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おまけ 迷子の10番目 1
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ー ぐすっ
夜の街の賑わいに幼い子供の啜り泣く声が響く。
艶やかなシルバーグレイの髪に大きな黄金の瞳。
頭から爪の先まで磨かれていて、身なりも良く明らかに貴族か良家の子だとわかる。
そしてその可愛らしさに、すれ違う人々は思わず息を飲んだ。
そんな周囲の視線に全く気づかず、エルフはとぼとぼと歩いていた。
彼は普段は魔界で暮らしている。今日は彼の兄が珍しく一緒に遊んでくれて、なんと人間界まで連れて来てくれた。
エルフは兄弟の中でミオに一番似ていて、魔族なら赤子でもアクセス出来るはずの叡智の樹も反応しなかった為に魔道の知識もなかった。
その為家族以外からは失敗作と呼ばれていて、普段はお城の外には出してもらえない。
エルフはいつも不満があったが、今になるとそれが正しかったと分かる。
初めて見る沢山の人間、兄が知っていた美味しいお菓子。
あまりの鮮やかさと楽しさに、はしゃいでいたら迷子になってしまったのだから。
「フィーアお兄様…どこ?」
「お父様、お母様」
ぐぅ、、とお腹が鳴ってきた。
エルフはミオと一緒で精気を餌にする事が出来ない。
かと言って完全な人間というわけではないので、食事は甘味を摂る。花の蜜やお菓子などから摂取するのだ。
「可愛らしい坊や、飴をあげようか?」
ふと、目の前に飴を持った男の人が立っていた。
「わぁ~ありがとう!」
ペロペロ。
飴は長いきのこみたいな変わった形をしていたが、お腹が空いていたエルフは夢中で飴を舐めた。男は飴をペロペロするのを食い入るように見ている。
「あっちにもっと美味しい飴あるよ、たくさんペロペロしようか?」
「え、本当?」
男に手をやや強引に引かれて、路地裏に引き込まれそうになっていると
「ミオ…!」
エルフは背後から突然別の人間に抱き上げられてびっくりした。
金の髪に青い瞳。まるで絵本に出てくる勇者のようで格好いいな、とエルフは思わず見惚れる。
「おじさん、だれ?」
「ミオなわけないよな…おじさんの名はエドワルドだよ。エドって呼んでほしい」
「僕はエルフです。ミオってお母様のあだ名ですが、おじさんお母様を知ってるの?」
エドワルドは驚いた顔をしつつもエルフを抱きしめる腕にグッと力をこめる。
「あぁ、良く知っているさ」
さっきまでのキラキラスマイルが消え失せたエドの怖い顔にエルフは驚いてしまった。
***
「げっ!」
就寝前に祈りを捧げていた天人族のサキーアは予期せぬ来訪者に柄にもない声をあげてしまった。
「何拾って来てるんですか?! 元いたところに捨ててきなさーい!」
捨て猫を拾ってきた子供を叱る様に、サキーアは檄を飛ばす。
「この子を知っているのか?」
はぁ、とサキーアは溜息をつく。
「直接見たのは初めてですが、これは10番目の子供。あの魔族が特に溺愛している息子ですよ」
エルフの見た目や雰囲気は完全にミオの生き写しだ。アーヴェントの溺愛は容易に想像がついた。
「え!じゅ、10番目?! それって子供が10人いるって事だよな?!」
「そうですが?」
「ミオは男だぞ? てか何でミオ達にそんなに詳しいんだ?」
この男は何も知らないんだな、とサキーアは思うがそれを説明している猶予はない。
「あの家族の事は陛下が良く愚痴りに…」
サキーアは苛立たしげに言った。かなり迷惑しているようだ。
「レオンハルトが??」
時折、里帰りしているが、レオンハルトからそんな事は一言も聞いた事が無かった。
「そんなことより、この子供をどうするつもりで連れて来たんです? 早くあの魔族のもとに返さないと、この国が、いや大陸が滅びますよ」
「当然保護する。この子は人間じゃないか」
「見た目は人間でも中身は違います! 無理に決まってるでしょー!」
サキーアは目を血走らせて必死に叫ぶ。美しい顔が台無しだ。
「十数年前国民である青年を生贄にして~、魔界との結界は今もガバガバのまま? 何をしているのかな神殿は?」
「脅しですか?!」
話にならないとばかりに、エルフを取り上げようとエドワルドに手を伸ばす。もちろんエドワルドはサキーアの手を器用にかわしながら、エルフを離さない。
「私は前にもあの魔族とは戦えないって言いましたよね。もちろん今もですよ、兄弟も増えてるんだから尚更です!」
「ふふん、俺がこの十数年、何もしてないと思ったか?」
エドワルドは腰の剣を見せた。柄には聖気を帯びた宝飾が施され、普通の剣ではないことがわかる。
「それは聖剣ですか?そんなもの…」
役に立たないと言おうとしたところで
「ぼ、僕もうお父様とお母様に会えないの?」
と、突然エルフがエドワルドに抱かれながらぐずぐず泣き出した。
「な、泣くな、頼むから泣くな!奴が来る!」
サキーアは拝むようにエルフを泣き止ませようとする。
ドゴォォォォォン!
