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しおりを挟む困ったなあ、あぁどうしようと、何度も呟きながら溜息をつくお隣さんが気になって、ふと顔を右に向けたのが運の尽きだった。
「うっへぇ、ドンピシャ」
自分でも間抜けな声だったと思う。しかしそれも仕方のないことだ。隣の席に座って酒をちびちびと舐めていた男の外見が、それはもう性癖にブッ刺さりまくっていた。短髪黒髪で、おそらく30代くらい。少し下がり目だが意志の強そうな目元で、筋骨隆々ときた。体格から想像するに職業は多分、冒険家か傭兵だろう。
あー抱かれてェと思わず口から出てしまいそうになったのを寸でのところで飲み込んだ。
「……何か困ってんの?」
「え?」
どうやらこちらの独り言は耳に入ってなかったらしい。カウンターに肘をつき、覗き込むように話しかけると、お隣さんはようやくこちらの存在に気付いた。
「あ、ああ。大したことないんだが……、ちょっと困ったことになっててね」
話しながら、苦笑する顔もイイ。
こんな山の谷間の宿と酒場が一緒になったような場所で、こんな掘り出し物に会えるとは。よく見れば身なりもしっかりしていて、もしかしたら傭兵だとしても相当腕が立つ人なのかもしれない。
手に持った酒を飲み干して、男に微笑み返した。
「話くらいだったら聞くよ。この店、おれたち以外ろくに客もいないみたいだし。おれ、ルイ。そっちは?」
「シモン。出身は隣国のアデラスだ」
「ふーん。おれは海を渡ったずっと遠い国から来たから、この辺の国の名前、全然わかんないや。それで? 何に悩んでたの?」
「少し長い話になるが、」
シモンは唇に人差し指をあてて、「内緒にしてくれるか?」と言う。もちろん、と気の良い返事をした。
外は激しい雨が降っていて、一晩泊まろうと思っていたところだった。時間はたっぷりある。
二人が今いる酒場が1階で、2階が宿になっている。シモンも同様だろう。旅の荷物が手元にない。つまり既に部屋を取って荷物は置いてきたはずだ。
ルイはにっこりと人好きのする笑みを浮かべ、カウンターの向かいで不機嫌そうにグラスを磨く店員に追加の酒を頼んだ。
「実は、俺はアデラス王国騎士団の騎士なんだ。いや、騎士だったって方が正しいかな」
「すげーエリートだ」
「全然そんなんじゃない。他に道がなかったし、将来なりたいものもなかったから何となく入隊して、そこそこ出世してきた。でも、少し前に気に入らないことがあって無断欠勤を繰り返してしまってね。上官は良い人だったから、そんな俺のことを心配してくれて、何度も様子を見に来てくれて、励ましてくれた。心配した上官の家族も俺のことを温かく迎えてくれたよ。俺、あんまり自分の家族と仲が良くないから嬉しかったなぁ……。上官には君と同い年くらいの娘さんがいたんだけど、これがまた可愛らしい子だった。奥さんも綺麗な人だったけど、上官のお下がりって想像したらゲロ吐きそうだからお近付きになるのは流石にやめておいた。代わりにチョロそうな娘のほうを口説いて、薬漬けにしてハメたまでは良かった。ちなみに処女だった。誰も触ったことがない処女って最高だよな。問題はそれが上官にバレたことだった。思ってた以上に大問題に発展して裁判がドータラコータラって始まって面倒だったから、今逃げてきたってわけなんだ」
「……ん? んんん? え、今、親切にくれた上官の娘ヤク漬けファックして逃げてきたって聞こえたけど聞き間違い?」
「え? 合ってるよ?」
「んー?」
「ん?」
不思議そうに首を傾げるシモン。お綺麗な顔でどえれぇえげつない話をぶっ込んできた。え? これおれどうしたらいい? もしかして途中で話題が最近した妄想話に変わったりした?
