7 / 7
7話
しおりを挟む
引っ越してからも朝陽は手紙やメールをくれた。
でも、20歳になる年。朝陽の文字ではない手紙が届いた。
朝陽の母親からで病気で彼が亡くなったと。
元々心臓が弱かった朝陽は風邪をこじらせ……。
肺炎になり……それからあっという間に。
成人になれず……逝ってしまった。
嘘だと思った……きっと、ドッキリか何かでなかなか、長崎に帰らない自分を帰らせようと……なんてまで思った。
信じたくなかった。
だから、ずっとメールを送り続けた。
5年も……馬鹿みたいに。
故郷に戻って確かめる勇気なんてなくて……でも、夜空を見る度に胸が締め付けられて死にそうだった。
朝陽が好きだった北極星が空に輝いているから。
それを助けてくれたのが今付き合っている相手。
どことなく朝陽に似ていて……それで惹かれたのかも知れない。
今日、ここに来たのはその彼からちゃんと現実を受け止めて来いと言われたから。
駅について、驚いた……。
朝陽が居たから。
変わらない笑顔で。
大人にならない姿でそこに居て……。
不思議と怖くなくて、ほら、生きてんじゃん!!とさえ思った。
でも、商店街を歩いても誰にも朝陽は見えなくて……商店街のショーウィンドウに映ったのは自分だけ。
花火買いに行った時も店員に変な顔をされた。
朝陽と会話をしていたのだが店員には彼が見えず……独り言を言っているように見えたのだ。
朝陽はずっと待っていてくれたのだ。
あの頃のままで……。
どうして逃げてしまったのだろう?
朝陽も自分を好きだって言ってくれたのに。
水をはったバケツには花火が何本も突っ込まれていて……ほんの少し前までここに居た。
ここに彼は居たのに。
キスをされた唇もちゃんと感じたのに。
なのに彼は逝ってしまった……遠くへ。
侑斗がまだ行けない遠くへ。
侑斗はその場に座り込み声をあげて泣いた。
朝陽が亡くなったと聞いてから5年も経ってようやく。
ごめん朝陽。
5年も待たせてごめん……。
待っててくれてありがとう。
好きで居てくれてありがとう。
好きだったのに……。
◆◆◆
最後に朝陽の携帯にメールを送った。
『ちゃんと朝陽とお別れしました』
メールを送った数分後、初めて返事が来た。
『侑斗くん……ありがとう。ずっと、ありがとう……朝陽を忘れないでくれてありがとう』
彼の母親からだ。
朝陽が言っていた、どう返して良いか分からないと。
『こちらこそ、ありがとうございました……もう大丈夫です』
返事を返した。
『侑斗くん……朝陽の分も幸せになってください』
そう返事がきた。
どんな気持ちでこれを返してくれたのだろう?
「ごめんなさい……」
何度も繰り返した。
涙がつきないのが不思議だった。
顔を上げると今住んでいる所よりも鮮明に見える夜空。
ポラリスを探してよ……。
朝陽の声が聞こえた気がした。
end
表紙、挿絵 うめとよ様
でも、20歳になる年。朝陽の文字ではない手紙が届いた。
朝陽の母親からで病気で彼が亡くなったと。
元々心臓が弱かった朝陽は風邪をこじらせ……。
肺炎になり……それからあっという間に。
成人になれず……逝ってしまった。
嘘だと思った……きっと、ドッキリか何かでなかなか、長崎に帰らない自分を帰らせようと……なんてまで思った。
信じたくなかった。
だから、ずっとメールを送り続けた。
5年も……馬鹿みたいに。
故郷に戻って確かめる勇気なんてなくて……でも、夜空を見る度に胸が締め付けられて死にそうだった。
朝陽が好きだった北極星が空に輝いているから。
それを助けてくれたのが今付き合っている相手。
どことなく朝陽に似ていて……それで惹かれたのかも知れない。
今日、ここに来たのはその彼からちゃんと現実を受け止めて来いと言われたから。
駅について、驚いた……。
朝陽が居たから。
変わらない笑顔で。
大人にならない姿でそこに居て……。
不思議と怖くなくて、ほら、生きてんじゃん!!とさえ思った。
でも、商店街を歩いても誰にも朝陽は見えなくて……商店街のショーウィンドウに映ったのは自分だけ。
花火買いに行った時も店員に変な顔をされた。
朝陽と会話をしていたのだが店員には彼が見えず……独り言を言っているように見えたのだ。
朝陽はずっと待っていてくれたのだ。
あの頃のままで……。
どうして逃げてしまったのだろう?
朝陽も自分を好きだって言ってくれたのに。
水をはったバケツには花火が何本も突っ込まれていて……ほんの少し前までここに居た。
ここに彼は居たのに。
キスをされた唇もちゃんと感じたのに。
なのに彼は逝ってしまった……遠くへ。
侑斗がまだ行けない遠くへ。
侑斗はその場に座り込み声をあげて泣いた。
朝陽が亡くなったと聞いてから5年も経ってようやく。
ごめん朝陽。
5年も待たせてごめん……。
待っててくれてありがとう。
好きで居てくれてありがとう。
好きだったのに……。
◆◆◆
最後に朝陽の携帯にメールを送った。
『ちゃんと朝陽とお別れしました』
メールを送った数分後、初めて返事が来た。
『侑斗くん……ありがとう。ずっと、ありがとう……朝陽を忘れないでくれてありがとう』
彼の母親からだ。
朝陽が言っていた、どう返して良いか分からないと。
『こちらこそ、ありがとうございました……もう大丈夫です』
返事を返した。
『侑斗くん……朝陽の分も幸せになってください』
そう返事がきた。
どんな気持ちでこれを返してくれたのだろう?
「ごめんなさい……」
何度も繰り返した。
涙がつきないのが不思議だった。
顔を上げると今住んでいる所よりも鮮明に見える夜空。
ポラリスを探してよ……。
朝陽の声が聞こえた気がした。
end
表紙、挿絵 うめとよ様
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
happy dead end
瑞原唯子
BL
「それでも俺に一生を捧げる覚悟はあるか?」
シルヴィオは幼いころに第一王子の遊び相手として抜擢され、初めて会ったときから彼の美しさに心を奪われた。そして彼もシルヴィオだけに心を開いていた。しかし中等部に上がると、彼はとある女子生徒に興味を示すようになり——。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
目線の先には。僕の好きな人は誰を見ている?
綾波絢斗
BL
東雲桜花大学附属第一高等学園の三年生の高瀬陸(たかせりく)と一ノ瀬湊(いちのせみなと)は幼稚舎の頃からの幼馴染。
湊は陸にひそかに想いを寄せているけれど、陸はいつも違う人を見ている。
そして、陸は相手が自分に好意を寄せると途端に興味を失う。
その性格を知っている僕は自分の想いを秘めたまま陸の傍にいようとするが、陸が恋している姿を見ていることに耐えられなく陸から離れる決意をした。
幼馴染みに告白したら、次の日オレ当て馬になってたんですけど!?
曲がる定規
BL
登場人物
慎太郎 (シンタロウ)
ユキ
始 (ハジメ)
あらすじ
慎太郎とユキ、始の三人は幼馴染で、隣同士に住んでいる。
ある日、慎太郎がユキの部屋でゲームをしていると、ユキがポツリと悩みを口にした。『友達の好きと恋愛の好きって、何が違うの?』と。
密かにユキに想いを寄せていた慎太郎。ここは関係を一歩進められるチャンスだと思い、ユキに想いを告げる。
唇を近づけた慎太郎。そこに偶然やって来た始に、慎太郎は思いっきり殴られてしまう。慎太郎は何がなんだかわからないと混乱する。しかし、ユキと始に帰るよう言われ渋々帰宅した。
訳のわからないまま翌日になると、ユキと始は付き合い始めたと言われてしまう。
「この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。
そちらに加筆、修正を加えています。
https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24」
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
陰キャ幼馴染がミスターコン代表に選ばれたので、俺が世界一イケメンにしてやります
あと
BL
「俺が!お前を生まれ変わらせる!」
自己肯定感低めの陰キャ一途攻め×世話焼きなお人好し平凡受け
いじられキャラで陰キャな攻めが数合わせでノミネートされ、2ヶ月後の大学の学園祭のミスターコンの学部代表になる。誰もが優勝するわけないと思う中、攻めの幼馴染である受けは周囲を見返すために、攻めを大幅にイメチェンさせることを決意する。そして、隠れイケメンな攻めはどんどん垢抜けていき……?
攻め:逸見悠里
受け:佐々木歩
⚠️途中でファッションの話になりますが、作者は服に詳しくないので、ダサいじゃん!とか思ってもスルーでお願いします。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる

