ねぇ、先生。【R18】

かのん

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先生ver.

母親

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「ただいま…」



「健さん!よかった、帰ってきて…」



「母さん…今日は職場の人と飲むから遅くなるって言ったじゃないか。」



「それでもちゃんと帰ってくるか心配で眠れなくて…」



時刻はまだ日付が変わる12時前



20歳超えている大人の男をこういう風に心配する母親は本当は距離をとりたいと思っていた



だけど――



今日も帰ってこない父親や俺のご飯をちゃんとテーブルに並べているのをみると何も言えなくなる






この頃から少しづつ母親は記憶が曖昧になってきていた――







「お父さん?」



「…え?」



俺のことも何度かほとんど帰ってこない父親と間違うようになっていた。



最初は寂しくてそうなっているかと思っていたが…アルツハイマーだった



一人っ子の俺に執着してしまう気持ちもわかる



できるだけ母親の寂しさを埋めてあげたくて



母親の要望はできるだけのみこんできた



だけど今は



やりたいことがある――




「母さん…」



「なあに?」



「…俺教師を辞めたいんだ。」



「ふふ…冗談?」



「いや、冗談じゃなくて教師を辞めてサラリーマンになろうと思う。」



「サラリーマンて…どうして?お父さんみたいに私を家に一人ぼっちにさせるの?」



「母さん、今までみたいに定時にできるだけ帰ってくるから。」



「あの人だって結婚した時はそう言っていたわ!!!」



「母さん…」



「何を騒いでいる。」



「あなた…」



ほとんど家に帰ってこない父親がこんな時に帰ってくるなんて――



「…教師を辞めるのか?」



「…辞めたいって思ってる。」



「お前は何がしたいんだ?」




「…」



「やりたいことが見つかるまで俺の会社にいれてやってもいいぞ。」



「ダメよ!教師を辞めるなんて!」



「お前は!子供の人生をお前が決めるな!」



「あなたが…あなたがいつも家に帰って来ないから…この子を私一人で育てるしかなかったのよ!あなたは他の子供の進路のことしか頭になかったじゃない!だからこの子の進路や将来は私が決めてあげるしかないのよ!!」



“ガシャンッ!!”



母親は食卓に並んでいるお皿を父親に投げつける。



「やめなさい!!」



「いやぁぁぁ!!!」




この日近所の人の通報で初めて警察が家にやって来た――







そしてこの日を境に親父は家に帰って来なくなり
              母親はおかしくなった――




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