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軌道修正
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しおりを挟む何時かは分からないがしばらくすると来夏と知秋が呼びにきた。一応俺の言いつけを守って今日になるまで待っていたようだ。それでも朝から昨日のことなんて何もなかったかのように普通の会話をしながら早く出てこいと語りかける。
喉も乾いたし風呂も入りたい。頭をフル回転させたせいで腹ぺこだ。こんな状況でも腹が減るなんて愉快な俺。
ついにドアを開けたら2人がすでに立っていた。そう、親友だ。この2人は親友だ。
どんな記憶を見ても、過去の高校時代の2人は変わらない事実だと思う。それに2人の目に嘘はない、例え欲望を抑えられない人間になってしまったとしてもそこは変わらなかった。
「英羅、やっと出てきたか」
「おはよう、お腹空いたんでしょ。用意できてるよ」
待ち侘びていたとパッと顔を綻ばせた2人を完全に無視して風呂を探す。何個かドアを開けたらようやく見つけた。ガラス張りで丸見えの豪華な風呂だ。服を脱いでいるとずっと後ろをついて来ていた2人が俺をじっと見ている。
「……服新しいの持ってきて」
「え、あ、うん!」
パタパタと駆け出した来夏を見送ると何故か知秋が服を脱ぎだす。
「……何で服脱ぐの」
「何でって、お前は俺が洗ってやってた」
脱ぎかけていた上着を羽織り直す。そしてドアまで行ってドアノブを回し、廊下へ手のひらを向けた。
「1人で入るから、出ていって欲しい」
しっかりと目を見てそう言うと驚いた表情をする知秋。それでも俺が本気で言っているのが伝わったらしい。言葉を詰まらせ、眉を寄せつつも上着を持ってバスルームから出て行く。
「来夏にも服はドアの前に置いとくように言っておいて」
何か言いたげな目を無視してドアを閉めて鍵をかける。
あの2人のことだから、ここくらい簡単に開けられるだろう。
でもこう言う線引きは重要なのだ。
銀のシャワーを持ち上げお湯を顔にかける。さっきまで1人だったけど、ようやく1人の時間を自ら作れた気がした。
二人が来るまでの間に俺は腹を括ったのだ。
だから何があっても動揺してはいけない。
だけど真顔だった顔が歪みそうになりシャワーをさらに顔に近づける。さっきの知秋の言葉が頭をよぎる。
「あ、あ、洗ってやってた……?!」
ああ、最悪だ。要らぬ情報を仕入れてしまった。
何させてんだよ俺!体くらい自分で洗えよ俺!!
恥ずかしすぎてシャワーを水に切り替える。滝行の代わりの精神統一だ。冷えろ頭、整え精神。乱されるな、俺の行いが悪かったとしても、それを甘やかすあいつらもやばいのだから。
すでにお湯が張られていた浴槽は大きくて3人で入ったって余裕そうだ。ああ、何でもかんでも繋がってしまう。あの夢が本当だとしたらここでだってそう言う事をしたのだろう。
最悪だ。血の滲むような体力仕事があっけなく無かった事になっているより、2人とそう言う関係のイヤラシイあれやこれやの方が俺にはショックすぎる。
「それでもだ……」
身体を完璧に洗い壁についていた鏡を見ると当然俺の顔が目に映る。あれ、なんか俺若い気がする。痩せてはいるけど、やっぱり肌も綺麗だ。働いていた時とは違って体調だけはすこぶる良い。
体が元気なら、やっぱり落ち込んでる暇なんてない。どうせ死にたかった人生だ。
少し掻き乱したっていいよな。母さん、父さん。
「……ここから俺は第二の人生を初めてやる」
俺の呟きはいつもみたいに消えていかなかった。壁に反響して俺に返ってくるのだ。
少しだけ、いつもと違う自分になれそうな気がした。
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