sweet!!

仔犬

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dance!!

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「おっと……んん、それは……えーーーーあーーーーんーーー、考えさせて下さいってありですか?」

珍しく歯切れの悪い答え。
秋は腕を組みウンウンと唸って身体を横にずらしたりとにかく悩んでいる。結局答えはすぐ出なかったのかおっきな息を吐き出して決められんとソファに倒れ込む。

「そっかー……みさごヘッドイーターっぽいのかあ。才さんも神さんもなんか警戒してたしなあ」


複雑そうな笑顔で秋が呟くと瑠衣先輩は何も言わずに秋の頬を摘んだ。
アゲハさん達とのその後の時間は切り替えたように穏やかで、おれが不安な顔をしてしまったせいもあるのかヘッドイーターの話は出なかった。鶚さん達と接触する事もなくその日はアゲハさん達と楽しい場のまま終えた。


でも数日後、先輩達の間で話し合ったのか話があるからとシェアハウスのリビングに集まった。

まず秋には鶚さんの話になった。
ダンサーとして秋にしてみれば鶚さんはすごい人で、何かされたわけでもなくダンスチームの一員なのだ。だから警戒、とか距離置いてとは言わなかったけど秋は悩み出した。

「でもキツネさんと居たんじゃほぼ黒なのかなー、動物の名前入ってるんですよね?みんな」

「うん、赤羽がヘッドイーターの頭はクロコって名乗ってるらしいからおそらく唯達が会った鰐渕って奴であってるだろうね」


暮刃先輩がコーヒー片手に微笑むが秋が複雑そうな顔をしているので少し申し訳なさそうに話す。

「すんません落ち込んで、そんな顔暮刃先輩がしないでくださいよー」

「今回は本当に巻き込んじゃってるから。優を使って俺たちを呼ぼうとするくらいだから狙いは俺たちだろうし……」

「だからお前らもそんな顔しなくていい」


間に座っていた氷怜先輩の手がおれと優の頭に乗る。優と視線を合わせるとお互い同じしょんぼり顔をしていたようで優しさに思わず笑顔になる。あんまりおれたちが落ち込んだら先輩達が気にしてしまいそうだ、切り替え切り替え。


「本当に宮子さんの言葉は当たるね」

暮刃先輩がポツリと言うと優が反応する。

「……え?宮子さん?」

「うん、今年は波乱の連続になるよって実は言われてたんだよね」

そんな事を言われていたのか?!
宮子さんの言葉がもう当たるって分かってるし現に色々あったじゃないか。
今は仲良くなったけど李恩や麗央のこともあったし秋はリョウくんの事もあったし先輩達もアゲハさんのお誕生日会の日は立て込んでいたっぽいしおれたちもドレス着たりしたし、そして今はヘッドイーターだ。


「……的中率本当にすごいなぁ」

頭を抱えるおれとは対照的に優は真剣に思考を巡らせていた。顔にかかった髪を耳にかけるとしっかりとした口調で話し出す。

「アゲハさんのお店までメンバー揃って行ったのならヘッドイーターだって言ってるようなものってことですよね。もし仮に本当にヘッドイーターだとしたらサクラ姉さんの事も知ってるはず……ですかね?」

「サクラさんは表で動いてるから俺たちに直結した関係だって基本は分かると思うよ」

「じゃあ向こうは探りを入れてて、バレても良いくらいって事なのか……流石に唯と氷怜先輩が行く事は知らなかったはずですけど」

「そうだね。だからこそ定期的に会う鶚に関しは心配なんだ」

「ですよね~」


また鶚さんの話に戻ってきた秋が眉を寄せて笑った。横になっていた身体を起こし隣の瑠衣先輩の足の間に座り直した。

「瑠衣先輩的には俺にどうして欲しいっすか?」

ニッと笑った秋に瑠衣先輩はブルーの目を動かして一拍置いて返事をする。いつもみたいにおちゃらけたりしなかった。

「会うなーとか言ったらアッキーダンス出来なくなるデショ」

「おお優しさ~」

笑いながら瑠衣先輩の首に腕を回す秋。先輩達も秋のする事を制限したい訳じゃない。おれたちもそれは分かっているし、こういう時は折り合いなのだ。

「よし!えーとですね、俺ダンスはやりたいです。なのでそこはわがまま通しても良いですかね。そんでもって心配させたい訳じゃないんでチームの人を誰かダンスの時に付けて欲しいと言うお願いしても良いっすか」

「イーンジャナイ?」


最初からこの答えが出ると分かっていたのだろう。瑠衣先輩の青い目が優しげに三日月に変わる。


「んじゃ、オレもダンス行くネ」

「え、マジ?!瑠衣先輩踊ってくれんの?!こればっかりは鶚に感謝いててててててててて」

「最近ホント生意気なんだけケド、ガード緩すぎ緊張感無し男って油性で顔に書いてあげよっか~アッキ~?」

「ダサすぎる!それだけは勘弁、いひゃい!のびる!のびる!」


咄嗟に大喜びしてしまった秋が流石に痛そうな力加減でほっぺた引っ張られてる。
あれは仕方ない、ダンス激うま瑠衣先輩が見れるかもなんて秋にとったらご褒美だ。微笑ましい限りの2人は置いといて優は未だに何かを考え込んでいる。


「なんかはっきりしないの嫌なので、直接聞いても良いですか?」

「ん?」

「talkieでキツネさんにヘッドイーターのみんなでアゲハさんのお店に居たかを」


この話をするとすぐさま機嫌が急降下した瑠衣先輩。秋が苦笑しながらどうせなら有効活用しましょうよと促すと嫌な顔をしながらも暮刃先輩にスマホを渡す。

「暮ちんがして。優たんが触らないならイイヨ」

すっごいブスっとした顔でそう言う瑠衣先輩超可愛い。と、思わず口に出さないようにしたら頬が膨らんでしまい氷怜先輩にバレたのか笑いを堪えるように肩が震えている。


「はいはい……そんなに素直に答えるかな」

暮刃先輩がスマホを弄ると優が俺の口調ぽく聞いてみてくださいとお願いし暮刃先輩がチャット打ち込んだ。


「教えてくれそうですよね」

「……なんでそう思う?」


おれの不意に出た言葉を氷怜先輩が拾った。

なんでだろう。
なんだかそんな気がする。隠したり変に誤魔化したりしなさそうなんだ。
どうしてと言えば、あの目を見たからそう思うのかもしれない。

ピコンと小さな音が響いて、スマホを見つめる暮刃先輩と優が同じように眉を寄せた。



「……全員居たよ、だって」



予感が当たるとやっぱり少し怖くなるものだ。















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