けたたましい爆発音が響き渡る。神殿が揺れ、女神像がパキパキと音を立てる。
「はああ、結界が! 最悪だ! 早く返さなければ」
夜の街の賑わいに幼い子供の啜り泣く声が響く。
艶やかなシルバーグレイの髪に大きな黄金の瞳。
頭から爪の先まで磨かれていて、身なりも良く明らかに貴族か良家の子だとわかる。
そしてその可愛らしさに、すれ違う人々は思わず息を飲んだ。
そんな周囲の視線に全く気づかず、エルフはとぼとぼと歩いていた。
彼は普段は魔界で暮らしている。今日は彼の兄が珍しく一緒に遊んでくれて、なんと人間界まで連れて来てくれた。
エルフは兄弟の中でミオに一番似ていて、魔族なら赤子でもアクセス出来るはずの叡智の樹も反応しなかった為に魔道の知識もなかった。
その為家族以外からは失敗作と呼ばれていて、普段はお城の外には出してもらえない。
エルフはいつも不満があったが、今になるとそれが正しかったと分かる。
初めて見る沢山の人間、兄が知っていた美味しいお菓子。
あまりの鮮やかさと楽しさに、はしゃいでいたら迷子になってしまったのだから。
「フィーアお兄様…どこ?」
「お父様、お母様」
ぐぅ、、とお腹が鳴ってきた。
エルフはミオと一緒で精気を餌にする事が出来ない。
かと言って完全な人間というわけではないので、食事は甘味を摂る。花の蜜やお菓子などから摂取するのだ。
「可愛らしい坊や、飴をあげようか?」
ふと、目の前に飴を持った男の人が立っていた。
「わぁ~ありがとう!」
ペロペロ。
飴は長いきのこみたいな変わった形をしていたが、お腹が空いていたエルフは夢中で飴を舐めた。男は飴をペロペロするのを食い入るように見ている。
「あっちにもっと美味しい飴あるよ、たくさんペロペロしようか?」
「え、本当?」
男に手をやや強引に引かれて、路地裏に引き込まれそうになっていると
「ミオ…!」
エルフは背後から突然別の人間に抱き上げられてびっくりした。
金の髪に青い瞳。まるで絵本に出てくる勇者のようで格好いいな、とエルフは思わず見惚れる。
「おじさん、だれ?」
「ミオなわけないよな…おじさんの名はエドワルドだよ。エドって呼んでほしい」
「僕はエルフです。ミオってお母様のあだ名ですが、おじさんお母様を知ってるの?」
エドワルドは驚いた顔をしつつもエルフを抱きしめる腕にグッと力をこめる。
「あぁ、良く知っているさ」
さっきまでのキラキラスマイルが消え失せたエドの怖い顔にエルフは驚いてしまった。
***
「げっ!」
就寝前に祈りを捧げていた天人族のサキーアは予期せぬ来訪者に柄にもない声をあげてしまった。
「何拾って来てるんですか?! 元いたところに捨ててきなさーい!」
捨て猫を拾ってきた子供を叱る様に、サキーアは檄を飛ばす。
「この子を知っているのか?」
はぁ、とサキーアは溜息をつく。
「直接見たのは初めてですが、これは10番目の子供。あの魔族が特に溺愛している息子ですよ」
エルフの見た目や雰囲気は完全にミオの生き写しだ。アーヴェントの溺愛は容易に想像がついた。
「え!じゅ、10番目?! それって子供が10人いるって事だよな?!」
「そうですが?」
「ミオは男だぞ? てか何でミオ達にそんなに詳しいんだ?」
この男は何も知らないんだな、とサキーアは思うがそれを説明している猶予はない。
「あの家族の事は陛下が良く愚痴りに…」
サキーアは苛立たしげに言った。かなり迷惑しているようだ。
「レオンハルトが??」
時折、里帰りしているが、レオンハルトからそんな事は一言も聞いた事が無かった。
「そんなことより、この子供をどうするつもりで連れて来たんです? 早くあの魔族のもとに返さないと、この国が、いや大陸が滅びますよ」
「当然保護する。この子は人間じゃないか」
「見た目は人間でも中身は違います! 無理に決まってるでしょー!」
サキーアは目を血走らせて必死に叫ぶ。美しい顔が台無しだ。
「十数年前国民である青年を生贄にして~、魔界との結界は今もガバガバのまま? 何をしているのかな神殿は?」
「脅しですか?!」
話にならないとばかりに、エルフを取り上げようとエドワルドに手を伸ばす。もちろんエドワルドはサキーアの手を器用にかわしながら、エルフを離さない。
「私は前にもあの魔族とは戦えないって言いましたよね。もちろん今もですよ、兄弟も増えてるんだから尚更です!」
「ふふん、俺がこの十数年、何もしてないと思ったか?」
エドワルドは腰の剣を見せた。柄には聖気を帯びた宝飾が施され、普通の剣ではないことがわかる。
「それは聖剣ですか?そんなもの…」
役に立たないと言おうとしたところで
「ぼ、僕もうお父様とお母様に会えないの?」
と、突然エルフがエドワルドに抱かれながらぐずぐず泣き出した。
「な、泣くな、頼むから泣くな!奴が来る!」
サキーアは拝むようにエルフを泣き止ませようとする。
ドゴォォォォォン!
けたたましい爆発音が響き渡る。神殿が揺れ、女神像がパキパキと音を立てる。
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