美人なのに不人気?逆モテ異世界の真実

かのん

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転生先は“逆モテ世界”④

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私は、誰だ?
ここでは、何者なんだ?
否定するための“自分”が、ここには存在しない。

彼らは私の困惑など気にも留めず、勝手に話を続ける。

「まぁ、また男選びか?」
「欲張るなよ~」
「ブスでデブで貧乏なんだから、選べる立場じゃないだろ?」

――ブスで、デブで、貧乏。

その言葉が、胸に突き刺さった。
鈍い刃物で、内側をゆっくり抉られるような痛み。

かつて、私が人を見下すときに使っていた言葉だ。
軽く、何の罪悪感もなく、当然のように。

それを、今度は私自身が向けられている。

頭が、くらくらした。
立っている感覚が、急に遠のく。

彼らが去ったあと、私は外に出た。
逃げるように、空気を求めて。

そこは、貧民街だった。

崩れかけの家々。
ひび割れた壁。
舗装されていない道。
物乞いの子供たちの、乾いた視線。

腐臭と煙と生活の残滓が混ざった、重たい空気。
息をするだけで、胸が痛くなる。

なのに――奇妙な光景が広がっていた。

太っていて、身なりの悪い女性の周りに、男たちが群がっている。
食べ物を差し出し、荷物を持ち、必死に媚びている。
まるで、価値ある存在に取り入ろうとするかのように。

一方で。

痩せていて、顔立ちの整った女性は、
道の端で、冷たい視線を浴びていた。

「綺麗すぎて信用できない」
「どうせ浮気する」
「金かかりそう」

そんな囁きが、あちこちから聞こえる。
隠そうともしない、露骨な拒絶。

――おかしい。

この世界は、狂っている。

でも、周囲の人間にとっては、
それが疑いようのない常識なのだ。

私は、その瞬間、理解した。

ここは、
私がかつて持っていた価値が、一切通用しない世界。

美しさは、信用されない。
痩せていることは、危険視される。
金を持たない女は、「逃げない」と判断され、好まれる。

そして――
私は、最悪の形で“好条件”を満たしてしまっていた。

「……冗談じゃない」

唇を噛みしめる。
鉄の味が、じわりと広がる。

私は、こんな世界で、
こんな価値観の中で、
“都合のいい女”として生きるために転生したわけじゃない。

胸の奥で、何かが燃え始めた。
小さく、けれど確かな熱。

前世で、私は確かに性格が悪かった。
人を見下し、傷つけ、
気づけば孤独のまま死んだ。

でも――。

「だからって、
こんな世界を受け入れろっていうの?」

答えは、決まっている。

否。

この世界は、間違っている。

女が、自分の価値を歪められ、
男の都合だけで評価されるなんて、
そんなの、前世よりもずっと最低だ。

私は、ゆっくりと拳を握った。
震えは、もう恐怖だけじゃない。

美しさは、武器になる。
知識は、力になる。
金がなくても、生き方は選べる。

――この世界で、それを証明してやる。

まずは、生き延びる。
そして、学ぶ。
やがて、教える。

女は、男に選ばれなくても生きていけるのだと。

この瞬間、
私の「第二の人生」は、確かに始まった。
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