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先生ver.
運命ってありますか?②
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『お客さんどこまでですか?』
『空港へお願いします。』
『どこかへ旅行ですか?北海道は寒いから暖かいところへ私も行きたいですよ~』
『…そうですね。一人旅…ですね。』
『一人旅…ですか?……あれ?あなたもしかして昨日の…』
『え?』
“キキィーーー”
『お客さん大丈夫ですか!?』
『大丈夫です…』
猫が飛びだして急ブレーキをかけると、何かが助手席の下から奈々が座っている席へ転がってきた。
『これ…』
『どうされました?』
『このペン…もしかして昨日メガネをかけた男性を乗せませんでしたか?』
『あなたやっぱり昨日の…奈々…さん?』
『はい、そうです…どうして名前を?』
『乗せましたよ。あなたの名前を呼んで、なれない雪の中に飛び込んでいった男性を…』
『先生ッ……』
『…こんなこと聞いてはいけないのはわかっているんだけど…それでも昨日の男のあの熱い思いやあなたの今の表情をみたら聞かないわけにはいかない。』
『……え?』
『どこに…行く予定で?』
『……先生って呼ばれる仕事ができる場所なら、どこへでも行きます。先生と呼ばれる仕事をしていればきっとまた巡り合えるって信じているから。』
「君を心から慕い愛しているんだなって思ったよ。」
「俺はそんな人間じゃ…慕われるような人間じゃないです…」
「誰だって自分に自信はない。だけどそんな自分を慕って尊敬してくれる人間がいるって素晴らしいことだよ。だって世の中にはたくさんの人がいるんだから。その中からたった一人、君というその一人を見つけてくれたんだ。運命の人を――」
「運命…?」
「運命なんてないっていう人もいるけど、俺は運命はあるって思うよ。だって君とタクシーに乗せたのも、靴を貸したのも、彼女がこのタクシーに乗ったのも…きっと君たちはまだ繋がっているんだって教えてくれているって思うよ。」
手のひらに握り締めた奈々が書いたメモに書かれた【運命】の文字を見る。
運命…二人が離れるのも奈々は運命だと思うのか
ならまた会える
その運命の日までに俺は何をすればいいんだろう
「着いたよ。」
「あの…靴も…あと色々とありがとうございました。」
「二人がこのタクシーに乗ってくれる日を俺は待っているからな!」
見ず知らずの人にこんな風に温かく見守りながらも背中を押してくれる
このタクシーの運転手さんには感謝の気持ちでいっぱいだ
「奈々…奈々……」
空港にはそれほど人はいない
だから探しやすいけどどこを見ても奈々の姿は見えない。
やっぱりもう行ってしまったのだろうか
先生と呼ばれる場所へ――
“ドンッ…”
後ろから人とぶつかりさっきタクシーの運転手から返してもらったペンがポ
ケットから落ちてしまった。
「申し訳ございません、お客様。」
グランドホステスの人が謝りながらも女性と一緒に走り去って行く。
自分のペンを拾うとした時――
最初は自分の目が疲れているのかと思った
目の前に同じペン2本
まるで俺たちの関係を表わしているようなクロスした状態で床に落ちている
さっきぶつかったグランドホステスの人と去った女性の後姿をみると確かに奈々だった。
「奈々!奈々!!」
だけど俺の声は届かなくて奈々は搭乗手続きをしてしまい中に入ってしまった。
「すいません!俺も彼女と同じところへ行きたいんです。」
「申し訳ございませんが、ただいま東京行きは満席となっておりまして…」
「東京…?でもこの飛行機じゃないと意味がないんです!!」
「お客様困ります!!次の便でお願いいたします。」
「でもッ………」
東京に行くってことは地元でもなく大学で過ごした場所でもなく本当に知らない土地へ行くのか?
東京じゃなくもしかして乗り換えてどこか違う場所へ…?
