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しおりを挟む「忽那ホテル&リゾート」主要子会社の副社長を務める長男・忽那時成は現在二十八歳、弟に負けず劣らずの秀でた容姿を持っていた。
「ノスフェラトゥで普通種の生き餌バイトを連れ戻そうとして、プールに落ちた、ですか。随分とアグレッシブな方ですね」
深い切れ込みの眦はアイラインが映えそうだ。知的で品の良い細面に銀縁眼鏡がよく似合っている。マナーを踏まえた、そつがない食事の所作は文句のつけどころがないのだが……。
「……落ちたんじゃない。落とされたんだ」
ひたすら水を飲む伊吹生に凌貴はクスリと笑んでみせる。
「きっと、あの夜一番のショーでした。カーニバルなんて目じゃない」
オレンジワインで鴨肉の脂身を流し込む凌貴の隣で、伊吹生は、数時間前に鼓膜に飛び込んできた言葉を思い出していた。
(ずっと前に、学校で、普通種を襲った)
本当なのだろうか。
生き餌を競り落とすカーニバル・デイに興味はないと言っていた。血液パックで十分だとも。でも、実際は……。
「一体、どんな人なんだろうと興味が湧いて調査員を雇った次第です」
それまで淡々と食事を続けていた時成の手がピタリと止まった。
「凌貴。自分がストーカー化する前に、まずは自分に付き纏う尾行者をどうにかしなさい」
伊吹生は驚いた。
事務所で凌貴が話していたストーカーの件は、口から出任せだろうと、今の今まで本気にしていなかったのだ。
「……彼女の目的は不明ですが、大らかな態度で冷静に対処し、余計な波風を立てないように」
「わかりました、時成兄さん」
「それから、今後、甫司法書士に迷惑をかけるのはやめなさい」
「はい、時成兄さん」
(どうだかな、口頭注意程度でコイツが大人しくなるとは到底思えないが)
歯痒さを持て余す伊吹生は、時成が咀嚼しているステーキ肉にチラリと目をやった。
いわゆる「ロー」という、火を入れていない生肉だ。食中毒を引き起こしそうで内心ドン引きしていたのだが、時成は涼しい顔をして丁寧に味わっていた。
「伊吹生さん。兄はこう見えて何でも好む雑食の大食いなんです」
余りにもイメージにそぐわない。伊吹生がつい吹き出せば、時成は弟の方へ批判的な視線のみ送り、今にも血の滴りそうな肉片に鋭い乱杭歯を突き立てた。
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