50 / 66
先生ver.
最悪の展開
しおりを挟む
目が覚めるとカーテンの隙間から眩しい光が熱を持っていて、もう朝ではなくだいぶ時間が過ぎたのだろうと思ったら11時半だった。
こんなにもぐっすりと寝たのはいつぐらいだろう
母親の介護が始まってからは夜中でも起こされていたし、安奈と結婚式をあげてからはソファで寝る生活
精神的にも身体的にも奈々と一緒にいることでリラックスできる
「…奈々…奈々…」
この部屋を出たらもうこの名前は呼べなくなる。
だからこそ何度でも・・・呼べる限り名前を呼びたかった。
「ん…」
「起きれる?もう昼前だよ。」
「え!?」
「「イッターー」」
奈々が勢いよく起きてお互い頭をぶつけてしまった
俺は頭をぶつけたからなのか
奈々に恋に落ちた瞬間からなのか
頭はズキズキと痛むのにその痛みさえ愛おしくて仕方ない
奈々が目の前にいるって実感できるから――
今までのこと
これからのことを俺たちは話した
俺と安奈が結婚式をした理由
俺が縁談を受け入れた理由
あのホテルで俺は捨てられたと思ったこと
結婚式の招待状で名前をみたとき俺のことなんてもう何も思っていないと思ったこと――
今まですれ違ってしまって今日に至るまでに時間がかかってしまった
そして…順番は変わってしまったけど安奈との生活は終わりにしないといけない
「安奈と安奈のお父さんと親父と話がしたいと思う。」
「…話ですか?」
「あぁ、このままでいい訳がない。まだ入籍していない今なら引き返れる。もっと早く引きかえすべきだった。」
さっきまでの幸せそうな笑顔からどんどん笑顔が消えていく
奈々は目も俺と合わせず下をうつむき始めた
やっぱり安奈は奈々にとって大切な友達なのだろう
だけどその友達と明らかにこれから亀裂が入る
友達を傷つけてまで自分たちの幸せを優先していいのか・・・
“ピリリリリッ…”
携帯に目をやるとディスプレイには【安奈】の名前
「じゃあ、俺いってくるよ。」
「はい。」
「また、明日塾で…」
「…」
玄関までの暗い廊下がまるで俺たちのこれからの未来のようだ
真っ暗で玄関っていうゴールを開ければ眩しい世界なのに・・・
玄関が重くて開けるには力がいる――
「奈々、大好きだよ。」
この言葉は
本当は何もかも片付いてからいうつもりだった
真正面から奈々と向き合って言いたかったけど
奈々のつらい表情をみていたら言わずにはいられなかった
陳腐な言葉に聞こえるかもしれないけど――
それでも自分がこの言葉を口にすることで覚悟を決めたということをせめて伝えたかったのかもしれない
奈々のあの今にも泣き出しそうな顔で見送ってくれたことを思い出すたびに胸が痛む
つらい思いをさせて申し訳ないって・・・
だけどもう一人つらい思いをさせてしまう人がいる――
「安奈…」
「健さん、いまどこ!?何度も電話したんだよ…」
「安奈…?どうした?」
「お父さんが…危篤なの。」
「わかった、すぐ病院に行くから。」
安奈と結婚式を挙げてからは、どちらの父親も通院はしていたものの元気にやっていたから、心配していなかったのに…
「健さん!!」
病室に入るなり安奈の母親や医師がいるのにもかかわらず抱きついてきた。
「健さん…お父さんがッ…」
人目をはばからず大声で泣く安奈に離れてほしいなんて言えなかった。
「2、3日が山です。」
「そんな…お父さん!いやだよ、お父さん!!」
「安奈、落ち着いて…」
母親が優しくなだめても安奈の耳には入ってこないようだ。
「安奈…俺、着替えとか持ってくるから。」
「え…帰っちゃうの…?」
さっきまでの悲しみにくれていた表情から今度は一気に怒りに満ち溢れた表情になる。
「ダメ!!絶対帰っちゃダメ!」
「安奈…」
昨日電話にも出ず家にも帰らず…安奈だって色々と俺のことは勘ぐっているはずだ
俺が病室を出たらもう帰ってこないと思っているのかもしれない。
「でも安奈、私たちも少し休んだり準備をしたほうがいいわ。」
「準備…?」
「お父さんがもしもの時…」
「お母さん…そんなこと言わないでよ…ッ」