やっべぇぞ、こいつ。
脳内アラートがけたたましく鳴っている。じっとりと全身に嫌な汗をかいているのが感覚で分かった。処女って最高だよなって臆面もなく言えるコイツが怖い。良い歳した大人が未成年にアレなことしといてよくもまあ良い笑顔できるな。純粋無垢も20歳超えたら狂気だ。
「あっそーなんだ」
タイヘンダッタネと思ってもない感想を言いつつ、目を逸らす。
しかもよく見たらコイツ酒じゃなくてリンゴジュース飲んでて素面だ。
顔に惹かれて話しかけたら、とんでもないバケモン引き当てちまった。
こっそり店員にSOSを送ろうとしたが、わざとらしく背を向けてきったねぇ壁を拭き掃除してやがる。その黄ばんだ壁、ぜってぇ20年以上掃除したことないだろと文句の一つでも言ってやりたいくらいだ。
時間が戻せるのなら、さっきまでハピハピ浮かれポンチだった自分の頬をぶっ叩いて今すぐここから脱出させたい。
そうなんだよ、大変なんだ。しかも追手がかかってるからここも早めに離れないといけないと悲しそうに言ってるが、こんな自業自得を体現したやつ見たことない。
こえー。おれまだ成人したばかりだけど、こんな大人にはならないように気をつけよ。
やっぱこんな流行ってない酒場に来るやつなんか、しょーもなくて救いようがないやつばっかりだよな。
あーあ、今日は当たりかと思ったのにハズレだった。
適当なところで話を終わらせても良いが、それにしてもシモンの顔面が好みだ。惜しい。性癖さえまともだったら良かったのに。
苦い気持ちをアルコールで流し込み、更に追加の酒を注文した。
□□□□□
「それれれすね、はれはほういってはったんれす。めけめけかってえ。ええ、へへ」
シモンという厄災からどう逃げるかと、ルイは酔っぱらった脳で考えた。答えはすぐに出た。酔わせて、前後不覚にしてから逃げよう、と。こんなヤバいヤツが素面で、たとえ部屋は違うとはいえ同じ宿の同じ階にいるなんて何をされるか分からない。上官の娘にクスリを打って興奮するような男だ。飲み屋で話した相手がちょっと気に食わなかったって理由で、寝ている隙に顔面の皮を剥がされるかもしれない。妄想が飛躍し過ぎているかもしれないが、かといって可能性がないわけではない。
おれの安眠安全を確保するためにも、コイツには眠ってもらう必要がある。ついでに隙をついて店員に飲み物に睡眠薬も入れるように伝えた。ずっと壁の頑固な汚れと戦いながら、こちらの話を聞いていた店員はすぐに行動に移してくれた。
これで安心だ。
酒と薬のおかげでバッチリ朝まで寝てくれることだろう。
半目になりながら、呂律の回っていないシモンに肩を貸して、彼の取った部屋まで運んでやった。よしよし、これでヤツに少しばかりの恩を着せることができた。多少おれにムカつくことがあっても、指のささくれを取るくらいで許してもらえることだろう。
ベッドに長身を雑に放り投げて、溜息をつく。すごく重かった。座っているときは分からなかったが、自分より頭二つ分ほど大きくて寝ている男を運ぶのは骨が折れた。
昔から父親にしごかれていたので、それなりに力はあるほうだと自負していたが、仮にも元騎士だった男の鍛え方は並じゃなかった。あーあ、もったいねえ。中身がカスだもんなぁ。
最高に好みの外見の男がこんなにも無防備に寝ているのに、何もできないなんて損だ。
ぼんやりとシモンの寝顔を眺めていると、悪魔が耳元で囁いた。
曰く、ヤっちまえよ、と。
すかさず天使も現れて、
「だめだめ! 寝てるときは赤ちゃんみたいな男だけど、万が一起きたらきっと大惨事よ! 全身の皮をひん剥かれて、もう既に剥けてる貴方のプリティーキュートなちんこに剝ぎ取った皮を被らされちゃうわ!」と忠告をしてくれるが、ちょっと迷った末に捻り潰した。
そうだ、そうだよ。泥酔して、睡眠薬まで盛られたヤツが起きるはずがない。
ちょっとちんこを借りたって問題ないはずだ。ネッ、神様。そうだよね?と、どこにいるとも知れない神に問いかけながら、シモンの服に手をかけた。
□□□□□
「うわ、すっげ」
シモンは脱いだらすごかった。服の下の筋肉も、ちんこも、とんでもないサイズだった。今まで見た誰よりもデカい。巨根選手権があったらぶっちぎりでNo.1だ。間違いない。