考え出したらキリがない
だけど少しでも手がかりがほしくて
俺も結局次の便で東京へいってみたけど、東京に着いたら人が多くて余計に奈々の姿を探すのは無理だった。
ただこんな人ごみの中でも何となく感じた
奈々はもう東京にはいないってこと――
『空港へお願いします。』
『どこかへ旅行ですか?北海道は寒いから暖かいところへ私も行きたいですよ~』
『…そうですね。一人旅…ですね。』
『一人旅…ですか?……あれ?あなたもしかして昨日の…』
『え?』
“キキィーーー”
『お客さん大丈夫ですか!?』
『大丈夫です…』
猫が飛びだして急ブレーキをかけると、何かが助手席の下から奈々が座っている席へ転がってきた。
『これ…』
『どうされました?』
『このペン…もしかして昨日メガネをかけた男性を乗せませんでしたか?』
『あなたやっぱり昨日の…奈々…さん?』
『はい、そうです…どうして名前を?』
『乗せましたよ。あなたの名前を呼んで、なれない雪の中に飛び込んでいった男性を…』
『先生ッ……』
『…こんなこと聞いてはいけないのはわかっているんだけど…それでも昨日の男のあの熱い思いやあなたの今の表情をみたら聞かないわけにはいかない。』
『……え?』
『どこに…行く予定で?』
『……先生って呼ばれる仕事ができる場所なら、どこへでも行きます。先生と呼ばれる仕事をしていればきっとまた巡り合えるって信じているから。』
「君を心から慕い愛しているんだなって思ったよ。」
「俺はそんな人間じゃ…慕われるような人間じゃないです…」
「誰だって自分に自信はない。だけどそんな自分を慕って尊敬してくれる人間がいるって素晴らしいことだよ。だって世の中にはたくさんの人がいるんだから。その中からたった一人、君というその一人を見つけてくれたんだ。運命の人を――」
「運命…?」
「運命なんてないっていう人もいるけど、俺は運命はあるって思うよ。だって君とタクシーに乗せたのも、靴を貸したのも、彼女がこのタクシーに乗ったのも…きっと君たちはまだ繋がっているんだって教えてくれているって思うよ。」
手のひらに握り締めた奈々が書いたメモに書かれた【運命】の文字を見る。
運命…二人が離れるのも奈々は運命だと思うのか
ならまた会える
その運命の日までに俺は何をすればいいんだろう
「着いたよ。」
「あの…靴も…あと色々とありがとうございました。」
「二人がこのタクシーに乗ってくれる日を俺は待っているからな!」
見ず知らずの人にこんな風に温かく見守りながらも背中を押してくれる
このタクシーの運転手さんには感謝の気持ちでいっぱいだ
「奈々…奈々……」
空港にはそれほど人はいない
だから探しやすいけどどこを見ても奈々の姿は見えない。
やっぱりもう行ってしまったのだろうか
先生と呼ばれる場所へ――
“ドンッ…”
後ろから人とぶつかりさっきタクシーの運転手から返してもらったペンがポ
ケットから落ちてしまった。
「申し訳ございません、お客様。」
グランドホステスの人が謝りながらも女性と一緒に走り去って行く。
自分のペンを拾うとした時――
最初は自分の目が疲れているのかと思った
目の前に同じペン2本
まるで俺たちの関係を表わしているようなクロスした状態で床に落ちている
さっきぶつかったグランドホステスの人と去った女性の後姿をみると確かに奈々だった。
「奈々!奈々!!」
だけど俺の声は届かなくて奈々は搭乗手続きをしてしまい中に入ってしまった。
「すいません!俺も彼女と同じところへ行きたいんです。」
「申し訳ございませんが、ただいま東京行きは満席となっておりまして…」
「東京…?でもこの飛行機じゃないと意味がないんです!!」
「お客様困ります!!次の便でお願いいたします。」
「でもッ………」
東京に行くってことは地元でもなく大学で過ごした場所でもなく本当に知らない土地へ行くのか?
東京じゃなくもしかして乗り換えてどこか違う場所へ…?
考え出したらキリがない
だけど少しでも手がかりがほしくて
俺も結局次の便で東京へいってみたけど、東京に着いたら人が多くて余計に奈々の姿を探すのは無理だった。
ただこんな人ごみの中でも何となく感じた
奈々はもう東京にはいないってこと――
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