「…人はいずれこのときを迎えるの。そのときに最高の道を残してあげるためにも早く準備してあげたほうがいいわ。」
「…わかった、じゃあ健さんはここにいて。私が家に戻るから。」
「あぁ、わかった。」
「ちゃんと…待っててくれるよね?」
「……あぁ。」
今は何を言ってもきっと取り乱す
安奈にはこんなことになって申し訳なく思っているのは俺も奈々も同じだ
できるだけ…できないとはわかっていつつも極力穏便に奈々のことを話したいと思っていた。
だけどまさかこのあと安奈が俺達二人の思いと
高校時代の俺達の関係を一人で知ることになるなんて――
嫉妬と憎しみと悲しみで・・・安奈を変えてしまった――
こんなにもぐっすりと寝たのはいつぐらいだろう
母親の介護が始まってからは夜中でも起こされていたし、安奈と結婚式をあげてからはソファで寝る生活
精神的にも身体的にも奈々と一緒にいることでリラックスできる
「…奈々…奈々…」
この部屋を出たらもうこの名前は呼べなくなる。
だからこそ何度でも・・・呼べる限り名前を呼びたかった。
「ん…」
「起きれる?もう昼前だよ。」
「え!?」
「「イッターー」」
奈々が勢いよく起きてお互い頭をぶつけてしまった
俺は頭をぶつけたからなのか
奈々に恋に落ちた瞬間からなのか
頭はズキズキと痛むのにその痛みさえ愛おしくて仕方ない
奈々が目の前にいるって実感できるから――
今までのこと
これからのことを俺たちは話した
俺と安奈が結婚式をした理由
俺が縁談を受け入れた理由
あのホテルで俺は捨てられたと思ったこと
結婚式の招待状で名前をみたとき俺のことなんてもう何も思っていないと思ったこと――
今まですれ違ってしまって今日に至るまでに時間がかかってしまった
そして…順番は変わってしまったけど安奈との生活は終わりにしないといけない
「安奈と安奈のお父さんと親父と話がしたいと思う。」
「…話ですか?」
「あぁ、このままでいい訳がない。まだ入籍していない今なら引き返れる。もっと早く引きかえすべきだった。」
さっきまでの幸せそうな笑顔からどんどん笑顔が消えていく
奈々は目も俺と合わせず下をうつむき始めた
やっぱり安奈は奈々にとって大切な友達なのだろう
だけどその友達と明らかにこれから亀裂が入る
友達を傷つけてまで自分たちの幸せを優先していいのか・・・
“ピリリリリッ…”
携帯に目をやるとディスプレイには【安奈】の名前
「じゃあ、俺いってくるよ。」
「はい。」
「また、明日塾で…」
「…」
玄関までの暗い廊下がまるで俺たちのこれからの未来のようだ
真っ暗で玄関っていうゴールを開ければ眩しい世界なのに・・・
玄関が重くて開けるには力がいる――
「奈々、大好きだよ。」
この言葉は
本当は何もかも片付いてからいうつもりだった
真正面から奈々と向き合って言いたかったけど
奈々のつらい表情をみていたら言わずにはいられなかった
陳腐な言葉に聞こえるかもしれないけど――
それでも自分がこの言葉を口にすることで覚悟を決めたということをせめて伝えたかったのかもしれない
奈々のあの今にも泣き出しそうな顔で見送ってくれたことを思い出すたびに胸が痛む
つらい思いをさせて申し訳ないって・・・
だけどもう一人つらい思いをさせてしまう人がいる――
「安奈…」
「健さん、いまどこ!?何度も電話したんだよ…」
「安奈…?どうした?」
「お父さんが…危篤なの。」
「わかった、すぐ病院に行くから。」
安奈と結婚式を挙げてからは、どちらの父親も通院はしていたものの元気にやっていたから、心配していなかったのに…
「健さん!!」
病室に入るなり安奈の母親や医師がいるのにもかかわらず抱きついてきた。
「健さん…お父さんがッ…」
人目をはばからず大声で泣く安奈に離れてほしいなんて言えなかった。
「2、3日が山です。」
「そんな…お父さん!いやだよ、お父さん!!」
「安奈、落ち着いて…」
母親が優しくなだめても安奈の耳には入ってこないようだ。
「安奈…俺、着替えとか持ってくるから。」
「え…帰っちゃうの…?」
さっきまでの悲しみにくれていた表情から今度は一気に怒りに満ち溢れた表情になる。
