ナチュラルサイコパス2人に囲われていたが、どうやら俺のメンヘラもいい勝負らしい。

仔犬

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異常事態

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「……お肉なら一昨日だってその前だってずっと出した。君はだいたい一口しか食べなかったけど……」

流石にその言葉に今度は俺が怪訝な顔をした。俺が肉を食べないはずがない。
じゃなくて、そもそもだ。


「何言ってんの……てか俺たち久しぶりに会っただろ。高校ぶり。つまり、えーと、だいたい10年は経ってる。いや、懐かしいな本当」


2人からの返事を待っても一向に返ってこない。俺も何も言えない。

なんなんだこの空気は、お通夜かよ。2人こそご馳走を前にしてたいして手をつけもせずただじっと俺の顔を見るばかりだ。ようやく話し出したと思えば小さな声で2人だけで話し合いを始める。


「これ、記憶が飛んでんのか?」

「飛んでる……とは違うかも……まるで全く違う記憶を話しているように見える」

「……医者呼ぶか」

「だけど昔の英羅みたいだ……」


また2人黙って俺を見つめる。
医者って俺は病気扱いか。鎖つけて部屋に閉じ込めてるお前らの方がやばいからな。

「……そんなこそこそしてないで俺と話して欲しいんだけど……」

そう言った俺に2人はまた目線を合わせた。仲悪いくせにこう言う時だけ息が合う。

「なあ、10年前って言うがお前は何を覚えてる」

「覚えてるって何を?10年前の事を?覚えてるよ、あー……ほら知ってると思うけど、色々重なって地獄だったし……2人とは高校終わりごろには疎遠になっちゃったよな、俺もあの時バタバタしててさ……」

俺がそう言うと綺麗な目を細めて来夏が少しほっとした表情になった。

「そう、だよね!僕すごく心配してたんだよ……君は入院してて」

「入院?俺入院なんてしてないけど」

「何言って……」

「俺、高校卒業してすぐ働いたし。そうでもしないと生きていけなかった」

来夏の表情はすぐに困惑に戻る。
入院?入院したのは母さんだけだ。俺はもうがむしゃらでそりゃ体調崩すことだってあったけど、そんなこと気にしちゃ居られなかった。死ぬほど働けたのはまだ少なからず健康だったからだ。

俺の泥臭い話に来夏は青い顔をした。隣で静かに聞いていた知秋が俺の名前を呼ぶ。

「英羅、俺のこと、分かるか」

不思議な質問だった。
だけど目に真剣さを感じて俺は素直に答える。

「……知秋は、知秋だよ。高校の同級生で同じクラス。来夏もそうだ。3年の時に俺たち席が前後になった。俺を挟んで前に知秋、後ろに来夏……」

知秋は確かめるように丁寧に俺の言葉を聞くと次を促した。

「……それで?」

「え、それで……そっから仲良くなって……よく遊んだよな。母さんは入院して居ないし父さんも会社遅いからって2人はずっと家に居てくれて。あ、父さんと一緒に俺が作った料理2人も食べただろ?」


来夏と知秋は頷いた。
この事については俺が言っている記憶に不思議はないらしい。2人の目がさらに続きをと訴える。聞きたいことがあるのはこっちなのだが、2人の様子に仕方なく話を続ける事にした。できればここから先はあまり話したく無い。


「……それで楽しかった高校生活も終盤になってきた時。母さんが死んで……父さんも死んで……俺、その時には金がなかったから大学に行けなくて、そもそも生活がやばいから働き始めた……もう深夜までボロボロになって働いてさ……そっからはもう誰かに連絡とか、2人にも報告すらできなくて……そのまま俺たちは会わなかった」



これがあっけなく終わった俺の青春時代だ。ああ、情けない。こんな話させてくれるな。
2人の表情だって、俺を惨めそうに見ているじゃないか。久しぶりに会ったからってなんでも話すべきじゃ無い。

俺の話を聞いて数秒間誰も何も喋らなかった。ようやく口を開いたのは知秋だ。

「来夏、どうする」

問われた来夏は少し思案すると知秋に耳打ちする。今度は何を言ったか俺には聞こえなかった。知秋は一度目を閉じ、開けた目で俺をしっかりと捉えていた。変わらない真っ直ぐな黒い瞳は光を灯している。


「……たしかに英羅とは高校卒業して俺たちと離れた。だけどな、俺たちはお前をちゃんと見つけ出した」


見つけ出した、と言う意味が分からなかった。陰ながら知っていたと言うことだろうか。俺が不思議そうな顔をすると知秋は眉間に皺を作って話を続けた。


「お前は……体調を崩して入院してた。それから、英羅と俺たちは此処でずっと一緒に居たんだよ。だから、お前は働いてなんか無いしほとんどの時間を俺たちとで過ごしてた。今こうして、今日までだ」

「……は?」


目覚めた時から全てがおかしい。
俺の記憶は確かで、2人が嘘をついているとしか思えない。

でも、俺は知っている。
2人の目に嘘が無いことを。


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