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夏の気持ち
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しおりを挟む「お帰りなさーい!!」
「早かったですね」
「うお!?」
帰ってきた先輩達を出迎えたら秋が速攻瑠衣先輩に連れ去られ、プールに一緒にダイブ。ぎゃーとかアハハとかいろんな声が庭から聞こえる。楽しそうで何よりだ。
速すぎてよく見えなかったけど瑠衣先輩玄関開けたらすでに半裸だったような気が。
「あいつプールって聞いたら早くしろって上脱ぎ始めて、そのせいで会議が終わった」
「わあ……タイミング悪くてすみません」
「故意にやってる瑠衣が悪い」
氷怜先輩今日はおろしたままの髪型のせいで目が少し隠れている。少しだけ潤んでいるように見えるのはもしかしたら眠いのかもしれない。
「お疲れですねぇ」
「酒飲んだら目冷める」
「……普通逆なのでは?」
あくびをひとつ、それからおれのほっぺを大きな手でひと撫で。
「……着替えるわ」
一瞬瞳を細めてそう言いながら二階に向かう氷怜先輩。
あ、とゆか瑠衣先輩もまだ普通の服だ。
「氷怜先輩、瑠衣先輩の水着を……」
「それも持ってくる」
背中に声をかけると緩く手を振ってくれたので最初からそのつもりらしい。この優しさに幾度きゅんしたことか。
見ていた優は苦笑しながらも暮刃先輩の元に行くとまたおかえりなさいと微笑んだ。
「だから今日早いんですね」
「また予定組み直さないと……まあ久しぶりにゆっくり君達と遊べるけどね。遊びすぎて身体冷やしてない?」
「浸かってないとあついくらいですよ」
「殆ど準備出来てるんで、いつでも食べれますよ!」
「ありがとうね」
微笑んだ暮刃先輩も着替えに向かった。
暮刃先輩も今日は髪の毛を何もしていない。それって実は珍しい事で暮刃先輩は出かけるならしっかりセットするタイプ、だから連日の忙しさが垣間見える。まあもちろん何もしなくても拝むくらいかっこいいんですけどね、ただちょっと心配だ。
「なんかちょっとお疲れ気味だね」
「やっぱりそうだよねぇ」
追加で色々買ってきてくれたようでお菓子もお皿に盛り付けだ。優がキッチンの棚からグラスを取り出すと眉を下げて笑っている。
「プール平気だったかなぁ」
「うーん……明日の予定それとなく聞いて、これずっと飲み続けそうなら無理矢理でも先輩達とベッド向かお」
「ラジャ」
追加のお酒の量がとんでもないと気付いてしまったおれたちである。
お皿を運びつつ優と庭に戻るとワニの上に瑠衣先輩が立っていた。しかもぴょんぴょんしてる。横では秋が体を水に浮かばせながら瑠衣先輩を指さす。
「瑠衣先輩マジで体幹オバケ!」
「えー普通立てるヨ」
「それ座るにしてもぐらぐらですもん」
体感通り越して無重力に見える、ワニの上で一回転する人初めて見たよおれ。瑠衣先輩は2人と真逆でとても元気だ。というかいつもより元気だ。
「人も違えば用途も変わるなぁ」
優が感心しながらバーベキューセットの元に行くのでおれもそれに続く。流石に暗くなってきたけどライトのおかげで不便はなし、本当に隅々まで良いお家なのだ。
丸型のバーベキューコンロにお肉と野菜を並べていく。このコンロも使いやすいし、足が三脚で可愛いのよ。
「瑠衣先輩の好きなチーズも煮込んでフォンデュ用に作りましたよ~」
「唯ちん分かってるネ~!もうさー話長いしお腹すいたし、ヨイショー」
瑠衣先輩の緩い口調からは想像できないジャンプ力で、ワニからそのままこっちまで飛び移った。慌てて優がタオルを渡すのは瑠衣先輩がびしょびしょのままどこでも行動するからだ。
「会議の予定立て直すって言ってましたよ。なんか重要なやつなのでは……」
「えー、でもさー働きすぎはー良くないデショ」
ガシガシとタオルで拭きながら、ドスンと椅子に座る瑠衣先輩。
もしかしたら瑠衣先輩なりの休憩のとり方とも言えるのでおれと優は思わず苦笑してしまう。
「俺たちは早く帰ってきてくれて嬉しいですよ」
「ほらほら、優たんは分かってくれるのに。堅物暮ちんは煩いし、ひーはこの通りオレにたんこぶを作るワケ」
瑠衣先輩が可愛い顔で慰めて?と上目遣い。青い瞳がライトに照らされてキラキラ光る。しかも水も滴ってなんかもう全部はなまるで可愛い。
「くうぅ、可愛い!!」
それはもうきゅん。瑠衣先輩は疲れたら甘えるタイプだ。可愛さにやられたおれたちが撫でてあげると後ろで大きめの咳払いが聞こえてきた。
「誰が堅物だ」
「どうせこぶなんか出来てねぇだろ石頭が」
暮刃先輩と氷怜先輩がそれぞれ文句を言うと、瑠衣先輩はウゲー出た出たと舌を出す。ついにそのお顔にボスンと水着が投げつけられた。
この先輩達のじゃれあいほど見ていて得する気持ちになるものはない。
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