眠れる森の少年と二人の魔法使い

石月煤子

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まさかこんなことになるなんて。
予言を見落とした罰でしょうか。

「シャルトリュス、すごく、きれい」

繊細なレースに彩られた天蓋つきの豪奢なベッド。
全裸のペルシアにぎこちなく乗っかった、ローブや下肢の服を脱いで立襟の長袖シャツ一枚という心許ない姿になったシャルトリュス。

「ペルシア……重たくないですか……?」

色事にはてんで疎いが彼是数百年生きてきた、惚れた腫れたな関係もあった、つまり、まっさらというわけじゃあなかった。
しかし子は成さず、ラグドルと同様に独り身、ここ半世紀においては下半身に対し実に慎ましい日々を送っていたものだから。
正にまっさらだったペルシアの純潔を捧げられてその後孔は年甲斐もなく従順にときめいていた。

「こんな私で……本当によかったのでしょうか……?」

満遍なく瑞々しく透明感に満ち溢れた肌は痛々しいくらいで、正視できずに、シャルトリュスは丸縁眼鏡の下でずっと伏し目がちでいた。

「こんなシーラカンスみたいな私相手に……せっかくの初めてを奪われるなんて……可哀想……」

至高の芸術品を穢しているような気がして先程から自己嫌悪が止まらないシャルトリュスに、ペルシアは、くすぐったそうに笑った。

「古代から生き永らえてきた神秘的な魚」

シャルトリュスの胎底で嬉々として育った雄蕊(おしべ)。
甲斐甲斐しく抱擁され、献身的な温もりにすっぽりと包み込まれて、さらにどんどん芽吹いていく。

「死神から守ってくれたシーラカンス」

か弱げな両手に顔を挟み込まれ、久し振りに汗をかいていたシャルトリュスは何度も瞬きした。

「大好き」

目が合ったところで至近距離から笑いかけられて否応なしに胸が、キューーーーーーーーン、してしまう。

キューーーーーーーーン、じゃないですよ。
私の心臓ったら図々しいですね。
こんな老いぼれめがペルシアに恋していいわけ、ないじゃないですか……。

「ん」
「あ……っ」
「今、シャルトリュスのなか、キュッてなった」
「ご、ごめんなさ……」
「とけそう」
「ッ……ペルシア……」

オッドアイの双眸をしっとり潤ませ、白磁の肌を生き生きと紅潮させたペルシアは感情と理性の狭間で葛藤しているシャルトリュスに告げた。

「あなたがくれた夢以上に、しあわせなものなんて、ないと思っていたけれど」

今、シャルトリュスに繋がれて、起きているのに、夢を見ているみたい。

「っ……っ……ペルシア、そんなこと言われたら、私……」
「あ」
「んっっ……? また、膨らんで……?」
「きそう」
「えっっ? 待って、それはちょっと、あの、さすがに」
「もう、だめ、くる」
「っ、っ……あ、あ、あ……うそ……えぇぇぇえ……っ」

初めてだったペルシアはすんなり速やかにシャルトリュスの胎に種を撒いた。
紛れもない恍惚に心身を犯されて思わず仰け反り、シャルトリュスは、息を乱す。
胎底に刻み込まれる脈動に背徳的な悦びを誘われる。
我が身という檻の内で健気に息づくペルシアが愛しくて堪らなくなった。

「あ……ペルシア……」

気がつけば自分の真下で虚脱していた美しき少年。
まだ呼吸を上擦らせながらも、しょぼくれた檻に長々と閉じ込めてしまっては可哀想だと、シャルトリュスは腰を浮かせた。

「は……ぁ……」

彼が我が身から退く際の僅かな切なさに、つい、背筋を震わせる。
栓を失い、ペルシアの残滓が僅かに滴って、甘い眩暈に打ちのめされた。

……なんだかとんでもなく淫らになった気分です……。

悶々と疼く体に平静を装い、病みつきになりそうな甘ったるい余韻を断ち切り、虚脱しているペルシアから離れようとしたシャルトリュスであったが。

「わっ?」

不意に後ろから押し倒され、慌ててペルシアの傍らに両肘を突かせて上体を支え、肩越しに振り返れば。

『ラグドル君、君はどうぞ城の外へ』
『俺も残る、アンタの決意を見届けようじゃないか』

それまでイスに座って見届けるだけだったはずのラグドルがベッドに乗り上がってきていた。
これまでに見た覚えのない弟子の表情を目の当たりにし、疑問に思ったのも、ほんの束の間のこと。

「えっ」

シャルトリュスは目を見開かせた。
ペルシアとは比べ物にならない、成熟しきった、凄まじく熱く滾る杭に後孔をなぞられてぎょっとした。

「ラグドル君? な、何をしているのか聞いてもいいですか……?」
「催した」

ジャケットを脱ぎ捨て、下肢の服を緩めた程度のラグドルは。
自分のものではない生温い雫に自分の杭を濡らされて、見苦しい嫉妬に心臓を焦げつかせ、加減を忘れた。
永らく溜め込まれてきた想いの丈をシャルトリュスの奥にまで一息に……捻じ込んだ。

「ッ……ッ……ッ……!!」

ペルシアに倒れまいとしていたシャルトリュスは、不意討ちの猛攻に耐えきれず、突っ伏した。
仮膣を満たした猛々しい肉杭。
これでもかと内壁を拡げ、激しく脈打ち、狂的に発熱していた。

「こ、こんな……ひどいこと、いきなり、どうして……」

涙ぐんだ目で問われてラグドルの胸はズキリと痛み、下肢はより一段と熱せられて、ちぐはぐな己の体と心を彼は哀しげに嘲笑った。

「ソイツはよくて俺は駄目なのか、先生」

貧相な腰を掴み、ラグドルは頭の芯に未だしがみつく理性を振り払うように律動を始めた。
シャルトリュスは声にならない悲鳴を上げる。
内臓が押し上げられるような際どい突き上げに息苦しそうに眉根を寄せ、唇をしとどに濡らし、喉骨を引き攣らせた。

……国務で多忙な余り、よっぽど溜まっていたのでしょうか、ラグドル君……。

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