ナチュラルサイコパス2人に囲われていたが、どうやら俺のメンヘラもいい勝負らしい。

仔犬

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依々恋々

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「美人と男前に挟まれたんだけど俺!やっぱり並ぶだけの価値ある顔してるって事だろ?」


そう彼が言うとクラスメートの数人が笑い出した。

「はいはい。イケメン自慢してんじゃねーよ!」

「ふふん、僻むな僻むな」


ぱっちり二重に整った鼻と口、少し幼く見える顔は愛嬌があった。中身は案外潔く、男子校生らしい馬鹿なところもあってそんな顔を見ていたらどんどん惹かれていった。

ころころと変わる表情が太陽みたいだ。
でも本当に太陽なら掴めない。





クラス替え当日、知秋はクラスメートには一切目を向けず寝てばかりだった。出席番号順に並べられた席に興味もない。
女子たちの黄色い悲鳴は頭痛がするし男子の興味関心がこちらに向くのも鼻につく。知秋は嫌になって顔を伏せて時間が過ぎるのを待った。下らない、楽しくもない。興味がない。

知秋から2個下がった席にいた来夏も校庭に飛ぶ蝶をただ眺めていた。どちらかと言えば蝶は嫌いだ。虫なんて美しいと思えない。だけどあの模様は良い、金の刺繍であの模様だけを入れるのはどうだろうかと服のデザインが思いつく。まだ1人もクラスメートの顔すら見ていないのに。


その2人の間にガタンと勢いよく座った来夏は一瞬で2人を会話の中に引きずり込んだのだ。


「来夏と知秋でしょ?俺、英羅!よろしくな?」


寝ている知秋を指で突き、外を見ていた来夏の視界に笑顔いっぱいで英羅は笑いかけた。驚いたのも束の間、周りのクラスメートも一気に近寄って来たのだ。

英羅がいるなら2人も話せる。そう思った者もいれば英羅と話したいだけの者も多かった。とにかく彼は人を引き寄せる、そんな魅力があった。


「いつも2人どこで昼飯食ってんの?」

「……その辺で」

「その辺ってどの辺?」

こんな調子でポンポンと会話が投げる英羅はだいたい突拍子もなく2人に話しかける。

それでも英羅はいつもクラスメートに囲まれてばかりで自分たちの事などすぐに忘れるだろう、できることなら巻き込まないでほしい。

そして最初の挨拶から3日ほど経った。
2人も最初こそ驚いたが興味はすぐに消えてしまう、それでもまた春の嵐のように彼はやってくるのだ。


「じゃあ今日は2人と一緒に食べよ」

「あ?」

「え……何で?」

「一緒に食べたいから?嫌だったらやめるけど……前後席のよしみじゃん」



とは言われてもいきなりだった。
普通なら2人はこんな勝手な話は無視だ。耳にも入らないが悪戯に笑う英羅に毒気を抜かれ仕方なく席を立つのをやめた。

席を向き直すような事もせず英羅と知秋が横を向いて、後ろの席の来夏は机に向かったままそれぞれ食べ始めた。お腹は空いていなかったが英羅がバックからお昼ご飯を探すので仕方なく2人もお昼ご飯を取り出した。


「つっても今日俺昼飯買えなくてこれしか無いんよなぁ」


ぱさりと机の上に置かれた菓子パンがひとつ。知秋は視線だけを菓子パンに移し、流石に驚いた来夏が静かに尋ねる。


「これだけ……?」

「今月ピンチでさー」


ピンチと言っても学生ならば家に何かしらはあるのではないか。来夏が黙り込むと英羅は話し出した。

「父さん仕事で帰って来れないし、母さん病院だからやりくり自分でやろって思ったんだけど、バイト代足りなかったわー。あ、でも明日給料日だから滑り込みセーフ!」

「……バイトしてんのか」

「おお、知秋が初めて話しかけてくれた……睨むなっつの」

英羅がにやけると知秋は眉間に皺を寄せる。むず痒さによるものだったので睨んだわけではなかった。

「してるよー先生にも許可もらってさー。今はカラオケと居酒屋!」

掛け持ちだ。
この会話だけでも英羅の環境が伺えたが2人はまだ踏み込むような関係性ではなかった。ぱくぱくと菓子パンを食べる英羅の腕は細くて、どこにそんな元気があるのか不思議だった。あっという間に食べ終えてしまう英羅を見て来夏は自分のお弁当と英羅を交互に見て1番カロリーのありそうな肉をフォークに突き刺した。


「あげる……」

「え、ん?」

「足りなそうだから、あげる」


来夏が静かにそう言うと英羅の瞳がたちまちきらきらと光る。来夏は驚いた。人の瞳がこんなに光るのかと。


「まじでいいの?うまそー!」


フォークごと貸すつもりだったのだが英羅はパクりと来夏の腕から肉を口に入れる。蕩けるような笑顔を見せた英羅。


「んま~、やっぱり肉だよな」

「……これもやる」


それ見ていた知秋も自分のおにぎりを差し出した。よく食べる知秋は数個おにぎりを持っていたし、目の前でそれほど嬉しそうに食べられいつのまにか手が動いていた。

「なに、何何。お前ら天使?!」


けらけらと笑いながら嬉しそうにおにぎりを頬張る英羅。知秋も来夏もただその姿を見ていた。


見飽きなかった。誰に声をかけられても誰と付き合ってもこんな感情生まれなかった。だけど英羅は一瞬で2人の心の何かを掴んだのだ。


「んーまじでありがと!米もあれば元気100倍~!」

上履きを抜いで椅子の上で体育座りをした英羅がなあなあとまた2人問いかける。

「2人っていつも一緒にいるけど、友達って割には喋らないし、もしかして幼馴染とか?」

「……まあ、親同士が仲良い」

とは言っても他の奴といるよりは幾分か楽、と言うレベルの仲だった。お互いに興味がない分邪魔にもならないし、2人でいた方が割り込みもなく都合が良い、というくらいの関係だ。

それでも英羅は自分のことのように喜んだ。


「え、そーなんだ!良いなぁ俺親戚とかも居ないからさ、ちっちゃい頃からの友達とか憧れる」

「そんな良いもんじゃねぇよ、だいたいこいつ何考えてるか分かんねぇし」

「……知秋はすぐイライラする」

「あ?テメェが分かりずらいからだろ」

「おっと?!何何、喧嘩すんの?!」


物理的に板挟みの英羅が2人に向かってストップの合図で手のひらを向けた。焦った様子の英羅だが数秒経つとぷっと吹き出す。


「変なの、だったら一緒に居なきゃ良いのに」


窓から柔らかい風が入ってくると英羅の髪を撫でた。体を丸め小さくなってくすくすと笑うのだ。目尻を下げて楽しげに屈託なく。
光に当たっているのにまるで光っているのは英羅自身だった。


2人の恋は簡単に始まった。








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