26 / 66
告白
しおりを挟む
「今年は寒いな…」
奈々は手をこすり合わせて、時計台の下に立っていた。
雪は降っていなかったが、雪が降りそうなぐらい冷たい空気だった。
「もう24か…ふふッ」
奈々は去年のことを思い出していた。
先生と再会し、それから色んなことがあったことを――
「先生どうしているかな…」
『奈々…』
奈々は声が聞こえたほうへ振り向くが先生はいなかった。
「空耳か…」
奈々はもう一度前を向いて、手に息を吹きかけながら手をすり合わせる。
「え?」
後ろからフワッと誰かに抱きつかれた。
「誰だと思う?」
「…林先生でしょ?」
「やっぱバレた?」
「何で抱きついてくるの?」
「周りがカップルだらけだからさ~今日クリスマスだもんな。」
そう、今日はクリスマスで私の24歳の誕生日だ。
周りはカップルだらけで、みんな仲よさそうに歩いている。
「林先生元気だった?」
「てか博人でいいって…」
「ごめん、ついつい癖で…」
「まぁ、どっちでもいいけどさ。元気してたよ。でも奈々ちゃんいなくなって寂しかったよ。」
「え?」
「あ、みんなだよ、みんな!」
「でもみんな忙しいのによかったのかな?」
「いいんだって!送別会するって約束しただろ!」
そう、今日は最初の塾の送別会を忘年会もかねて奈々のことも招いてくれたのだ。
「地元は隣の県なんだよね?実家帰った?」
「…うん。お母さんに泣かれた。」
「当たり前だよ!」
「仕方ないよね…」
「…今、どこで何してるの?」「…元気してるよ。」
「本当に誰にも居場所つげないつもりなの?」
「うん…お母さんさえ知らないんだよ?」
「親ぐらい言ってやれよ。」
「…そうしたら博人君聞きに行くでしょ?」
「まぁ…でも周りに誰も知り合いいないんだろ?大丈夫なのかよ…」
「うん!意外と大丈夫だよ…ただ…」
「ただ?」
「こんな肌寒い日は、人肌が恋しくなるよね…」
「奈々ちゃん…あのさ…」
「ん?あ!見て!」
「え?」
「雪だ…」
「本当だ…クリスマスに雪なんてロマンチックだな…」
二人は横断歩道で信号が青になるのを待っていた。
奈々は手を挙げて雪を掴もうとする。
「何してんの?」
「なんかさ、雪が降るとこうしたくなるの…」
右の横断歩道を見るとたくさんのカップルが同じように信号が青になるのを待っていた。
「ほら、あの人だって、きっと雪を…」
「え?誰?」
同じく雪を掴もうとしているのか手を高々と挙げている人がいた。
「嘘…先生?」
手を伸ばして雪を掴もうとしているのは先生だった。
「せんせッ…」
呼び止めようと思ったが、隣に安奈の姿を見て声が出なくなった。
次の瞬間目の前が真っ暗になった。
林先生が手で奈々の目を覆っていたからだ。
「博人君…」
「さっきの続きなんだけどさ…」
「え?」
「俺と付き合わない?」
「え…」
「忘れるにはさ、次の恋っていうじゃん。」
「…」
そう言いながら林先生は手の力を緩め、奈々の視界は明るくなった。
もう信号が青になっていて、先生たちはすでにいなかった。
「とりあえずここのベンチに座ろうよ。先生たちどうせまだ来てないから。」
林先生に促されて奈々はベンチに座った。
「博人君、私…」
「うん…」
「私…やっぱり…」
「待って待って!!」
「え?」
「例えばの話例えばの!」
振られそうになったからか、林先生は告白を取り消そうとしていた。
「いやさ、新しい恋しないのかなって…」
「…」
「新しい恋をしたらさ、きっと忘れられるよ。」
「私さ、思うんだけど、きっと先生のこと忘れられない。おばあちゃんになっても、結婚しても。」
「結婚しても?」
「うん…だって私の色んなものを捧げた人だから。」
先生は初恋、初キス、初体験…色んな経験をした人だ。
「新しい恋をする時は、きっと先生との思い出が薄れた時だと思ってる。だけど今はまだ…薄れそうにないんだ…」
「そっか…」
ショックを受けたのか林先生は背中を丸くした。
「はぁ~よし、飲むぞ!今日は飲むぞ!」
「え!?う、うん。」
林先生の後を奈々は追った。
奈々は手をこすり合わせて、時計台の下に立っていた。
雪は降っていなかったが、雪が降りそうなぐらい冷たい空気だった。
「もう24か…ふふッ」
奈々は去年のことを思い出していた。
先生と再会し、それから色んなことがあったことを――
「先生どうしているかな…」
『奈々…』
奈々は声が聞こえたほうへ振り向くが先生はいなかった。
「空耳か…」
奈々はもう一度前を向いて、手に息を吹きかけながら手をすり合わせる。
「え?」
後ろからフワッと誰かに抱きつかれた。
「誰だと思う?」
「…林先生でしょ?」
「やっぱバレた?」
「何で抱きついてくるの?」
「周りがカップルだらけだからさ~今日クリスマスだもんな。」
そう、今日はクリスマスで私の24歳の誕生日だ。
周りはカップルだらけで、みんな仲よさそうに歩いている。
「林先生元気だった?」
「てか博人でいいって…」
「ごめん、ついつい癖で…」
「まぁ、どっちでもいいけどさ。元気してたよ。でも奈々ちゃんいなくなって寂しかったよ。」
「え?」
「あ、みんなだよ、みんな!」
「でもみんな忙しいのによかったのかな?」
「いいんだって!送別会するって約束しただろ!」
そう、今日は最初の塾の送別会を忘年会もかねて奈々のことも招いてくれたのだ。
「地元は隣の県なんだよね?実家帰った?」
「…うん。お母さんに泣かれた。」
「当たり前だよ!」
「仕方ないよね…」
「…今、どこで何してるの?」「…元気してるよ。」
「本当に誰にも居場所つげないつもりなの?」
「うん…お母さんさえ知らないんだよ?」
「親ぐらい言ってやれよ。」
「…そうしたら博人君聞きに行くでしょ?」
「まぁ…でも周りに誰も知り合いいないんだろ?大丈夫なのかよ…」
「うん!意外と大丈夫だよ…ただ…」
「ただ?」
「こんな肌寒い日は、人肌が恋しくなるよね…」
「奈々ちゃん…あのさ…」
「ん?あ!見て!」
「え?」
「雪だ…」
「本当だ…クリスマスに雪なんてロマンチックだな…」
二人は横断歩道で信号が青になるのを待っていた。
奈々は手を挙げて雪を掴もうとする。
「何してんの?」
「なんかさ、雪が降るとこうしたくなるの…」
右の横断歩道を見るとたくさんのカップルが同じように信号が青になるのを待っていた。
「ほら、あの人だって、きっと雪を…」
「え?誰?」
同じく雪を掴もうとしているのか手を高々と挙げている人がいた。
「嘘…先生?」
手を伸ばして雪を掴もうとしているのは先生だった。
「せんせッ…」
呼び止めようと思ったが、隣に安奈の姿を見て声が出なくなった。
次の瞬間目の前が真っ暗になった。
林先生が手で奈々の目を覆っていたからだ。
「博人君…」
「さっきの続きなんだけどさ…」
「え?」
「俺と付き合わない?」
「え…」
「忘れるにはさ、次の恋っていうじゃん。」
「…」
そう言いながら林先生は手の力を緩め、奈々の視界は明るくなった。
もう信号が青になっていて、先生たちはすでにいなかった。
「とりあえずここのベンチに座ろうよ。先生たちどうせまだ来てないから。」
林先生に促されて奈々はベンチに座った。
「博人君、私…」
「うん…」
「私…やっぱり…」
「待って待って!!」
「え?」
「例えばの話例えばの!」
振られそうになったからか、林先生は告白を取り消そうとしていた。
「いやさ、新しい恋しないのかなって…」
「…」
「新しい恋をしたらさ、きっと忘れられるよ。」
「私さ、思うんだけど、きっと先生のこと忘れられない。おばあちゃんになっても、結婚しても。」
「結婚しても?」
「うん…だって私の色んなものを捧げた人だから。」
先生は初恋、初キス、初体験…色んな経験をした人だ。
「新しい恋をする時は、きっと先生との思い出が薄れた時だと思ってる。だけど今はまだ…薄れそうにないんだ…」
「そっか…」
ショックを受けたのか林先生は背中を丸くした。
「はぁ~よし、飲むぞ!今日は飲むぞ!」
「え!?う、うん。」
林先生の後を奈々は追った。
0
あなたにおすすめの小説
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
俺様外科医の溺愛、俺の独占欲に火がついた、お前は俺が守る
ラヴ KAZU
恋愛
ある日、まゆは父親からお見合いを進められる。
義兄を慕ってきたまゆはお見合いを阻止すべく、車に引かれそうになったところを助けてくれた、祐志に恋人の振りを頼む。
そこではじめてを経験する。
まゆは三十六年間、男性経験がなかった。
実は祐志は父親から許嫁の存在を伝えられていた。
深海まゆ、一夜を共にした女性だった。
それからまゆの身が危険にさらされる。
「まゆ、お前は俺が守る」
偽りの恋人のはずが、まゆは祐志に惹かれていく。
祐志はまゆを守り切れるのか。
そして、まゆの目の前に現れた工藤飛鳥。
借金の取り立てをする工藤組若頭。
「俺の女になれ」
工藤の言葉に首を縦に振るも、過去のトラウマから身体を重ねることが出来ない。
そんなまゆに一目惚れをした工藤飛鳥。
そして、まゆも徐々に工藤の優しさに惹かれ始める。
果たして、この恋のトライアングルはどうなるのか。
苺の誘惑 ~御曹司副社長の甘い計略~
泉南佳那
恋愛
来栖エリカ26歳✖️芹澤宗太27歳
売れないタレントのエリカのもとに
破格のギャラの依頼が……
ちょっと怪しげな黒の高級国産車に乗せられて
ついた先は、巷で話題のニュースポット
サニーヒルズビレッジ!
そこでエリカを待ちうけていたのは
極上イケメン御曹司の副社長。
彼からの依頼はなんと『偽装恋人』!
そして、これから2カ月あまり
サニーヒルズレジデンスの彼の家で
ルームシェアをしてほしいというものだった!
一緒に暮らすうちに、エリカは本気で彼に恋をしてしまい
とうとう苦しい胸の内を告げることに……
***
ラグジュアリーな再開発都市を舞台に繰り広げられる
御曹司と売れないタレントの恋
はたして、その結末は⁉︎
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
先生の全部、俺で埋めてあげる。
咲倉なこ
恋愛
あれは完全に一目惚れだった。
先生と出会ってから俺は
自分の感情を
上手くコントロールできない。
俺だけのものになって、って。
どれだけ願っても
先生には届かない。
先生を想う気持ちばかりが強くなる。
世界中のすべての人間がいなくなって
先生と俺の二人だけになればいいのに。
先生。
俺、先生のこと…
独り占めしたい。
★・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
里巳 夕惺 (さとみ ゆうせい)
×
加ヶ梨 莉子 (かがり りこ)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・★
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる