紫灰の日時計

二月ほづみ

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運命との出会い-4

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 そして、迎えた皇女の誕生日。その日は、皇帝から直々に、城内の全ての者に、仮装が申し付けられた。
 別に、ハロウィンが近いからというわけではない。最近しきりに色々なものを見たがる孫のために、大掛かりなプレゼントを用意させたのだ。
 世界中のあちこちの民族衣装を集めて、城中の者にそれを着て仕事をさせた。
 そして、自由に買い物などしたことの無い彼女のために、流行りのものから珍しい品まで、色々な商人を集めて、大広間に商店街を作らせた。
「まぁ……」
 好きに買い物をするようにと広間に案内されたアーシュラは、感嘆の声をあげた。いつもは荘厳で広い大広間に、まるで異国のバザールが現れたようだ。仮設のテントとはいえ趣向を凝らした店がところ狭しと立ち並び、たったひとりの買い物客のための街を作っていた。

「皇女殿下! こちらのサリーなどいかがですか? きっとようお似合いになりますよ」
 立派な髭を蓄えた商人が声をかける。見上げるような大男で、白目の美しい大きな目をしていた。アーシュラは、男の風体に少し驚いたようだったが、男が手にした美しい布を見て、パッと目を輝かせた。
「まぁ、さっきメイドがコレを着て掃除をしているのを見たわ、どこの服?」
「ガネイシアの伝統衣装でございますよ。それも、こちらは手織りシルクに金糸の刺繍が入った最高級品で――」
「着てみたい! ねぇ、エリン、どうかしら?」
「……どうでしょう?」
 どうと言われてもエリンに分かるはずがない。何を着てもアーシュラは美しいのだから、それで良いではないか。
「お前に尋ねたのが間違いだったわ」
 アーシュラはため息をついて、それから、気を取り直して男に他のも見せろと声をかけた。

 孔雀色のサリーを選び、木彫りの小人を何人かスカウトして、言葉をしゃべる鳥の前で随分と思案する。最新型のスニーカーに一目惚れしては、ドレスのままその場で履き替え、歩きやすいと大喜びで、テントの隙間の細い路地をすたすたと歩いていく。雑多に並ぶテントに、アーシュラはひょいと入ってしまうので、両手に荷物を抱えたエリンは見失わないようにするので必死だった。

「殿下!」
「エリン、見て!」
「ええっ!?」
 テントの中から、悪魔のような奇っ怪な仮面がこちらを見て、皇女の声で自分を呼ぶ。
「あ……アーシュラ……何を」
 もちろん、仮面が皇女の声を出したのではなくて、皇女が仮面を被っているのだ。
「うふふふふ、驚いた? 面白い顔よね」
 分厚い木彫りの面を外して、奇妙なその面相を覗き込みながら言う。どうやら、どこかの工芸品を扱う商人の店のようだ。
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