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求め合うカラダ
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「皆さん、明けましておめでとうございます。今年から塾長をさせていただきます綾部です。ご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが、ご指導いただければと思います。先生方にも働きやすい職場になってもらうことが生徒のためにもなると思いますので、よろしくお願いします。」
パチパチパチ…
今日から塾が始まった。
新居を訪れた昨日は加奈子に家まで送ってもらった。
何もしたくなくて、髪の毛濡れたまま寝たら風邪を引いた。
「クシュン…」
「早瀬先生、風邪ですか?」
林先生が心配そうに聞いてきてくれる。
「あ、熱はないんですけど、ちょっと昨日髪の毛濡れたまま寝ちゃって。」
「彼氏に髪の毛乾かしてもらえばよかったのに~」
「林先生!」
「はいはい、彼氏がいない時は俺が乾かしてやるよ。」
「結構です。髪の毛すっごく痛みそう。」
「な、俺の髪の毛をみろよ!サラサラだろ!」
(男の短い髪を見せられても…)
「早瀬先生。」
「…え?あ、はい。」
先生に、先生って呼ばれるのにまだ慣れていなかった。
「風邪ですか?」
「すいません、熱はないんですけど…生徒に移さないようにマスクします。」
「昨日具合が悪かったって聞きました。大丈夫ですか?」
「大丈夫です。あの…安奈にもごめんって伝えておいてください。あと大丈夫だと。」
「…伝えておきます。」
塾での先生は、また高校の時の先生とは違って、どこかそっけない感じでもあった。
それが経営者としてもプレッシャーなのかもしれない。
「え!?早瀬先生って塾長と知り合い?てか奥さんとも知り合い?」
「奥さんは大学時代の友達なの。」
「そうなんだ~へぇ~」
「先生、おはようございます!」
生徒たちが塾にやってきて元気に挨拶をする。
「ふぅ…」
今は冬休みなので朝から夜まで授業があった。
「早瀬先生、顔色悪いよ。」
「え!?本当?」
林先生に言われて鏡をみると青白くなっていた。
「でもあと授業一回で今日終わりだから。」
「塾長も化学教えれるんでしょ?塾長に代わってもらったら?」
「うん…でも風邪引いたのは私が悪いんだし、明日休みだからゆっくり寝るよ。」
「雑用俺がやるから、早く帰れよ。」
「ありがとう。」
「俺って優しい~♪」
「はいはい、ありがとう。」(これをいわなきゃ本当いい男なのにw)
「さ、教室に行こうかな。」
“グラ・・・”
(…え?)
椅子から立ち上がると眩暈がしてそこから記憶が飛んだ。
「奈々ちゃん!?おい!大丈夫か?」
「早瀬先生が倒れてるよ!」
「早瀬先生大丈夫?」
遠くから林先生や生徒の声が聞こえる。
聞こえるけど体も重くて、口も目も開かない。
「早瀬!そこちょっとどいて!」
(この声…きっと先生だ…塾長なんだし、早瀬じゃなくて早瀬先生って言わなきゃだよ…)
“ゆらゆら…”
暖かくて気持ちがいい
私このぬくもり知ってる
この匂いも
私を包み込んでくれるこの手は
先生だ
「ありがとうございました。」
“ガチャン…”
「ん…」
「早瀬、気がついたか?」
「ここ…私の部屋?」
「今お医者さんに診てもらって帰ってもらったところだ。インフルエンザじゃないけど、軽い風邪と貧血らしい。」
「あ…授業は!?」
「俺は元化学の高校教師だぞ。心配ないから、横になって。」
「…色々とすいません。」
「あ、台所勝手に借りたから。卵粥食べれそうか?」
「え…あ、はい。」
手際よく先生がお粥をお皿にいれて持ってきてくれる。
「はい、どうぞ。」
「あ、いただきます……おいしい!先生料理できるんですね。」
「母親が病弱だったから、よく看病していたし、家事もやっていたよ。」
「あ…」(確か自殺で亡くなった…)
「最期は病死じゃなくて結局自殺だったけどな。」
「先生…」
「俺が殺したようなものだけどね。」
「え?」
「俺が教師を辞めたいって言ったから…そしたら急に病んでいってしまって…あの日…」
「あの日?」
「卒業式以来再会した日…母親の葬式だったんだ。」
(だから黒スーツだったんだ。)
「早瀬にはみっともないところばっかりだな、本当。今は経営者として気を張っているつもりだけど、こうやって早瀬と話すと素の自分がでるな。」
そういって少し寂しそうに微笑む先生が愛しくてたまらなかった。
「先生…どうして教師辞めたんですか?」
