ねぇ、先生。【R18】

かのん

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先生ver.

抱きたかった、ずっと…

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“キィ……”


寝室のドアが開いたのはお昼に差し掛かったときで目を合わせずキッチンに立って安奈はコーヒーを入れ始めた。



「安奈…」



名前を呼んでも反応さえせず食器棚から来客用のコップを取り出しコーヒーを入れだした。



「誰か来るのか?」



「…」



無視されたままじゃ話し合いは進まない



ソファに座って雑誌を手にとった瞬間――



“ピンポーン”



「あ、来た来た!どうぞ~」



さっきまで無表情だった安奈がさっきとは別人みたいにテンションがあがっていた。



「「「お邪魔します!」」」



今の声――



もしかして・・・



「いらっしゃい!中に入って入って。」



「あ、ご主人、こんにちは。お邪魔します。」



「俺、出かけてくるからごゆっくり。」



安奈の友達が来るなら俺は外に出てまた今日の夜にでも話し合おう



そう思っていたら――



「早瀬…」



奈々も来ていたなんて・・・



「あ、お邪魔します。」



安奈が俺を試しているかのように俺と奈々が話している姿をじっと見つめてくる。



「今年もよろしくな。」



「はい、よろしくお願いします。」



普通どおりに…そう接するしかなかった



「フゥ…」



近くのカフェでタバコを吸いながら奈々たちが帰るのを待つことにした。



数時間はかかるだろうと思ったら一時間もしないうちに奈々と友達の一人が出てきたのが見える。



「大丈夫?奈々…」



「うん、大丈夫。大丈夫だから加奈子戻ってもいいよ。」



「ううん、また安奈の家にはいつでも行けるから。」



二人の会話は聞こえなかったけど、奈々の顔色が悪いのは見ていてわかった。


「あ、お帰りなさい。どうしたの慌てて…」



家に帰るとまだ友達が一人残っていて、安奈は普段どおりに俺を迎え入れた。



「早瀬の顔色よくなかったけど…どうしたのかなって…」



「気分悪かったみたい。寝室に案内したら帰るっていって…」



寝室のベッドをみると乱れたベッド…



このベッドを見て奈々はどういう風に思ったんだろう――



「安奈…今日は俺実家に泊まるから。」



「え…?」



「ごめん。今日は一人で考えたいんだ。」



「嫌だよ!!」



「安奈…?」



安奈が大きな声を出していることに友達が心配して声をかけてきた。



「勝手なこといってごめん。でも必ず戻ってくるから。そのときまた話し合おう。」



「健さん!」



安奈に呼ばれた声で一瞬体が止まったけど



目を閉じれば奈々の辛そうな表情がまぶたに焼き付いていて



奈々の方向へ足が勝手に動いた



携帯と財布だけ



年明け早々こんな形で家を飛び出すなんて…



奈々のところへいったって今は迷惑だ



実家に顔を出せばどうしたんだといわれる



ホテルもいっぱいで結局冷え切った塾にその日は泊まった――



「皆さん、明けましておめでとうございます。今年から塾長をさせていただきます綾部です――」



今日から塾が開始で、奈々の顔を見れたのはよかったけど顔色が悪そうだ



朝礼を終えて声をかけようとすると奈々は林先生と楽しそうに会話をしていた――



やきもちを焼ける立場ではないのに胸がざわついて仕方がない



「早瀬先生。」



「…え?あ、はい。」



二人の会話を割って入る俺は小さいな・・・



さっきまで笑顔だった奈々の顔が俺に声をかけられてこわばってくる。



「風邪ですか?」



「すいません、熱はないんですけど…生徒に移さないようにマスクします。」



俺がよそよそしく会話をするからか奈々もよそよそしく会話をする。




「昨日具合が悪かったって聞きました。大丈夫ですか?」



「大丈夫です。あの…安奈にもごめんって伝えておいてください。あと大丈夫だと。」



「…伝えておきます。」



俺が奈々から離れるとまた林先生と奈々は話し始める。



「塾長、明日からの出勤スケジュールなんですけど…」



「あ、はい…」



「あの二人って仲いいですよね~林先生は早瀬先生を好きみたいだけど、早瀬先生に彼氏がいたなんて…」



好きな相手に付き合っている人がいたら諦めるのが当たり前



相手のことを思って身をひくのが当たり前なのに――



奈々に彼氏がいるといわれても



ちっとも気持ちが変わらない
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