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「……俺に魅力ないから、センセイ、ヨユーなんだ……」
そーだよ。
魅力いっぱいの相手だったら、同じウチで一晩二人っきりで過ごして何もなかったなんてこと、きっとない。
「ほんとは本物の女子がいーんだ」
「コーイチ」
「俺とは同情で付き合ってんだ」
「おい」
「去年、終業式の後、体育館裏でぎゃあぎゃあ泣きながら告られて、うるさいし可哀想だから、付き合ってやったんだ」
「被害妄想も大概にしろ」
「っ……くそばか……お……俺だって……セクシー系の年上女子が好きだったのにぃ……なんで男の中の男みたいな体育教師、好きになったんだろ……俺の青春返せ……ばかばかばかばか……」
「お前な。それが教師に向かって言う言葉か」
俺はリップクリームで重たいくらいの唇を噛んだ。
「今は俺の教師じゃなくて……今は俺の彼氏なんじゃないの……?」
センセイの鋭い目がちょっとだけ見開かれたような。
今日こそは。
萎みかけていた決意を取り戻し、俺は、シャツワンピを握る手に力を込めた。
「今、俺ね、エッチな下着はいてんの」
「は?」
今まで聞いたことがない素の「は?」に心臓が捩(ねじ)れた気がした。
「いわゆる、アレ……勝負下着ってやつ」
「おい、コーイチ」
「見たくない……?」
ドッドッドッドッ、すぐ耳元で心臓が鼓動してるみたいに、こめかみの辺りが騒がしくなる。
突っ立っているセンセイの前で、俺は、膝丈シャツワンピの裾をたくし上げていく。
太腿まで。
その先まで。
レースとかフリルとかリボンとか、ちっちゃな布面積を飾り立てたピンクの女子向けぱんつを露出してみせた。
……これ、あれか、痴女ならぬ痴男子ってやつか……。
耳までまっかっかになった俺。
沈黙に押し潰されそーだ。
今は怖くて、恥ずかしくて、死にそーで、センセイのこと見れないーー
「ひゃ」
俺はびっくりした。
いきなりソファに押し倒された。
初めて真上へやってきたセンセイに息が止まるかと思った。
「……コーイチ……」
いつもと違う声。
抑えられなくて溢れ出したみたいな。
低めで、ため息まじりで、なんかエッチといいますか……!!
やばい。
とうとうきた。
待ちに待ったこの瞬間が。
センセイとやっとチューができる!!!!
「えっ」
俺は目を見開かせた。
俺に跨っていたセンセイが上半身を起こすなり、一瞬でシャツを脱いで半裸になった、えっ、ちょっ、こんなん心臓がまろび出る……!!
「なんで脱いでんの!?」
反射的に両手で両目を覆って喚いたら。
「……グルルルルルル……」
変な鳴き声が聞こえた。
は?
犬なんかいつから飼い始めたっけ?
ていうか部屋にいた?
「お前が卒業するまで待つつもりだったのに」
今度はお腹に響く重低音じみた声がした。
「ッ……センセイ、風邪でも引いた? 声、ガラガラしてる、まさか声変わり? イケボからさらにグレードアップすんの? え……あれれ……? は……い……? え、え、え、え? はいぃぃいぃい!? うえええええ!!??」
指の間から見えた五秒間の光景は悪夢以外の何物でもなかった。
俺の真上でセンセイが狼男になった。
ムッキムキでフッサフサの狼人間になっ……たーーーー!!!!
「おぎゃあああッ、もごごご!!」
悲鳴を上げてる途中で口を塞がれた。
手、でか!!
これで「ドリルげんこつ」喰らったら頭もげる!!
「コーイチ、落ち着け」
目の前で彼氏が狼男になって落ち着いていられる人間なんている!?
ていうか狼男化したのに普通に喋れんのかーい!!
「とりあえず深呼吸しろ」
でっかい手が邪魔で深呼吸できませんけど!?
むしろ窒息しそうなんですけど!!
「ふーー! ふーー!」
「コーイチ、俺はな。さっきも言った通り、犬棲(いんずみ)の生まれで化け犬の血を引いてる」
「ふーー!? ふーー!?」
「今、お前が見ているこの姿も。さっきまで見ていた人間の姿も。両方、紛れもない緒方巽だ」
「ふーー……ッ」
「それから狼男とか思ってるかもしれないが、そうじゃない。化け犬だ。化け犬は昔から犬棲を守ってきた。別に人を取って食ったりはしない。ましてや傷つけたりもしない」
「ふーーー……」
「だから安心しろ。俺を怖がらないでくれ……」
顔の半分をすっぽり覆い隠していた手がゆっくり離れていく。
よだれがだらーん、して、俺は赤面した。
「恥ずかしがる余裕はあるみたいだな」
狼男……じゃなくて。
センセイは俺の真上から退くと床に座り込んだ。
夢としか思えません……。
でも現実みたいです……
「センセイ……ムッキムキじゃん……」
「この姿ではそうなる」
「化け犬って、なに? 神様? 妖怪? モンスター?」
「化け犬は化け犬だ」
「……こんな誕生日サプライズ、滅多にないよ、きっと地球一のサプライズだよ、うん」
俺もソファの上で起き上がって、とれかかっていたシュシュをテーブルにポイして、肩で深呼吸した。
「あ……まさか化け犬だから犬がいっぱい来たの?」
センセイはうなずいた……いや、ほんと、見た目は黒毛の狼男以外の何物でもない、ついさっきまでの体育教師の面影はどこにもない……。
「野良猫にはよく威嚇される」
……いや、そうでもないかな?
いやに重低音ボイスだし、体格も二倍くらい……は言い過ぎか、1・5倍くらいでっかくなってるし、ぱんっぱんなズボンは今にもはち切れそーだし、しかもフッサフサな尻尾つき……そもそも頭は狼まんまなんだけど。
鋭い目はセンセイだ。
俺のハートを最初に奪っていったところ。
たまに殺し屋じみた眼光をちらつかせるのがたまんない……。
「ビビらせて悪かったな」
立派な三角耳をピンと立てたセンセイのどでかい手で頭をナデナデされた。
あ。
サイズは違うけど、これもいっしょ……。
そーだよ。
魅力いっぱいの相手だったら、同じウチで一晩二人っきりで過ごして何もなかったなんてこと、きっとない。
「ほんとは本物の女子がいーんだ」
「コーイチ」
「俺とは同情で付き合ってんだ」
「おい」
「去年、終業式の後、体育館裏でぎゃあぎゃあ泣きながら告られて、うるさいし可哀想だから、付き合ってやったんだ」
「被害妄想も大概にしろ」
「っ……くそばか……お……俺だって……セクシー系の年上女子が好きだったのにぃ……なんで男の中の男みたいな体育教師、好きになったんだろ……俺の青春返せ……ばかばかばかばか……」
「お前な。それが教師に向かって言う言葉か」
俺はリップクリームで重たいくらいの唇を噛んだ。
「今は俺の教師じゃなくて……今は俺の彼氏なんじゃないの……?」
センセイの鋭い目がちょっとだけ見開かれたような。
今日こそは。
萎みかけていた決意を取り戻し、俺は、シャツワンピを握る手に力を込めた。
「今、俺ね、エッチな下着はいてんの」
「は?」
今まで聞いたことがない素の「は?」に心臓が捩(ねじ)れた気がした。
「いわゆる、アレ……勝負下着ってやつ」
「おい、コーイチ」
「見たくない……?」
ドッドッドッドッ、すぐ耳元で心臓が鼓動してるみたいに、こめかみの辺りが騒がしくなる。
突っ立っているセンセイの前で、俺は、膝丈シャツワンピの裾をたくし上げていく。
太腿まで。
その先まで。
レースとかフリルとかリボンとか、ちっちゃな布面積を飾り立てたピンクの女子向けぱんつを露出してみせた。
……これ、あれか、痴女ならぬ痴男子ってやつか……。
耳までまっかっかになった俺。
沈黙に押し潰されそーだ。
今は怖くて、恥ずかしくて、死にそーで、センセイのこと見れないーー
「ひゃ」
俺はびっくりした。
いきなりソファに押し倒された。
初めて真上へやってきたセンセイに息が止まるかと思った。
「……コーイチ……」
いつもと違う声。
抑えられなくて溢れ出したみたいな。
低めで、ため息まじりで、なんかエッチといいますか……!!
やばい。
とうとうきた。
待ちに待ったこの瞬間が。
センセイとやっとチューができる!!!!
「えっ」
俺は目を見開かせた。
俺に跨っていたセンセイが上半身を起こすなり、一瞬でシャツを脱いで半裸になった、えっ、ちょっ、こんなん心臓がまろび出る……!!
「なんで脱いでんの!?」
反射的に両手で両目を覆って喚いたら。
「……グルルルルルル……」
変な鳴き声が聞こえた。
は?
犬なんかいつから飼い始めたっけ?
ていうか部屋にいた?
「お前が卒業するまで待つつもりだったのに」
今度はお腹に響く重低音じみた声がした。
「ッ……センセイ、風邪でも引いた? 声、ガラガラしてる、まさか声変わり? イケボからさらにグレードアップすんの? え……あれれ……? は……い……? え、え、え、え? はいぃぃいぃい!? うえええええ!!??」
指の間から見えた五秒間の光景は悪夢以外の何物でもなかった。
俺の真上でセンセイが狼男になった。
ムッキムキでフッサフサの狼人間になっ……たーーーー!!!!
「おぎゃあああッ、もごごご!!」
悲鳴を上げてる途中で口を塞がれた。
手、でか!!
これで「ドリルげんこつ」喰らったら頭もげる!!
「コーイチ、落ち着け」
目の前で彼氏が狼男になって落ち着いていられる人間なんている!?
ていうか狼男化したのに普通に喋れんのかーい!!
「とりあえず深呼吸しろ」
でっかい手が邪魔で深呼吸できませんけど!?
むしろ窒息しそうなんですけど!!
「ふーー! ふーー!」
「コーイチ、俺はな。さっきも言った通り、犬棲(いんずみ)の生まれで化け犬の血を引いてる」
「ふーー!? ふーー!?」
「今、お前が見ているこの姿も。さっきまで見ていた人間の姿も。両方、紛れもない緒方巽だ」
「ふーー……ッ」
「それから狼男とか思ってるかもしれないが、そうじゃない。化け犬だ。化け犬は昔から犬棲を守ってきた。別に人を取って食ったりはしない。ましてや傷つけたりもしない」
「ふーーー……」
「だから安心しろ。俺を怖がらないでくれ……」
顔の半分をすっぽり覆い隠していた手がゆっくり離れていく。
よだれがだらーん、して、俺は赤面した。
「恥ずかしがる余裕はあるみたいだな」
狼男……じゃなくて。
センセイは俺の真上から退くと床に座り込んだ。
夢としか思えません……。
でも現実みたいです……
「センセイ……ムッキムキじゃん……」
「この姿ではそうなる」
「化け犬って、なに? 神様? 妖怪? モンスター?」
「化け犬は化け犬だ」
「……こんな誕生日サプライズ、滅多にないよ、きっと地球一のサプライズだよ、うん」
俺もソファの上で起き上がって、とれかかっていたシュシュをテーブルにポイして、肩で深呼吸した。
「あ……まさか化け犬だから犬がいっぱい来たの?」
センセイはうなずいた……いや、ほんと、見た目は黒毛の狼男以外の何物でもない、ついさっきまでの体育教師の面影はどこにもない……。
「野良猫にはよく威嚇される」
……いや、そうでもないかな?
いやに重低音ボイスだし、体格も二倍くらい……は言い過ぎか、1・5倍くらいでっかくなってるし、ぱんっぱんなズボンは今にもはち切れそーだし、しかもフッサフサな尻尾つき……そもそも頭は狼まんまなんだけど。
鋭い目はセンセイだ。
俺のハートを最初に奪っていったところ。
たまに殺し屋じみた眼光をちらつかせるのがたまんない……。
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サイズは違うけど、これもいっしょ……。
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