君へ

朝霧蒼

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君へ

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初めはクラスが一緒になって、
席が隣になって君の方から話しかけてくれて。

隣になったばかりの頃は、
うまく話せなかったり、それでも笑い話をしたり。いつのまにか、君の笑顔を見る回数も増えて。

日々を過ごすうちに、君の性格を知っていつもニコニコして無邪気な笑顔を見せてでも、少しおっちょこちょいな部分もあって。
とにかく、ポジティブ思考でおもしろくてキラキラ輝く笑顔をもってる優しい人だと思った。

話も面白いし、君と話していると私も笑顔になれる、なんてこともあって。
ずっとずっと、このまま楽しく過ごせたらいいなって思ってた。




だけどそんな楽しい時間も長くは続かなくて。



気づけば席替えの時期がやって来ていた。
また席が近くになる可能性はある、だけど遠く離れてしまったら。そう思うとなんだか少し変な感じがした。






やはり私の予感は当たって君とは席が離れてしまった。それでも君の輝く笑顔は変わらなくて少し安心した。







でも席替えをして気づいてしまったんだ。











私は君のことが好きなんだって。










席替えをしてから数日過ごして、なんだか心にモヤモヤがあって。
そのモヤモヤの正体が寂しさであることに気づいた。


今まで近くで見ていた君の笑顔が、前より近くで見られなくなって寂しいと思った。




君の笑顔をもっとみたい。

もっと笑ってほしい。



きっと、君の無邪気な優しい笑顔に惹かれたんだと思う。


君は明るくて面白くてクラスのムードメーカーだったから、皆と仲が良くて。


そんなところに暗くて地味で自分を出すことができない私は憧れたんだと思う。



私が持っていないものを君は持っているからこの感情が生まれたなんてね。




君と距離をおいて気づいたんだ、この気持ちに。











時が少し経って、君に告白することを決めた。


この気持ちを君に伝えたかった。


君の気持ちがどうであっても、ただこの気持ちを伝えたかった。





勇気のない私には、面と向かって喋ることすらできなくて、精一杯の気持ちを込めて手紙をかくことにした。




隣の席になって楽しかったこと。



君といると笑顔が増えたこと。



君の笑顔に惹かれたこと。



君にもっと笑ってほしいと思ったこと。




思っているこの気持ち全部を手紙に書いた。


内心ずっと緊張して手なんかもう震え始めてて、本当に何も手につかなかった。


手紙を渡して返事が来るのを待った。





でも返事はなかなか返ってこなくて、
きっとダメだったんだと思ってた。

だからもう諦めようとした。でも、

諦めようにも一度好きになった人のことを簡単に忘れられるわけなくて。



がんばってちゃんと返事をもらいたかった。



そしたら、返事が来た。

「友達としては好きだけど、付き合えない」と。




それでよかった。その返事で安心した。


私はちゃんと振られたんだって。


自分の気持ちはちゃんと伝えられたんだって。


だから後悔なんてなかったと思う。







君に告白をして、笑いあって過ごす関係は少し崩れてしまったけど、時間が関係を修復してくれた。



私が告白したとき、君に好きな人がいることを知った。それでも応援しようなんて思った。



学年が上がって、また君と同じクラスになった。



私はなかなか諦めきれなくて、まだ君を好きな気持ちは変わらずにいた。



ても忘れようと必死だった。






そんなときに、私を好きだと言ってくれる人が現れた。

その人とはクラスも一緒だったし、仲のいい人だった。
話しやすくて、相談事もできる人だった。



好きだと言われて素直に嬉しかった。
私のことをそんな風に思ってくれている人がいるなんて信じられなかった。
すごく嬉しかった。

私はその気持ちに答えたかった。
だから、
その人の気持ちに答えた。



その人とはたくさん話もして、なんでも話し合える仲にまでなった。

一緒にいて楽しいとも思った。

ずっと一緒にいられたらいいなとも思った。





それなのに、



君が私の心から消えてくれないんだ。










何かある度に君を思い出してしまう。


君とその人を重ねて見てしまう。


忘れよう、諦めよう、そう思っているのに。





いつも思うのは君のことだった。










私は正直にその人に君のことを話して
気持ちに答えられないことを話した。


精一杯謝った。

傷つけてしまった、気持ちに答えられなかった。

私の覚悟と気持ちが弱かった。



全部私が悪い。

そう言って納得してもらった。












それでも君の気持ちははっきりしている。


君の気持ちが私に向くことはない。


君が私を好きになることはない。





それは分かってた。





だけど、君のことが好きだった。





もっと話したい。


もっと笑ってほしい。


もっと笑顔がみたい。


ずっと一緒にいたい。





そんな欲ばかりが出てきてしまって、

耐えられないくらいどんどん好きになっていくのは分かっていたのに。




君を見るたびに恋しくなって、切なくなって。



会いたいのに会いたくなくて。


声が聞きたいのに何も聞きたくなくて。


君に触れたいのに触れられなくて。




ただ自分一人が思ってることなんだって自分に言い聞かせても、ダメなんだよ。



もっといい人が他にいるなんて言われても、そんな風に思えないんだよ。



私は君がよくて、


君が好きで


君ともっと一緒にいたくて


君に振り向いてほしくて


君じゃなきゃダメなんだって。



そう思ってしまうんだよ。




お願い、振り向かなくていいからまだこのままでいさせて。











まだ君を好きなこの気持ちのままでいさせて。































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