試しに自分のモノと比較してみたが話にならなかった。大人ちんこと子どもちんこくらい違う。
心配なのは、無事に自分の後ろの穴に入るかどうかということだ。
これまで数々の巨根を相手にしてきたが、所詮は自国内でのトーナメントだった。井の中の蛙、巨根大会に出て優勝者を知った。
思わず鼻息が荒くなりながら、巨根の先を指でつついてみると、なぜか更に大きくなった。バカデカいカブトムシを見つけたとき以上に興奮している。
恐らく今のままでは挿入できない。まずは、この巨根の最大値を知るところからだ。
ゆるく握って、親指の腹で亀頭の先を撫でる。ぬるぬるとした先走りを引き伸ばし、その上から唾液を垂らした。上下に動かせばぐちゅぐちゅと卑猥な音が出る。舌先で根元から舐め上げれば完勃ちになった。
血管が浮き出た立派なそれを口で咥える。
舌いっぱいに使って裏筋を辿る。
「……ぁ……ッ」
小さくうめいてシモンは早々にイった。復活するのに時間がかかるタイプだったらどうしようという心配は杞憂に終わった。
すぐに大きくなったソレを再び頬張る。イッてすぐにまた勃起できるのは才能だ。若い頃ならいざ知らず、シモンくらいの年齢の人がこんなにも早く再び勃起できるとは。
半ば感心しながら、ジュッポジュッポと吸い上げる。
程良く勃ち上がったところで、彼の上に跨った。先程と比べると8割立ちといったところだが充分だ。
息をゆっくり吐き、慎重に差し込む。カリの部分が入るかどうかが重要だ。
「ぅ……ふ……」
途中で引っかかったような感触があったときには無理はしない。どうせ相手は寝ている。よくこの状況で寝ていられるなと理不尽な苛立ちを覚えたくらいぐっすりだ。
何度も小刻みに上下して、穴が慣れるまで続ける。ハッ、ハッと犬のように口で息をして、時々かすめる快感に喘いだ。
経験数の割には薄桃色のままの自分の乳首を夢中で弄る。ざらついた指先が先に触れ、つまんだだけで激しく痙攣してしまうくらい気持ちがいい。久々のセックスの快感と相俟って、つい加減を忘れてイってしまった。
いつもより全然早過ぎて呆然としてしまう。こんなんじゃまだまだ満足できない。ふと窓の外を見れば、まだ土砂降りで雷まで鳴っていた。
多少、声がうるさくても雨音に消えるだろう。
□□□□□
「うう~~~……あッ、あぁっ」
声を出しても良いセックスはやっぱり万倍気持ちいい。騎乗位で、打ち付けるように腰を動かす。
シモンは、いびきをかいて寝ている。自分のちんこがこんなに気持ち良い目にあっているのに、よく寝ていられるなと自分の行いを棚に上げて呆れてしまう。
さてはあの店員、ちょっと多めに盛ったなとほくそ笑む。グッジョブだ。もしこの倫理観ブッコワレ元騎士が目を覚まして店員に酷いことをしそうになったら、少しばかり助けてやってもいい。
とはいえ、全く反応がないというのも退屈ではある。
どちらかといえば、自分から動くより相手に動いてほしい派だ。
腰をゆっくりスライドさせながら、いかに気持ち良くなろうかと思案する。ふとシモンの唇を指でなぞり、その下唇をつまんでみる。たらりと流れた唾液がとんでもなくドエロく見えた。
ちゅっと可愛い音を立てて口の端に吸い付けば、無意識であろうシモンの腕が強引に抱き寄せてくる。角度を変えて何度もキスをした。
口の中に舌が入り込んでくる。起きてはいないよなと薄目で確認するが、熟睡している様子だった。器用な男だと半ば感心して、絡んだ舌の感触にふるりと腰が震える。
シモンのちんこが完全復活して、あっという間に余裕がなくなってしまう。ぽたりと落ちた汗の飛沫を乱暴に拭って、再び上下に腰を動かす。縁のギリギリまで引き、またズブズブと引き下ろす。
「はぁっ、はっ、あっ……」
下の圧迫感で息が詰まる。抜けるくらい限界まで引き上げてから下ろすのが一番気持ち良くなれる。何度も繰り返しているうちに滑りが良くなって、そうなったらまた激しく何度か動かして。
「きもちい……っ、シモン……ぁあ……さいっこーっ……」
ぎゅうっとシモンの首にしがみつく。イってしまいそうなのを耐えた。まだまだここで終わらせるには惜しいちんぽだ。こんなバキバキを逃すのはバカのすることだ。
「はぁぁ~~~……」
息を吐いて、意を決してまた動く。シモンの目蓋がピクピクと動くので、何か夢でも見ているのだろう。絶対にイイ夢だ。淫夢に違いない。
目の前のちょうどいい位置にあった筋肉質な首筋に噛みつく。力なく落ちていた厚くて大きい手の平を自分の腰に回して、その上から手で押さえた。
熱い手がまるで自分の腰を掴んでいるかのように錯覚する。指が食い込むくらい強く掴まれるのが好みだったが、四の五の言ってられる状況ではない。
これでコイツがまともだったら、セフレになろうと声をかけていたかもしれない。残念だ。過去歴代のセフレたちと比べても、寝ていてもコイツの方が良いと思う。ちんこが最高だ。ゴリッゴリに気持ちいいところまで届いて、何度も復活する。身の安全と気持ち良さを天秤にかけて、ギリギリ安全の方が重かった。
元騎士というのも引っかかる。元騎士ということは元貴族でもあるだろう。騎士というのは大概が貴族の子息だ。騎士ではなくなったかもしれないが、未だ貴族ではあるだろう。令嬢一人をシャブ漬けしたところで爵位剥奪は考えにくい。逃げ回っているのならば、それほど爵位は高くない。普通は何かやらかしたら貴族の親や兄弟がケツモチしたりするが、それがないということは男爵令息あたりで、間違いなく長男ではない。
まだイッてもないのに冷めることを考えてしまった。うーん、でもお貴族様を逆レイプしてる今の状況は非常に股間にクるものがある。
情けなくよだれを垂らして、心なしか頬まで赤くなりながら、酒場で会ったばかりの赤の他人の男にちんぽを使われているなんて末代までの笑い種だ。
体とは正直なもので、そう考えると後ろの穴までキュンキュンしてしまう。
それじゃあ、難しいことを考えるのは後にしよう。
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「さーーーーーーーてと!」
明け方、小鳥が囀り始める頃にルイは目を覚ました。久しぶりのドンピシャちんぽに夢中になっていたため1時間も寝ていないが、そろそろ動き始めないとマズイ。
起き上がってすぐに身なりを整える。迷いなくドアの近くに無造作に置かれていたシモンの荷物を物色した。酒場の店員には寝る前にグリズリーでも3日は寝る量の睡眠薬を盛ったと聞き出している。それってもう致死量じゃね?と思ったが、まああの怯え方では仕方ないだろう。俺でもそうする。この世から貴重なデカチンの持ち主は消えてしまうが、諸行無常である。
荷物の底のほうから出てきた金の硬貨と金目の物を全て抱え、さてお暇しようとドアノブに手をかける。元々物盗りが本命だ。
「おはよう、マイスウィート」
と、突然背後から爽やかな挨拶と共に肩を掴まれた。
「~~ッ! I beg you, please don't kill me……!」
ビビッて思わず母国語が出た。軋む音が聞こえそうなほどぎこちなく振り向く。
「ハハ、命乞いなんかしなくても殺さないよ」
嘘か本当か本心が分からない。熊でも3日は起きない量の薬を飲ませたはずなのに、今目の前で朗らかに笑っている男が恐ろしくてたまらなかった。
冷や汗が止まらないルイをシモンはベッドまで紳士的にエスコートする。
「まあ、座りなよ。そういえばルイの出身国とこちらでは言語が違ったね。俺はあまり他国の言葉を話すのが得意ではないけど習ったことがある。Death or Aliveだっけ?」
横並びに腰かけ、限界まで縮こまるルイに向かって、にこやかに「冗談だよ」と言った。
「……あ、あの。えっと、どこまで……覚えてる?」
回答によっては捕まるのを覚悟で逃げ出さなければならない。
「どこまで? うーん、そうだね。きみが俺のクソカスな話を聞いて血相を変えて突然酒を勧めてきて、その酒には睡眠薬が入ってたけど、とりあえず飲んで、酔っぱらったかな。寝ている間にきみは俺のちんぽを好き放題いじくり倒して、まあそれはそれで面白かったから我慢して寝たフリしてたんだけど、何故か朝になったら俺の金やら宝石やらを持って出ていきそうだったから引き止めたってとこかな」
全部バレてらぁ!
脱兎のごとく逃げ出そうとしたら足を引っかけられて顔から転倒した。
「ひ、ひたい……」
「大丈夫? 話が終わってないのに逃げ出そうとするから、つい足が出てしまった。可哀想に、血が出ているよ」
鼻血を抑えながら見上げると、悪魔のようなその男は優しく手を差し伸べた。大人しく差し出された手を取る。これ以上反抗的な態度を取ると、次に血を出すのは鼻では済まないかもしれない。
「実は俺、薬全般に耐性があって、あれくらいの量の睡眠薬じゃあ全く何ともならないんだよね。酒もザルだし。でもなんだかルイが企んでそうだったから暇潰しに付き合ってあげようと思ったら、思いかけず良い思いをしてしまった。ありがとう」
「それは、どういたしまして」
どういう神経してたら今このタイミングで感謝できるんだよとブチ切れそうになりながら、とりあえず頭を下げておく。逆らったら何をされるか分からない。
「てことはアレか。あの酔った姿も演技で、おれが一生懸命腰動かして頑張ってるのを面白半分で見てたってことか」
「まさか、あんな下手な演技で騙されてくれるとは思わなかったけど、ルイもちょっと酔ってたのかな? きみがヘコヘコ動いて、子犬みたいにキャンキャン喘いでるのは可愛かった。下から突き上げてグチャグチャにしたくて堪らなかったよ」
臆面もなくそう言われ、下からガンガンに突かれることを想像してゾッとする。そんなことされたら狂ってしまう。
「それでね、ルイはもしかしたら知らないかもしれないけど、アデラスとミーシャの間にあるこの谷間のスコールはね、2週間続くんだ」
「……?」
窓の外の土砂降りを呆然と見やった。
「つまり、昨日から降り続いている暴風雨はしばらく止まらないから、俺たちはその間ここから出れないんだよね」
「へ……?」
慌てて窓に張り付けば、叩きつけるような大粒の雨が降っていて、大きな木の枝が飛ばされていくところだった。うわ、今ニワトリも飛ばされていったぞ。
「マジかよ……」
「大マジだよ。ということで、チンケなコソ泥のルイくんに一つ提案があります」
「え? あ、はい」
チンケでもコソ泥でもないけど。チンケってどういう意味だ。チン毛か?
「きみの犯罪行為には目を瞑ってあげる代わりに、俺と2週間セックス三昧しよう」
「イヤだ。ぜーーーったい、イヤだ」
一晩だけでも身が持たないと思ったくらいなのに、2週間なんて死んでしまう。イキ狂ってしまう。ちんぽ中毒になったらどう責任取ってくれるんだ。
「嫌なのか? こんなに体の相性が良いのにどうして? セックス以外今ここですることもないし、メスイキしたいだろ? 昨晩のアレなんか前戯にもならなかったって思わせてあげるのに」
心底不思議そうな顔をしている。その純粋無垢な顔してドエロい誘いをするのをやめてほしい。理性が持たなくなる。
うう、とうめきながら必死で性欲と戦っていると、また頭の中に悪魔が出てきて囁く。
曰く、ヤッちまえよ、と。
すかさず天使も出てきて、
「それしか言わないわね、この悪魔! 今までアンタの助言に従ってきてルイがどんな酷い目にあってき」と、忠告の途中で迷わず捻り潰した。その先は思い出したくもない黒歴史だからだ。
昔から性欲に負けがちだったために何度も痛い目を見てきた。しかし負けたおかげで良い思いをしたこともある。軟弱な理性はあっさりと降参した。
「……わかった。いいぜ、メスイキさせてくれ」
「そうこなくっちゃ!」
待ってましたとばかりに押し倒される。
背中に手が添えられていて優しい着地だった。わー、騎士様ってすっごーい。
騎士になるお勉強に「セックス相手を押し倒すときの作法」でもあるんじゃないのか。それくらい慣れた手つきだった。まるでオンナみたいに扱われてドキッとしてしまう。
「な、なに?」
いつまで経っても服を脱がせようとしないので、思わずぎゅっと閉じてしまっていた目を開くと、シモンはこちらの顔を穴が開くかと思うくらい見つめていた。
頬に手をあて、前髪の生え際にキスをされる。
「かわいい」
「は? え?」
怖い怖い怖い怖い。今の可愛いってどういう意味!? 可愛くて食べちゃいたいってこと? キュートアグレッションなの?
戦々恐々とするルイの手を取り、そこにもキスをする。爪先、指、手の甲と唇が徐々に上がってきて、乙女のように顔を真っ赤にするルイを見て、くすりと笑う。
悪魔曰く、「こりゃあヤッてますわ、旦那。前戯のお勉強たくさんやってきてますわ。騎士道とは丁寧な前戯にあり、ってかァ?」と下らないことを言うので、遂にこいつも天使同様捻り潰した。
「そういうのいいから! 女じゃねぇし、必要ない!」
「そういうのって、こういうの?」
やけにゆっくりと顔が近づいてきて、口と口がぶつかると思って身構えたルイは寸でのところで鼻にチュッとされてもう何が何だか分からない。
混乱するルイを見て、シモンは笑い声を上げた。
「ルイ、口と口がぶつかる~みたいな色気のないこと考えてそうだな。そういうのはね、キスとかちゅーとか接吻って言うんだよ。好きだよね、キス」
「ぜんぜん好きじゃないし言葉くらい知ってる」
「そう? じゃあ、ちゃんと言葉の意味も知ってるか確かめてみようか」
むすっとするルイの頭を優しく撫でながら、唇に再び軽くキスをされる。それから、下唇を食んだり、舌でつつかれたりした。
「んっ」
ようやく舌が入ってきて反射的に体が強張る。
シモンの舌は器用にルイの舌先を捕らえて、少し弄んだ後に離れていく。
気付かぬうちに繋がれていた手を離そうとしても、びくともしなかった。羽交締めにされているみたいで嫌だ。逃げ出したい。キスだけでもうビンビンに勃起しているのを知られたくない。
「こらこら、逃げないの」
「あぁっ」
体を無理に捻ろうとしてシモンに簡単に阻止されてしまった。顔を背けても露わになった首筋をじっとりと舌が這う。
「ルイは首が弱いのかな? それとも耳?」
耳たぶを噛み、遠慮なく舌が中に入ってきた。耳の中に舌を入れられるのは初めての経験だった。ぴちゃぴちゃと音がするのが何ともやらしく、すぐに夢中になった。その傍らでシャツのボタンは全て外され、腹を撫でていた手がゆっくりと胸へと上がってくる。
シモンの少し高い体温がルイの体に馴染んだ頃、撫で回すだけだった手はやわやわと胸を揉み始めていた。鍛えているので女のように柔らかくはなかったが、指先が胸の中心をかすめるたびに甘い吐息が漏れてしまう。
「……んっ……胸ばっかりやだ……」
「でも気持ち良さそうだよ。もっと可愛がってあげたら素直になるかな」
「やだって……ぁん、もう……!」
きゅっと先端を抓まれて、思わず背が反るほどに気持ち良かった。そのまま強く引っ張って、もっと気持ち良くされたいと思ったのが通じたのだろうか。思った通りに引っ張られて鳴いてしまう。
「今の声かわいかったよ。犬みたいにもう一度おねだりしてごらん」
痛くした分、優しくする主義なのか、乳首を口に含んで舐られる。
「ほら、言って」
「……ひっぱって」
「誰の、何を? ちゃんと言ってごらん」
睨み上げると心底楽しそうなシモンと目が合った。
「いじわる……」
「言わないならやめようかな」
「……おれのおっぱいをたくさんいじめてほしい、ワン」
「アッハハハ!」
羞恥心を抑えて言ったのに何故か腹を抱えて笑われた。何がそんなに可笑しいのかとポカポカと胸を叩くと「ごめん、ごめん」と軽く謝りながら頭を撫でてくる。コイツの情緒が心配だ。
「思ってたより可愛くて驚いただけだよ」
そんなことを言って、ツンと上を向く乳首を指先で潰す。シモンの指が離れればまた触ってほしいと主張するように立ってしまうので恥ずかしくなってしまう。
親指の腹と人差し指の側面で挟み、擦ったり引っ張ったりされて息が荒くなる。
辛抱できなくなった腰をシモンの太腿に押し付けて前後に動かす。前をくつろげて「お願い、触って」と耳元で囁く。
「もう、ぐっちゃぐちゃ」
「そんなこと言わないで……」
いや本当は興奮するから言ってほしい。どれだけ自分が乱れていてはしたないかを言葉にされるとそれだけでイッてしまいそうになる。
シモンはしばらく名残惜しそうに胸を触っていたが、とろとろに汁をこぼすルイの性器にようやく手を出した。
「どうやって触ってほしい?」
「ここ握って、しごいて」
「こう?」
大きな手に包まれて、容赦なく上下に扱かれる。先走りで滑りが良くなったせいで強めに握られているはずなのにただただ気持ちが良かった。
はくはくと必死で息をしながら背を反らす。
「あ、あ、あぁ……っ」
「イキそう?」
「ん……もう、まっ、アァッ……」
精子が出る直前に口で咥えて受け止められた。
「ちょっ! きたない!」
「おいしくはないな」
「味じゃなくて不衛生だっつってんの!」
慌てて適当なタオルで口を拭かせようとするが飲み込んでしまったと知って卒倒しそうになる。
シモンは気にした様子もなく自分の服を全て脱ぎ捨てていた。
露わになった性器にゴクリと息を飲む。すっかり勃ち上がったそれに手を伸ばして、おそるおそる口でくわえる。無理やり喉奥まで突っ込まれる可能性も考えて期待していたが、シモンは優しく髪を梳いて混ぜるだけだった。
舐めていると、じんわりと先走りが出てきたのでそれも舐め取った。嫌いじゃない味だ。
バキバキに血管が浮き出る性器を舐めまわし、唾液でベチョグチャにしてから、ふと顔を上げる。おでこにチュッと音を立ててキスをされて柄にもなく赤面した。
「挿れていい?」
「……うん」
四つん這いでお尻を突き出す。いよいよだ。
目を閉じて待っていると、腰を掴まれる。ああ、これだ。この指の感触が欲しかった。
後孔に擦りつけられるシモンの熱いモノを誘い入れるように腰が動く。グッと先端が押しつけられて徐々にゆっくりと挿入された。
息を吐きながら快楽を逃す。下生えが臀部に触れたことで、全部入り切ったことを知った。
しばらくシモンは動かなかった。代わりにルイにピッタリとくっついて首筋に唇を這わす。
「シモン……? も、動いて……」
「うん。いい?」
「だいじょーぶ」
ゆっくりと引き抜かれ、そして今度は一気には突き立てられた。パンッ!パン!と音を立てて抜き差しされる。
「んぁ、あっ、あっ、あぁ、ああっ!」
ぐりゅぐりゅと内壁をえぐられて目の前がチカチカする。意識を持っていかれないように必死でシーツを掴んで、足を更に広げた。一番気持ちいいところをシモンが突くたびにピシャピシャと潮を吹く。
「えっろいなぁ」
「ちがっ、ちがうぅ……! あーっ、あん! んん! いつもこんなんじゃないのに……っ!」
こんなのは、こんなふうになってしまう自分の体は知らない。潮を噴いたのだって本当に気持ちよかったときの数えるほどしかないのに。
イヤだ見ないでと首を振って逃げようとするのにそれをシモンは許さない。
「最高に俺好みだ」
そんなことを言って、ルイを仰向けにする。
再びズプリと挿れて今度は確実にルイの気持ちいい一点を責めてくる。
「いやっ、シモンっ……やっ、ぁん、やだぁ! とめてぇ……ぁふ、あぁ、あっあ、おかしくなるっ、おかしくなっちゃうからぁ! あっ、ああーーーっ!!」
性液を飛ばしながらビクビクと痙攣する。足先がピンと張って、そして全身が脱力する。
そんなルイの様子を見て嬉しそうにシモンは何度も顔中に唇を押し当てた。
その唇がやがてルイの唇へと合わさり、舌がゆるゆると入りこんでくる。歯列をなぞり、舌と舌を合わせ、吸い上げて噛みついて、顔の角度を変えてまた合わさる。
「ルイ、気持ちいい?」
「ん……きもちいー」
「じゃあもう、嫌って言わないね? 次言ったらルイのこともヤク漬けしちゃおうかな」
