美人なのに不人気?逆モテ異世界の真実

かのん

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前世の自分を思い出す

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カイルの背中を追いながら、私の頭の中ではガロンの言葉が、腐った泥のようにねっとりと渦巻いていた。

「逃げないだろ?」 「俺に頼るしかないだろ?」

その言葉は、私の自尊心を木っ端微塵に打ち砕いたはずだった。
だが、嫌悪感と同時に、喉の奥にこびりつくような「既視感」が私を襲っていた。  
この感覚は何だろう。
初めて会った男に、初めて言われた屈辱的な言葉のはずなのに、私はどこかでこの「構造」を知っている。

私は、ずっと「与えられる側」だった。  
前世の私は、美しさという天賦の才を盾にして、世界が自分に傅くのを当然だと思っていた。
男たちが差し出す高価な贈り物、甘い言葉、特別扱い。
それは私にとっての報酬であり、私が価値ある人間であることの証明書だった。  
そして、その免罪符の裏側で、私は無意識のうちに自分以外の人間を「仕分け」していた。

灰色の空の下、ぬかるんだ道を踏みしめるたびに、封印していたはずの記憶が、鮮明な色彩を伴って蘇り始める。

大学時代。  私の世界は、キラキラとした光に満ちていた。その光の輪の中に、彼女――美里は決して入ってこられない存在だった。  背は低く、少し太っていて、いつも自信なさげに背を丸めている。服は量販店の安物で、化粧っ気のない顔は、私の隣に並ぶと余計にその地味さが際立った。

私は、彼女を見ていた。  
慈しみでも、友情でもない。……“下から”見ていたのだ。  
彼女がいることで、私の美しさはより際立ち、私の華やかさはより正当化される。
美里という「基準点」があってこそ、私は自分が最高ランクに位置していることを確認できた。

ある日のゼミの飲み会。  
学内でも人気の、将来有望と言われていた先輩が私の隣に座り、熱心に話しかけてきた。 

「やっぱさ、リナって華あるよな。お前がいるだけで、場所の空気が変わるよ」 

私は少し小首を傾げて、完璧な角度で微笑んだ。 

「そんなことないですよ。でも、ありがとうございます」 

当然だと思った。私の努力……肌の手入れ、体型維持、仕草の研究……そのすべてが正解を導き出しているだけだ。

その時、向かい側に座っていた美里が、ポツリと言った。 

「リナって、いいよね。努力しなくても目立てて」  

彼女の目には、悪意など微塵もなかった。ただ純粋な、手の届かないものへの羨望。 
だが、私はその言葉を拒絶した。
私の「努力」を、彼女のような「持たざる者」に理解されたくなかった。
だから、私は最も残酷な形で言葉を返した。 「でもさ、美里ももう少し痩せたら変わるんじゃない?
 努力次第だよ」  軽く、冗談めかして。まるで彼女を励ます親友のような顔をして。 
その場が氷ついたのを覚えている。先輩たちも、失笑を浮かべて目を逸らした。
美里は、一瞬だけ傷ついたように目を見開いたが、すぐに引きつったような笑顔を作った。 

「そっか……。うん、頑張るね」

私はその笑顔を見て、勝利を確信した。彼女が私に逆らえないこと、
そして私が彼女を「矯正してやる立場」にいることの証明。
あの日、私は確かに彼女を容姿で、そして「選ばれる女」という絶対的な優越で、踏みつけにしたのだ。
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