「ダメ!!絶対帰っちゃダメ!」
「安奈…」
昨日電話にも出ず家にも帰らず…安奈だって色々と俺のことは勘ぐっているはずだ
俺が病室を出たらもう帰ってこないと思っているのかもしれない。
「でも安奈、私たちも少し休んだり準備をしたほうがいいわ。」
「準備…?」
「お父さんがもしもの時…」
「お母さん…そんなこと言わないでよ…ッ」
「…人はいずれこのときを迎えるの。そのときに最高の道を残してあげるためにも早く準備してあげたほうがいいわ。」
「…わかった、じゃあ健さんはここにいて。私が家に戻るから。」
「あぁ、わかった。」
「ちゃんと…待っててくれるよね?」
「……あぁ。」
今は何を言ってもきっと取り乱す
安奈にはこんなことになって申し訳なく思っているのは俺も奈々も同じだ
できるだけ…できないとはわかっていつつも極力穏便に奈々のことを話したいと思っていた。
だけどまさかこのあと安奈が俺達二人の思いと
高校時代の俺達の関係を一人で知ることになるなんて――
嫉妬と憎しみと悲しみで・・・安奈を変えてしまった――
0
あなたにおすすめの小説
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
俺様外科医の溺愛、俺の独占欲に火がついた、お前は俺が守る
ラヴ KAZU
恋愛
ある日、まゆは父親からお見合いを進められる。
義兄を慕ってきたまゆはお見合いを阻止すべく、車に引かれそうになったところを助けてくれた、祐志に恋人の振りを頼む。
そこではじめてを経験する。
まゆは三十六年間、男性経験がなかった。
実は祐志は父親から許嫁の存在を伝えられていた。
深海まゆ、一夜を共にした女性だった。
それからまゆの身が危険にさらされる。
「まゆ、お前は俺が守る」
偽りの恋人のはずが、まゆは祐志に惹かれていく。
祐志はまゆを守り切れるのか。
そして、まゆの目の前に現れた工藤飛鳥。
借金の取り立てをする工藤組若頭。
「俺の女になれ」
工藤の言葉に首を縦に振るも、過去のトラウマから身体を重ねることが出来ない。
そんなまゆに一目惚れをした工藤飛鳥。
そして、まゆも徐々に工藤の優しさに惹かれ始める。
果たして、この恋のトライアングルはどうなるのか。
苺の誘惑 ~御曹司副社長の甘い計略~
泉南佳那
恋愛
来栖エリカ26歳✖️芹澤宗太27歳
売れないタレントのエリカのもとに
破格のギャラの依頼が……
ちょっと怪しげな黒の高級国産車に乗せられて
ついた先は、巷で話題のニュースポット
サニーヒルズビレッジ!
そこでエリカを待ちうけていたのは
極上イケメン御曹司の副社長。
彼からの依頼はなんと『偽装恋人』!
そして、これから2カ月あまり
サニーヒルズレジデンスの彼の家で
ルームシェアをしてほしいというものだった!
一緒に暮らすうちに、エリカは本気で彼に恋をしてしまい
とうとう苦しい胸の内を告げることに……
***
ラグジュアリーな再開発都市を舞台に繰り広げられる
御曹司と売れないタレントの恋
はたして、その結末は⁉︎
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
先生の全部、俺で埋めてあげる。
咲倉なこ
恋愛
あれは完全に一目惚れだった。
先生と出会ってから俺は
自分の感情を
上手くコントロールできない。
俺だけのものになって、って。
どれだけ願っても
先生には届かない。
先生を想う気持ちばかりが強くなる。
世界中のすべての人間がいなくなって
先生と俺の二人だけになればいいのに。
先生。
俺、先生のこと…
独り占めしたい。
★・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
里巳 夕惺 (さとみ ゆうせい)
×
加ヶ梨 莉子 (かがり りこ)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・★
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる