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曖昧な領域
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しおりを挟む「本当そういうトコ……」
「困るなぁ」
瑠衣先輩と暮刃先輩が良いとも悪いとも言い難い感情の顔をして、氷怜先輩にはもはや目があったのになぜか逸らされてしまう。
「ええそんなダメな感じですか」
「いえいえ、困るのは氷怜さん達のりせ……」
「赤羽っちレッドカード」
おれをなぐさめるために爽やかに話し出した赤羽さんを瑠衣先輩が塞きとめる。
この雰囲気はおれたちには言えない特殊な悩みなんだろう。
「……氷怜先輩」
「大丈夫だ……」
全然大丈夫じゃなさそう。これから暮刃先輩の美味しい料理なのにとても食べれられなさそうな顔を手で覆っている。
ここで嘘ついてもしょうがないと思って言ったけど言わない方がよかったのだろうか。言ってしまった後だからやっぱり落ち込んだところでしょうがない。
それに赤羽さんだけが呼吸困難で死ぬんじゃないかってくらい肩震わせてた。いっそ大爆笑したらいいのに。
暮刄先輩が料理をやめて氷怜先輩のソファの後ろに立つ。歩く姿も王子様だが、今日は少し違った顔をしている。
「……うーん、ちょっとね複雑なんだよその辺は」
「恋人と兄貴みたいな気分が混ざるからな……」
つまり氷怜先輩からすればおれが恋人、秋と優が弟となるわけだ。氷怜先輩がお兄さんとか友達全員に自慢するよね。
秋も同じことを思ったらしいキラキラした目をした。
「氷怜先輩がお兄さんとか感激すぎる……」
「今はそこじゃねぇだろ……」
遠い目をしだした先輩達におれたちはなんと言ったらいいかわからず、一瞬黙り込む。すると赤羽さんがキッチンから声を張った。爽やかな笑顔で。
「兄なんて言葉でまとめてますけど……あれだけ経験してるんだからまるっと全部いけ」
「赤羽っちストップーーーー!」
「うお、びっくりした」
突然叫び出した瑠衣先輩に隣の秋が被害を受ける。
ごめんねと謝られた秋だが、おれたちと一緒に首を傾げた。
「んー、まだこれはオトナの事情だから~」
「ええなんすかそれ」
瑠衣先輩は教えるつもりは無いらしい。
では何故そんなに困惑の顔をしているのか気になってしまうでは無いか。そうなると解決の糸口を見出すために優は考え出した。
「じゃあ、逆に先輩達がキスしてたら……」
「あー」
「んーーーー」
悩みながら俺たちは想像し始める、酔ったとしても先輩達は色気たっぷり大人の余裕だろう。
「それはちょっと見たいかも……」
呟いたおれに先輩達がまたなんとも言えない顔をした。あ、やばい。やっぱり素直すぎた。
秋と優が呆れた顔をするのでもう開き直る。
「えーーだって絶対見れない色気がさあ!」
「いやわかるけど口に出すなよ唯は!そういうとこだぞ!」
「アッキーわかるんダ…………」
ちょっとぽかんとした瑠衣先輩が秋を見つめる。秋がしまったと言う顔をして手を口で抑えた。
「ほらほら、もう遅いからてゆかそんなこと言って優だってちょっと見たいでしょ?」
「うーん、まあ、たしかに」
優ってこんな時だけ素直だよね。
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