「…その話はまた今度な。病人だから横になって。」
そういって布団をかけられた。
「…先生、ありがとうございました。もう帰ってもらっても大丈夫です。」
「一人暮らしだけど大丈夫なのか?」
「…大丈夫じゃないっていったら傍にいてくれるの?」
パチパチパチ…
今日から塾が始まった。
新居を訪れた昨日は加奈子に家まで送ってもらった。
何もしたくなくて、髪の毛濡れたまま寝たら風邪を引いた。
「クシュン…」
「早瀬先生、風邪ですか?」
林先生が心配そうに聞いてきてくれる。
「あ、熱はないんですけど、ちょっと昨日髪の毛濡れたまま寝ちゃって。」
「彼氏に髪の毛乾かしてもらえばよかったのに~」
「林先生!」
「はいはい、彼氏がいない時は俺が乾かしてやるよ。」
「結構です。髪の毛すっごく痛みそう。」
「な、俺の髪の毛をみろよ!サラサラだろ!」
(男の短い髪を見せられても…)
「早瀬先生。」
「…え?あ、はい。」
先生に、先生って呼ばれるのにまだ慣れていなかった。
「風邪ですか?」
「すいません、熱はないんですけど…生徒に移さないようにマスクします。」
「昨日具合が悪かったって聞きました。大丈夫ですか?」
「大丈夫です。あの…安奈にもごめんって伝えておいてください。あと大丈夫だと。」
「…伝えておきます。」
塾での先生は、また高校の時の先生とは違って、どこかそっけない感じでもあった。
それが経営者としてもプレッシャーなのかもしれない。
「え!?早瀬先生って塾長と知り合い?てか奥さんとも知り合い?」
「奥さんは大学時代の友達なの。」
「そうなんだ~へぇ~」
「先生、おはようございます!」
生徒たちが塾にやってきて元気に挨拶をする。
「ふぅ…」
今は冬休みなので朝から夜まで授業があった。
「早瀬先生、顔色悪いよ。」
「え!?本当?」
林先生に言われて鏡をみると青白くなっていた。
「でもあと授業一回で今日終わりだから。」
「塾長も化学教えれるんでしょ?塾長に代わってもらったら?」
「うん…でも風邪引いたのは私が悪いんだし、明日休みだからゆっくり寝るよ。」
「雑用俺がやるから、早く帰れよ。」
「ありがとう。」
「俺って優しい~♪」
「はいはい、ありがとう。」(これをいわなきゃ本当いい男なのにw)
「さ、教室に行こうかな。」
“グラ・・・”
(…え?)
椅子から立ち上がると眩暈がしてそこから記憶が飛んだ。
「奈々ちゃん!?おい!大丈夫か?」
「早瀬先生が倒れてるよ!」
「早瀬先生大丈夫?」
遠くから林先生や生徒の声が聞こえる。
聞こえるけど体も重くて、口も目も開かない。
「早瀬!そこちょっとどいて!」
(この声…きっと先生だ…塾長なんだし、早瀬じゃなくて早瀬先生って言わなきゃだよ…)
“ゆらゆら…”
暖かくて気持ちがいい
私このぬくもり知ってる
この匂いも
私を包み込んでくれるこの手は
先生だ
「ありがとうございました。」
“ガチャン…”
「ん…」
「早瀬、気がついたか?」
「ここ…私の部屋?」
「今お医者さんに診てもらって帰ってもらったところだ。インフルエンザじゃないけど、軽い風邪と貧血らしい。」
「あ…授業は!?」
「俺は元化学の高校教師だぞ。心配ないから、横になって。」
「…色々とすいません。」
「あ、台所勝手に借りたから。卵粥食べれそうか?」
「え…あ、はい。」
手際よく先生がお粥をお皿にいれて持ってきてくれる。
「はい、どうぞ。」
「あ、いただきます……おいしい!先生料理できるんですね。」
「母親が病弱だったから、よく看病していたし、家事もやっていたよ。」
「あ…」(確か自殺で亡くなった…)
「最期は病死じゃなくて結局自殺だったけどな。」
「先生…」
「俺が殺したようなものだけどね。」
「え?」
「俺が教師を辞めたいって言ったから…そしたら急に病んでいってしまって…あの日…」
「あの日?」
「卒業式以来再会した日…母親の葬式だったんだ。」
(だから黒スーツだったんだ。)
「早瀬にはみっともないところばっかりだな、本当。今は経営者として気を張っているつもりだけど、こうやって早瀬と話すと素の自分がでるな。」
そういって少し寂しそうに微笑む先生が愛しくてたまらなかった。
「先生…どうして教師辞めたんですか?」
「…その話はまた今度な。病人だから横になって。」
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「一人暮らしだけど大丈夫なのか?」
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