おそろしいことをくすくす笑いながら言うコイツは悪魔だ。ルイは気持ち良さで朦朧としながら、そう思った。おれの飼ってる悪魔なんか天使に見えてしまうくらいの大悪魔だ。
逃す気がないとその目が言っている。おれはどこかでこれを見たことがあるような気がする。
「なぁ。おれ、アンタとどっかで会ったことある?」
「……さぁね。どうだったかな」
ぐにぐにとまた動き出したシモンの腰に自らも少し動いて快楽を拾う。
誤魔化すような返答を追求しようにも気持ち良くて思考が溶かされていく。
これがあと2週間も続く。
シモンからのキスを受け入れながら、拘束プレイと触手プレイそれからイマラチオは絶対やっておきたいと心に決めた。
□□□□□
2週間後の朝。
見事に晴れた。窓からの朝日を受けて、ルイは少し残念な気分になった。手首の拘束の跡や全身につけられたえげつない量のキスマーク、それから召喚した触手は良い働きをした。長いようで短い2週間だった。あと1週間は延長したいくらいにはエロくて気持ち良かった。最高の体験だったと言えるだろう。
シモンが言うところのチンケなコソ泥であるルイは、起きて早速金目のものをかき集めるが、ベッドからの視線を感じて早々に手を止めた。案の定、横になったままでシモンがこちらを見つめてきている。
「起きろよ。晴れてるぞ」
「うーん、延長したい」
「ダーメ。アンタも追っ手がかかってるんだろ。はやく起きて支度しないと」
シモンの暢気な返答に自分のことを棚に上げて呆れてしまう。さっさと荷物をまとめたルイとは対照的にシモンはのそのそとゆっくり起きてきた。
「おれもう行くから」
「一緒に出よう」
「乙女かよ」
まるで処女が初夜明けに男に縋るかのごとく不満げに頬を膨らませている。何も可愛くない。
「ルイも犯罪者?」
「そりゃあ、窃盗は日常的に」
「じゃなくて、さっき自分にも追っ手がかかってるみたいな言い方だったじゃないか」
「ああ」
別れが名残惜しいのだろうか。そんな感傷はお互い持ち合わせていないはずだが、なんとなくシモンの準備ができるまで言葉を交わす。
「昔ちょっとやらかした」
「お仲間か~」
「アンタほどじゃねーよ」
ヤク漬けクソイカレ野郎と同列にされたくない。そう言えば確かにとシモンは爆笑していた。笑うとこじゃねーよ。
靴を履くシモンを眺める。本当に顔と体だけは良い男だったなぁ。
「まぁ、また会うことがあったらヤろうぜ」
「ああ。そのときはよろしく。また会えると思うけどな」
支度を終えたシモンの顔が近付いてくるので、降ってくるキスを素直に受け入れた。
「セックスするの、これが初めてじゃないしな」
「え?」
“忘却しろ!”
ぼふん、と小爆発のような音を立てて、頭上で煙が上がった。
ルイはしばらくぼんやりと突っ立っていたが、やがて辺りを見回す。部屋の中には誰もおらず、いつも飛び回っている2匹の精霊もいない。
慌てて召喚すると、『天使』と『悪魔』はすぐに現れた。
「なぁ……さっきまでここに誰かいたか?」
天使は言う。「まさか。いないわよ、あなた好みの騎士風美ボディーマッスルなんて」
悪魔は言う。「まさか。いるわけねーぜ。おまえ好みのちょっと嘘つきな筋肉バカクズ魔法使いなんて」
「だよなぁ」
ちょっと引っかかる言い方だったが、誰もいないしいた記憶もないのは確かだ。うーんと伸びをして、少し体に違和感がある気がしたけれど、こんな安宿のベッドなんて体を痛めて当然だ。後で下階の酒場にいた店員に文句を言ってやろう。
そう思いながら、階段を降りる。
「あーあ。どっかに騎士みたいな体つきで魔法で触手プレイできる魔法使いいねぇかな」
魔法使いじゃないと触手召喚できねーんだよなーとブツブツ呟きながら、ルイはまた、気ままな旅に出た。
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