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我武者羅
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俺が笑うだけで2人は不安になる。
それじゃあ俺が普通にしているだけでは何も解決しないじゃ無いか。たしかに笑いかけると困ったような顔をするときはあったけど、改めて不安になるなんて言われたら俺だって考えてしまう。
普通に過ごすだけじゃだめなら、もっと根本的な部分からちゃんと向き合わないと2人は一生変わらないのか。
俺を抱きしめていた知秋はしばらくして顔を上げた時にはいつもの余裕の笑みに戻っていた。きっと不安をどうにかしたいなんて思考にはならないのだろう、だってずっとそうして過ごしてきたのだ。呪いみたいな呪縛みたいな気持ちと。
「これまた完璧なふわとろオムライス」
夕方になり来夏の希望通りオムライスを作った。
俺料理テク上がってるよな。ちょっとつついたら中からとろとろが出てくる卵完成したもん。
「すごい、すごい!美味しそう……」
しゃがんでテーブルにあるオムライスと同じ目線になって感動する来夏がへにゃりと笑った。美人があっという間にこの可愛さよ。頼む、これが永遠であれ。
「オムライス好きだったっけ来夏」
「英羅が作ったものは、全部好き」
「そ、そうかい」
小っ恥ずかしいセリフがやはり今まで以上に小っ恥ずかしく感じる。どれもこれもメイラのせいだ。
「てゆか来夏、今日帰ってくるの早かったな」
俺を見上げる来夏の目が輝いた。
「英羅から連絡くれて、オムライスまで作ってくれるならすぐ帰る」
「そんな珍しいか?……あーそうかそもそもスマホも持ってないし料理も作ってないんだったもんな」
現代人としてはいかがなものか、でもそれほどメイラの精神は普通じゃ無かったってことだ。何も見る気も起きない、何をする気もない、生きる理由もないんだ。
「英羅、知秋愛してるって書けよ」
「書きませんね」
「僕も来夏大好きって書いて」
「だから書かないけど?!」
いつのまにか自室から戻ってきた知秋が冷蔵庫から取り出したケチャップ片手にまた恥ずかしいことを言ってきた。無理やり書かせられた愛の言葉だとしても今は荷が重い、なんて言えないのでとりあえずクマとヒヨコを描いてやった。
「……お子様ランチかよ」
「英羅、上手だね」
知秋が不満げだったけど来夏はニコニコしてるからまぁよしとしよう。
「ホラ!食うぞ!」
席につけと言ったら当然の如く2人が俺の横に座る。
「あのなあ!真横に並ぶなよ、バス停じゃねえよの……」
「良いだろ別にご飯くらいどこで食っても」
「じゃあこのテーブル、テレビに向けようよ。こっち側に居ないとテレビが見えないって、最初からそう言うものだと思えば良いよね」
来夏が微笑んで知秋も無言でテーブルの方向をソファ前にあるテレビに向ける。いや、良いけどさ、ここのテレビでっかくてちょっと離れたとこから見ても問題ないけどさ?
リビングの景観やばいことになってんぞ。そこまでして俺の隣が良いなのかよ。
「なんでそんなに俺が良いかね……」
思わず飛び出た言葉だった。
そしてやっぱり両隣で親友が当たり前のように言うのだ。
「英羅だから」
馬鹿なこと聞くななんて言われそうな勢いに、俺はスプーンを握ってオムライスを食べ始める。
「はいはい」
いつものように流しているのに、これまでとは違ってのしかかる言葉。
なんだか少し胃が痛いのは気のせいだ。
それじゃあ俺が普通にしているだけでは何も解決しないじゃ無いか。たしかに笑いかけると困ったような顔をするときはあったけど、改めて不安になるなんて言われたら俺だって考えてしまう。
普通に過ごすだけじゃだめなら、もっと根本的な部分からちゃんと向き合わないと2人は一生変わらないのか。
俺を抱きしめていた知秋はしばらくして顔を上げた時にはいつもの余裕の笑みに戻っていた。きっと不安をどうにかしたいなんて思考にはならないのだろう、だってずっとそうして過ごしてきたのだ。呪いみたいな呪縛みたいな気持ちと。
「これまた完璧なふわとろオムライス」
夕方になり来夏の希望通りオムライスを作った。
俺料理テク上がってるよな。ちょっとつついたら中からとろとろが出てくる卵完成したもん。
「すごい、すごい!美味しそう……」
しゃがんでテーブルにあるオムライスと同じ目線になって感動する来夏がへにゃりと笑った。美人があっという間にこの可愛さよ。頼む、これが永遠であれ。
「オムライス好きだったっけ来夏」
「英羅が作ったものは、全部好き」
「そ、そうかい」
小っ恥ずかしいセリフがやはり今まで以上に小っ恥ずかしく感じる。どれもこれもメイラのせいだ。
「てゆか来夏、今日帰ってくるの早かったな」
俺を見上げる来夏の目が輝いた。
「英羅から連絡くれて、オムライスまで作ってくれるならすぐ帰る」
「そんな珍しいか?……あーそうかそもそもスマホも持ってないし料理も作ってないんだったもんな」
現代人としてはいかがなものか、でもそれほどメイラの精神は普通じゃ無かったってことだ。何も見る気も起きない、何をする気もない、生きる理由もないんだ。
「英羅、知秋愛してるって書けよ」
「書きませんね」
「僕も来夏大好きって書いて」
「だから書かないけど?!」
いつのまにか自室から戻ってきた知秋が冷蔵庫から取り出したケチャップ片手にまた恥ずかしいことを言ってきた。無理やり書かせられた愛の言葉だとしても今は荷が重い、なんて言えないのでとりあえずクマとヒヨコを描いてやった。
「……お子様ランチかよ」
「英羅、上手だね」
知秋が不満げだったけど来夏はニコニコしてるからまぁよしとしよう。
「ホラ!食うぞ!」
席につけと言ったら当然の如く2人が俺の横に座る。
「あのなあ!真横に並ぶなよ、バス停じゃねえよの……」
「良いだろ別にご飯くらいどこで食っても」
「じゃあこのテーブル、テレビに向けようよ。こっち側に居ないとテレビが見えないって、最初からそう言うものだと思えば良いよね」
来夏が微笑んで知秋も無言でテーブルの方向をソファ前にあるテレビに向ける。いや、良いけどさ、ここのテレビでっかくてちょっと離れたとこから見ても問題ないけどさ?
リビングの景観やばいことになってんぞ。そこまでして俺の隣が良いなのかよ。
「なんでそんなに俺が良いかね……」
思わず飛び出た言葉だった。
そしてやっぱり両隣で親友が当たり前のように言うのだ。
「英羅だから」
馬鹿なこと聞くななんて言われそうな勢いに、俺はスプーンを握ってオムライスを食べ始める。
「はいはい」
いつものように流しているのに、これまでとは違ってのしかかる言葉。
なんだか少し胃が痛いのは気のせいだ。
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