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dance!
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しおりを挟む「やっぱり、唯ちゃんは唯ちゃんね~」
ピンクのティントリップをおれに塗りながらアゲハさんが微笑んだ。キャッキャしてる時は同い年のような感覚になるけどふわりと笑うとやはりお姉さん感があるなぁ。
「と言うと?」
「だって唯ちゃん、知れば知るほどちゃんと男の子なんだもん~。でも今はきゃわきゃわ唯ちゃん!」
嬉しそうに笑うアゲハさんに微笑み返しながら、唯ちゃん呼びになんだか懐かしさを感じた。昔そう呼ばれてたような気がするんだよな、いやおれも自分の事そう呼んでたんだっけ?椎名がなんか言っていたような。
「今度はこれ!」
「はいはい」
もうお好きにどうぞと麗央が観念しながらまた新しいドレスに着替える。
ふと、先に上へ向った先輩たちを思い出す。
一瞬なんだけど、なんだかさっきの氷怜先輩に違和感があったような気がする。氷怜先輩に雰囲気が似てる人を見たいって言った時、李恩と一緒に何かを考えているような表情。
「……うーん、でも本当にダメってわけでもなかったしな」
「何?どうかしたの」
麗央に覗き込まれすぐさま首を振る。
「いや、大丈夫!」
「……李恩ちょっと変な顔してたよね」
「へ?」
ポツリと麗央が言う。
李恩もそれにぴよちゃんもいつも通りに話していたけどなんだか難しい話をした後みたいな顔をしていた。
李恩と麗央っていつも言い合いしてるけどなんだかんだお互いのことをよく見てて信頼してる。
「おれも氷怜先輩がいつもとちょっと違う気がしてて……でも何でもかんでも聞くの良くないからなぁー」
おれがそう言うと麗央は眉を寄せた。格好が美少女なので女の子を困らせた気分になってしまう。
「そんなに良い子でたまに心配になるんだけど……」
「いやん、麗央がおれの心配してくれるなんて照れちゃう~!」
「そうやっていつも通りのふりして茶化すところも……あほだけど愚かな馬鹿じゃないから唯ってやりづらかったんだよね」
「す、すごいこと言われているね?」
でもそれはプラスに働いておれと麗央は今に至るので、仲良くなれたから良かったのだ。
アゲハさんはウキウキでヘアアクセを選び始めた。
「なんだか心配してるみたいだから、とびきりの別人級の女の子に変身しないとね。ついでにウィッグも2人の元の髪と真逆の黒髪で合わせちゃいましょ~」
さすがだアゲハさんのこの気負わせない気遣いに拳を握ったら麗央も麗央でさすがアゲハと自慢げな顔。やはり女の子は偉大だ。
真っ黒の艶髪に真っ黒のドレスはフリフリと可愛いくてお姫様のようだ。靴まで黒に揃え麗央と姉妹になれそうなコーデで先輩達のいる2階の席に到着するとぴよちゃんが心底嫌そうな顔をした。
「アゲハさんの力作なのにそんな顔!?褒めてよーぴよちゃん!!」
「化け物じみた可愛さに恐怖抱いてんだよ……」
「褒められて、る……???」
複雑な文章だったので理解を深めるのは止めてしまった。ソファに足を組む氷怜先輩が自分の隣を指先でトントンと叩くそこにすぐさま座ると大きな手で優しく黒髪を持ち上げた。
「黒は、珍しいな」
耳元で小さく可愛いとか言うのダメージでかいからやめてください、心臓バクバクもの。
麗央もおれの隣に座り何も言わないけどキラキラの目線でこちらを見ている。吹っ切れてからと言うものおれと氷怜先輩を見る麗央の目がだんだんとハートになってきている気がしてそれもそれで恥ずかしい。
ちなみに麗央には前は悔しかったけど今は見てると栄養になる、とか言われたのだ。
そんなこと告白しちゃう麗央は大好きだけど見過ぎなので氷怜先輩に照れると麗央にも見られてさらに恥ずかしくなる。しかも今日はアゲハさんまでキラキラで見つめているし無言で連写されているしで逃げ場がゼロ!
「お前にしては珍しいの着てるな」
「……唯がメイクしてくれたから」
李恩が麗央に声をかけると、小さく笑って返事をした。実は前はあんまり可愛い系の着てくれなかったんだよ。とアゲハさんがこっそり教えてくれて、おれのメイクがあると可愛いのも着てくれるんだと分かったら嬉しくてたまらない。
「似合ってんじゃねえの」
「あっそ……」
李恩も麗央と口喧嘩ばかりだけどちゃんと褒めるときは褒めるしなんだかんだ2人の絆はしっかりとある。
「で、こいつに似てるってやつ何処にいんだよ」
ぴよちゃんが下のフロアを覗くとアゲハさんは連写していた手を止めてソファから立ち上がる。吹き抜けになっているこの2階からは下のフロアが全て見渡せた。
「いた、あそこよ。このすぐ下の10人くらいのお客様。キラネも蝶子もいるでしょう?」
おれも麗央もソファの背もたれに向かい直して膝をついてそっと覗き込む。上からだと顔が見えないけどすぐにわかった。髪色だけでもド派手だったから。それに、その髪色に問題がある。
「……んー?」
氷怜先輩も李恩も何故か覗き込もうとしない。おれは実物を見ていないけどあんなにド派手な色がこんなに被ったりするだろうか。
「あのー、氷怜先輩……キツネさんの髪色ってオレンジって話でしたよね」
優からキツネさんの髪は一見暗かったけど、根元がオレンジだからそっちが本当の髪色だと思う、と教えてもらっていた。
「……ああ」
ゆっくりとグラスを持ち上げながら静かに返事が来る。おれはさらに続けた。
「それであの、最近秋からダンス関係の人で水色の髪色の人がいるって聞いてて」
気になるのは水色の髪色の人の名前が鶚だった事だ。氷怜先輩がいつかおれに質問した、最近動物の名前の人が現れなかったかと。
鶚は、よく考えれば鳥の名前だ。
色々察した。
キツネさんというヘッドイーターが居て、さらに氷怜先輩の質問。それはつまりヘッドイーターと動物の名前の人は関係していると言う事だ。
今度は氷怜先輩から相槌もなかった。
「ちょっとその特徴があってる人達が同じ席に座ってるなーとか思いまして……」
偶然にしては出来すぎていないか。
そういってもまだ氷怜先輩は向きを変えたりしなかった。麗央がおれの腕を引っ張る。この雰囲気を悟ったのだ。
ぴよちゃんは覗き込んだまま何かを確認するように黙り、アゲハさんは不思議そうな顔をする。
「知り合いがいるの?」
「知り合いでは無いんですが……」
「そうなの?でも、こっち見てる」
「え?」
思わず、条件反射だった。自分でばか!と心の中で思った時にはもう遅い。目が合ってしまった。
水色の人でもオレンジの人でも無い。
真っ白なシルバーブロンドの髪。艶のある髪はワックスで束感があってやはり動物のような、それも肉食のようなイメージだ。
シルバーのピアスに赤い瞳は初めて氷怜先輩に会った日の事を思い出す。
たしかに少しだけ似てる。
あの全てを食らい尽くすような、瞳の輝きが。
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