ナチュラルサイコパス2人に囲われていたが、どうやら俺のメンヘラもいい勝負らしい。

仔犬

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光芒一線

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「俺って2人を悲しませてしか居ないのでは……」


次の日の朝、まだ2人は俺の横で寝ていた。1人で目覚ましよりも前に起きた俺は無力さに打ちひしがれていた。

引きこもりメンヘラクソビッチど畜生英羅の呪いは2人に深く入り込みなかなか解けない。本当に自分なのかと疑いたくなるほどだが現に親友は毒牙に掛かっている。

まあ記憶上の俺も俺でそれなりに病んでいたし、いつも通りの俺、もしくは高校の時の俺なら2人をほぐす事が出来るのかもしれない。
高校の時の俺って今とどう違うんだ。若さとか言われたら取り戻せないぞ。


「まだだ、焦ったって仕方がない。俺はニート、すなわち時間が無限……無敵だ!」


悲しい鼓舞だが今はこれしか余裕をこける材料がないのだ。だいたい最初の一回きりでこの世界の俺の記憶も見ないし、真新しい情報もない。困ったものだ。

俺が得られる情報って言ってもテレビで見るものくらいで結局パソコンとかスマホ貰えないんだよなぁ。いや自分で用意するものだし貰うのも変な話だけど、とにかく何も外に繋がるものは無いのだ。


「……取り敢えず起きるか」

今日も今日とて雁字搦めの朝は2人を起こさずに抜け出すのは至難の業だ。それでもなんとか抜け出し今日着る洋服を探す。


「今日は知秋の服の日な、全くこれはいつまで続くんだか……しかも知秋の選んだ服、たまにやばいのあんだよな」


まさしく人の好みはそれぞれだ。
来夏はおしゃれが重視でサイズ感も肌の出し方もそれぞれ。肌が出てるのにいやらしく見えないのが彼の服の特徴というかあれを才能と言うのだろう。


そして、知秋。彼の選ぶ服はアウトの日がある。最初はなんか可愛いのが好きなのかなって俺も思ってんだよ。多分可愛いのが好きってのは間違いないんだけどそれと同時に彼はセクシーな服も好きなのだ。セクシーの日は完全にアウトで肩丸出しか足丸出しか背中丸出しか、とにかく絶対どこかは丸出し。布の面積がとにかく少ない。

2人に共通して言えるのはたまにショーパンとか出てくるところ。
おい、こちとら28のおっさんだぞ。そんなとこだけ趣味合わせて仲良しすんなよ。でも着ないと不機嫌になるから着るんだけどさ、どうせ誰もいないし。もちろんその日はことあるごとに触ってくるので警戒心レベルを引き上げるが。

「まあでも今日はマシ」

知秋が選んだ今日の服は身体のラインが出ない代わりに肩がすこし出る。白のノースリーブを見せて着るようでその上に襟が肩まで大きく開いた淡いピンクのふわふわのニットを着る可愛い系のある意味まだ当たりの日。ボトムスはストライプが細かく入った白の太めの長いやつだし着心地も良くて楽ちん。

いやまあ、これはこれでおしゃれで可愛いけどやっぱり28歳が着るのはどうなのか、まあ顔だけは可愛い系で童顔といえば童顔、しかもマシな方なのでどうにかはなるのが俺のすごいところ、と無理矢理ナルシストを目覚めさせる。

「顔なんてどうでもよかったのに今は救われてる……」

こんな監禁まがいな事されてるのに変な話だ。自分で選んでここにいるけどさ。
今日も今日とて誰にも会わないが顔も洗って髪もセットして、はい完璧。

「可愛いじゃん俺」

言っててキモいが気分を上げる事が何より大事。そろりそろりと無事リビングまで移動できた。やわらかい朝日に包まれる広い空間はいつも静かだけど、朝はより静かだ。


「英羅ぁあ……」

「声ひっく、起きてんなら言えって」

「何が悲しくて朝から来夏の顔なんざ見なくちゃいけねえんだよ。なんのためにお前が間にいると思ってる」

「……少なくとも俺は壁じゃねえですよ。つか良いじゃん、来夏超美人なのに。俺は朝から来夏の顔見て嫌な気分になった事ないわ」

「ああ?てめえ俺の顔見て起きろよ?!」

「切れるポイントがわかんねえ!!」


朝から元気な知秋はあくびしながら俺の後ろに立つとぎゅうと抱きしめる。これはだいぶ寝ぼけているらしい。しかもなんか硬いものが当たっている気がする。

「あーーーーーー、やりてぇ」

「水ぶっかけて良い?」

腰に回る手をつねってやればいつもの舌打ちが返ってくる。それが返事だと思ってませんかね。

ちなみに知秋は寝る時上半身裸タイプなので見事に割れた腹筋が俺のコンプレックスも刺激してくる。

「これだから男前はムカつくよなぁ」

「何、褒めてんの」

「そう聞こえたならヨカッタデス」


嘆くより俺ももうちょい鍛えよ。朝だしコーヒーでも飲もうとコップを用意。来夏曰くダイエットに良いらしいし、ここのコーヒーメーカーこれまた美味いわけよ。


「知秋コーヒー飲む?」

「ああ」


まだ半分眠そうな顔で知秋が頷いた。
黒髪はいつもはバッチリワックスで決まってるけど今はまだ寝癖があっておろしたままでなんだか若く見える。
寝起きのドーベルマンみたいな親友にコーヒーを渡すと、さんきゅと静かに呟き寝ぼけ眼で飲み出した。

あ、今ならいけるかも。


「ちあきぃ」

「ん」

「タバコ一本ちょーだい?」


そう、タバコよタバコ。
俺あれから実は一本も吸ってないの。ある日おねだりしたらそりゃもう冷たい視線と無理の一言で黙らされた。来夏は元々吸わないし、俺が吸わない方が良いに決まってるので味方が誰もいないのだ。
そりゃ仕事もないし、吸いてーって気持ちはかなり減ったとはいえヘビースモーカーだった俺はかなーり我慢してる。

知秋の眉がピクリと動きコーヒーを飲む手が止まった。黒い瞳にも光が戻り俺の言葉をじっくり理解しているようだ。

くっ、遅かったか、コーヒー飲む前に聞けばよかった。

知秋は数秒黙り、沈黙に耐えられなくなった俺は仕方なく諦めようとした時だった。


「……あいつに言うなよ、うるせーから」


大きなため息とともに一本だけくれたのだ。最初と同じ銘柄の知秋の電子タバコ。


「マジマジマジ?神様かよ、やったあ~!」

「声がでけえ、静かに吸え」

「らじゃ!」


ビシッと敬礼してスイッチを押す。恋焦がれそうなほど待っていた一口目は目が覚めるほど美味い。吐いた煙が丸くなりドーナツ状に変わっていく。俺が唯一出来る技だ。


「……本当に吸ってたんだな」

「ん?そのはず」


知秋がコーヒーを飲みながら煙と俺をじっくりと見つめていた。少し不思議なものでも見るように。

「その筈ってお前の記憶では確かに吸ってたんだろ」

「そうだけど、未だに説明すらできない状況だし……まるでどっちかが夢だったんじゃ無いかなとか思っちゃうよたまに。後はそれこそ世界線違い」


もともと死にながら生きていたようなものだからあんまり慌てなかったし、この日常を受け入れているから余計かもしれない。


「……戻りたいのか?」






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