先生彼氏は肉食系もといオオカミ系!!

石月煤子

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「わぁ!!」


土曜日、十七歳の誕生日当日。


街でおなかいっぱい焼肉食べた後、高速を一時間くらい走り抜けて、初めてやってきた海岸。


白っぽい砂浜に打ち寄せる波。
聞いてるだけで心地よくなる潮騒。
水平線まで夕日でキラキラしてる。


カップルとかグループとか、犬を連れて散歩してる人とか、夕方の海辺をみんな満喫してるみたいだった。


「!」


ぎゅっと手を握られた。

隣を見上げたら、西日を浴びて男前度がぐんぐんアップ中のセンセイは言った。


「こういうの、デートっぽいか?」


俺は力一杯頷いた。






「ねぇ、君、一人?」
「え、かわいくない? ほんとマジでかわいくない? かわいいの見本じゃない?」


車から見かけたジェラート屋さんへセンセイがデザートを買いにいってる間、浜辺でうろちょろしていたら、ナンパされた。


そう。
休みの日にセンセイと会うとき、俺は女装してる。


最初は学校の誰かにバレないよう、変装のため女子っぽい格好してたんだけど、いつの間にやらどっぷりハマった。

今や完全女子コーデ。
女装に関しては放任主義の親公認。

プチプラのコスメを買い揃えてメークもガッツリするようになった。


「ほんと? かわいい!?」


褒められると嬉しい。
褒められると伸びるタイプなんです、俺。


「この白ワンピース、昨日買ったばっかなんだけど、着こなせてる!? このカンカン帽とよく合いますよって、店員さんに薦められて一緒に買っちゃったけど、これって麦わら帽子じゃないんだ!? あっ、サンダルじゃなくてスニーカーにしたんだけど浮いてないかな!?」


笑顔でうんうん頷きっぱなしの大学生っぽい男の人二人は、海沿いにずらりと並ぶ迷惑駐車の列を指差した。


「あそこに車停めてるから」
「ドライブ行こ?」
「あそこに停めたら怒られるんでないの? ていうかワンピースに焼肉のタレついてない!?」


俺がスカートをヒラヒラさせたら二人は顔を見合わせた。


「車の中で確認してあげるよ」
「ほらほら、せっかくのきれーな肌がやけちゃうし、早く行こ」
「俺の恋人に何か用か」


二人とも揃ってぎょっとした。

目の前にいきなり現れたセンセイにピシッとかたまった。


「まさかナンパしてるんじゃねぇだろうな」


身長181センチ、体育教師なだけあって筋肉質の体、でもムッキムキのマッチョとかじゃない、シュッてしててキリッとしてる、つまり何でも着こなす男前体型。

たまに警察関係に間違われる目つきの鋭さがたまんない。

そんなセンセイに真正面から睨まれて、声をかけてきた男の人二人は「サーセン!!」とわざわざ謝って駆け足で逃げていった。


「一人でうろちょろするな、コーイチ」


ジェラートが乗っかったカップを両手に持つセンセイを俺はまじまじと見上げる。


「センセイ、今、瞬間移動した!? いきなり俺とおにーさん達の間に登場した!」


センセイはカップの片方を俺に手渡すと、砂浜を指差した。


「瞬間移動じゃねぇ。足跡がついてるだろうが」


あ、ほんとだ。
そもそも瞬間移動なんてアニメやマンガの話かー。

でも、この足跡、なんか変じゃ?
歩幅おかしくない?
走り幅跳びで移動してきたみたい……?





「アイスうま~、これなんの味だろ~」
「チーズケーキとイチゴだ」
「うま~、センセイのは?」
「俺はピスタチオとバニラだ」
「ちょーだい! 二口か三口ちょーだい!」
「がめつい奴だな」


あっという間にジェラート食べて、波打ち際をセンセイと並んで散歩して、押し寄せてくる波にはしゃいだりなんかして、恋人感を満喫したかった俺ですが。


「わん!!」


散歩中の犬が次から次にセンセイに擦り寄ってきたり、駆け寄ってきたり、突進してきたり。

押し寄せてきたのは波よりもムツゴロ●王国感でした。


「ご、ごめんなさい、ウチのコが」
「何だかスマンねぇ、こんなこと初めてで……」
「ブシェミちゃん、人見知りなのに、不思議だわ~」


ちゃんとリードを繋いでいる飼い犬に問答無用に引っ張られてきた飼い主さん達は恐縮したり、首を傾げたり。


「平気ですよ」


大中小、色んなサイズの犬に囲まれたセンセイ。

これって砂浜にいた全員……全ワンコ来たんじゃないのか。

迷惑そうにしないで、みんなの頭をイイコイイコして、平等に構ってあげて、ああ、これならム●ゴロウさん二代目もヨユーで狙えそう……。


いやいやいやいや!
平等やめて!
ヒイキして!


犬より俺に構ってよーーーーー!!??



「そろそろ帰るか」



結局、ムード満点な夕方の砂浜散歩はほぼ犬との触れ合いタイムで終わった。


納得できなくて、帰りの車の中、助手席で膨れっ面でいたら「ブス面してどうした」なんて言われた。

ひどくないですか?

ブス面化したのは犬ばっか相手してたセンセイのせいでしょーが!!


「まさか犬に嫉妬してるのか」
「して悪かったな!! ブシェミちゃん、センセイの顔舐めすぎ!!」
「大荷物だが、今日は泊まっていくのか」
「お泊まりする!!」


センセイのウチには何回も泊まったことがある。

去年の夏休みとか冬休みとか、連泊したこともあった。


「シャワー浴びる!!」


マンションの角部屋、1LDKのウチにお邪魔するなり、俺はお風呂へ直行した。


「……今日こそは……」


パジャマのシャツワンピ、メイク落とし、オマケでもらったスキンケアの試供品とか。

鏡の前、お泊まりグッズを詰め込んだバッグをぎゅっと抱きしめた。


十七歳の誕生日。
ほぼほぼ一周年デート。
だから……初めてアレを用意してきた。




「今日こそセンセイと」




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