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dance!
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しおりを挟む「な、なんで氷怜さんが……?!」
李恩の運転でシェアハウスまでやってきた麗央がおれの横に立つ氷怜先輩を見つけると青い顔しながら赤い顔しててすごく器用だった。
「今日は氷怜先輩も来てくれるって~!やったね~!」
「麗央、おまえ死ぬんじゃねえの」
2人で車に乗り込むとミラー越しに目があった李恩がニヤリと笑う。うるさいとか怒りながら助手席で麗央が呼吸を整え振り向いた。背もたれにちょっと隠れてるのが可愛いんだが。
「あの、今日アゲハのその……趣味に、付き合う感じになると思うので長くなる気がします……」
「アゲハさんやっぱりドレス着て欲しいって?」
「そうは言ってないけど、言わなくてもそうだと思う」
アゲハさんを思い出したのか麗央の顔から力が抜け、少し苦笑気味になる。2人は本当に仲良しでよく遊びに行くしお泊まりもするしとおれと秋優みたいな関係なんだって。何それ最高?
「氷怜先輩今日は丸一日用事ないんですか?」
「ああ……」
「誰かさんの仕事を代わりに俺がしたからな」
李恩がわざと大きめの声を出すと麗央がえっと驚く。
「何それどういう……ってことは今日氷怜さんが来ること知ってたわけ?!何で言わないの?もっと準備してきたのに……」
「その準備とやらに俺が巻き込まれるからだよ」
あきれ気味の李恩がエンジンをかけなおした。
麗央にとったら氷怜先輩と出かけるなんて一大事なのでいつも以上に気合がいるのだろう。
もちろんそんなことしなくても麗央はいつでも完璧だし今日もブロンドの髪はサラサラでお肌もつるつるだ。俺の隣で氷怜先輩が景色を眺めながらふっと笑う。
「お前がうちに入ってくれて助かってるよ李恩」
「おーおー年上こき使いやがって……ていうかお前らのチーム赤羽にいろいろやらせすぎだ。裏方のパワーバランスがおかしいせいで俺があいつの仕事半分受けたんだよ……」
「もともと、チーム作る気なかったからな。だからお前を入れた」
「……無理やりな」
李恩の声はあきれ気味だけど本気で嫌な感じはしないので彼は彼でそれなりに納得してやっているみたいだ。
氷怜先輩もビジネスパートナーのように信頼して任せられるようで、最初から李恩の事を気に入っていたのはこういうところなのだろうか。
確かにおれも先輩たちの事悪く言われたりしなければ李恩にはすぐになついていた気もする。どちらにせよ、こうして穏やかに四人で出かけられるのはとても良い。大切な人が増えていくのはいつだって嬉しいものだ。
アゲハさんが働くお店に着くと普段着の彼女が出迎えてくれた。白ニットのカーディガンにタイトジーンズとかなりカジュアルだけどそれもまた素晴らしい。嬉しそうに駆け寄ってくるとおれと麗央めがけて飛びつき盛大なハグ。
「いらっしゃい!いらっしゃい~!!二人が並んでるなんてもう最高!!夢にまで見たかわいい子が仲良くなってしかもドレス着てくれるなんて!!」
あ、やっぱりドレス着るんだ。
もちろん大歓迎だけど麗央はアゲハさんを撫でながら苦笑している。
「はいはいよかったね。アゲハ仕事休んだでしょ。土日で仕事じゃないの珍しい」
「こんな日に働いてられないもの!!あ、二人も中に入って!」
李恩と氷怜先輩に声をかけ、おれと麗央の手をぎゅっと握ってお店の裏口からどんどん中に入って行くアゲハさん。到着したのはアゲハさんの誕生日にメイクをしたあの部屋だ。
また新しいドレスが増えて、きょろきょろ見渡していると氷怜先輩の声がかかる。
「唯斗、サクラに会ってくる」
「はーい!とゆかおれも後で会いたいです……!」
「なら後で連れてくる」
一度部屋だけを確かめると氷怜先輩と李恩は出て行ってしまった。
「……びっくりしたあ、まさか氷怜くんがセットなんて思わないわよ~」
一瞬静かになった部屋でびっくりしたあとアゲハさんが嘆くが、もっと大変なのは麗央の方だった。
「せ、狭い車の中で氷怜さんと同じ空間緊張した……疲れた……」
ぐったりとソファにもたれ美人が儚げに遠い目をしているでは無いか。
「もっと力抜いて!ほら、ひーひーふー」
「いや、何産ませる気……」
「ん?」
応援したのに何故か麗央が呆れてしまった。そんなおれ達をアゲハさんがめちゃくちゃキラキラした目で見ていた。
「やだやだやだ、本当に仲良しになってる!!あんなに麗央ちゃんツンケンしてたのに!」
「あーはいはい。いいでしょもう昔のことは」
「昔ってついこの前の事ですー!もーそうやってすぐツンケンするの良くないとこよ!」
つんつん麗央の頬をつつくアゲハさん。ふんっと頬尾を膨らます麗央。なんだこれ癒され度が高すぎる。
「幸せ空間~」
「何ニヤニヤしてんの唯は。ほらアゲハも着せたいやつたくさんあるんでしょどうせ、片っ端から持ってきなよ」
「片っ端……」
麗央の言葉でアゲハさんのスイッチ、オン。
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