。誰とでも仲良くする俺の行動、勘違いさせるから止めろって」
「よく覚えてたな」
なんとか返事はしているがこうして話し出してみたものの、春に望む答えは李恩にはなかった。
単純に自分のものになって欲しい、なんて気持ちは通り過ぎていた。
きっと無理やりに命令でもすれば春は頷くかもしれない。それに意味がない事はもう知っていた。そして、今が望んでいた結果なのかもしれない。
「……あんたをこの前見たよ」
何処となく唯斗に似ている女と一緒に。
偶然だった、街中で手を繋いでいたわけでもなく恋人のように寄り添っていた訳でもない、ただ話しているだけの2人を見たのだ。
それでも、その2人を見た瞬間にやはり自分は春の隣ではないと実感した。
あの目は自分に向けられないのだ。
「良い顔してた」
その言葉に春にしては珍しく視線が彷徨う。目尻の皺が少し深くなるとぎこちなく、照れ臭そうに笑った。
「久しぶりに、好きな人が出来たんだ」
この笑顔が自分のものではない。
ああ、良かった。
何を気にしていたんだろう。俺はいつか、こうなるって知っていたんだ。そして見たかった。
完全に自分に希望は無くなったというのにもうスッキリしている。
「くくっ……あのボケっとした春がな」
「俺そんなにボケっとしてるかな……」
やっぱり変わっていない。おかしくてたまらない、この鈍感な男が好きだった自分も可笑しくて堪らない。
「あーあ、なんかバカみてえ。最初っから土俵に上がってねぇのによ」
「え?」
もう意地も張らず、言葉はすんなりと出てくる。
「春。そいつ、幸せにしてやれ」
この優しい男が幸せそうにしていると、どうでも良くなってしまうのだ。
振り返った笑顔が見れたら、もう何でも良くなった。本当はずっと、ただこの笑顔が見たかっただけなのかもしれない。
「ほら早く荷物持ってくぞ」
いくら鈍い春にも李恩の心情は少なからず読み取れた。自分にはただ話を聞くこと、そしてありのままを伝えることしか無いと。李恩の表情が幾分明るくなったのを確認して春はいつも通り微笑んだ。
「それにしても本当に大きくなったね。前なんかこれくらいだったのに」
確かに李恩は成長が少し遅かったせいで昔は春の方が身長がだいぶ高かった。だが春が言うこれくらいは明らかに1メートルもない。
「園児かよ……」
相変わらず、気の抜ける事ばかり言うところも変わらない。でもこれが彼の良いところでもあると李恩は思わず笑ってしまう。
「あれ?もっと大きかったかな、でも君はそれくらい可愛かったから……さてと、これで良いかな」
やはり春には家族愛のようなものしかなかったのだ。それはそれで今の李恩には心地良い。
車から荷物を持った春が戻ろうと背中を向けると李恩はふと声をかけた。
「つーか春。お前が好きな女、唯斗に似てねぇか?」
春はん?と首をかしげると上を向いた。おそらく上にいる唯斗を思い描いているのだろう。
いつも通りの気の抜ける笑顔から、李恩にとってはとんでもない言葉が飛び出した。
「そりゃあ、お母さんだからね」
「……はあ?!」
恋の戦に負けた事よりも息子の誘拐犯としては1番会いたくない相手だ。
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