美人なのに不人気?逆モテ異世界の真実

かのん

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崩壊する記憶②

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「俺は、あんたを囲いたいとは思わない。ましてや、管理したいとも、所有したいとも思わない」

彼は壁から背を離し、少しだけ私との距離を詰めた。   

「俺はここで、小さな道具屋を営んでいる。
……といっても、ガロンのような成功者とは程遠い、ジャンク品を修理して売るだけの店だ。
名はカイル。あんたを拾った時、本当はすぐに追い出すつもりだったんだが……
あんたのその、今にも爆発しそうな目を見て、気が変わった」

カイル。 ようやく知った、命の恩人の名前。   

「カイルさん……どうして、私にそこまで?」

「理由なんてないさ。……強いて言うなら、今のこの世界が、間違ってる気がしたからだ」

彼は一瞬、言葉を探すように天を仰いだ。 

「女を条件で選び、男がそれを管理する。
そんなものが『幸福』だの『慈悲』だのと呼ばれているこの状況が、
どうにも吐き気がするほど間違っている。……俺は、あんたを支配したいんじゃない。俺の店の裏に来い。
そこなら、ガロンの目は届かない。あんたが『自分自身』を取り戻すまでの、ただの宿代わりだ」

カイルは私を「太った女」としても、「無力な弱者」としても見ていなかった。  
ただ、この世界の不条理に対して怒りを抱く「一人の人間」として見ていた。

私は、自分の汚れた拳を強く握りしめた。  
前世の私は、男に「選ばれる」ことでしか自分の価値を証明できなかった。
けれど、今は違う。  選ばれることと、生きることは、全く別のことだ。  
誰かの所有物として安全を手に入れるのではなく、私は私の足で立たなければならない。

「愛と管理は、違う。……選ばれることと、生きることは、違う」

私は、自分に言い聞かせるように呟いた。  
たとえこの体が、この顔が、前の世界の基準からどれほどかけ離れていようとも。
私が私の魂を誰にも明け渡さない限り、私は誰の所有物にもなり得ない。

「……いいですよ。カイルさん。あなたの店の裏まで、行きます」

私はようやく、掠れた声を整えて答えた。  
カイルは満足げに小さく頷き、先に立って歩き出した。

「来い。まずは、その泥を落としてからだ。……話はそれからでいい」

歩き出したカイルの背中を追いながら、私はもう一度、重たい灰色の空を見上げた。 
すべての男が、敵ではない。 でも、この世界の“常識”という名の怪物は、間違いなく私の敵だ。  
私は、この地獄のような「普通」を、必ず塗り替えてみせる。

 ――私自身のために。
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