【R18】秘密。

かのん

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桜先生。④

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『ゴホッ…』



『ん…拓也?』



『うっ…』



『苦しいの?桜先生呼ぼうか?』



拓也が弱弱しく頷く。



“プルルルル…プルルルルッ…”



『出ない…』



夜中だろうが電話したら必ず出てくれるのに…



『僕、桜先生のところに行ってくるから。』



『うん…ゴホッ…』



柏木先生――



どうしてだろう、なんだか胸騒ぎがする



本当は僕たちは部屋から出てはいけなかったけど



この日はお父さんに怒られることなんて頭には最初からなかった



ただ桜先生に早く会いたかった



“コンコンコン…”



ノックしても返事がない



『桜先生…?』



ドアを少し開けるとドアの隙間から桜先生が粉薬を飲んでいる姿が見える。



『桜先生!』



『和也君…』



『拓也がまた苦しそうで…桜先生もどこか病気なの?』



『いや、違うんだ和也君…』



『ごめんな、和也君…』



『桜先生?』



桜先生、どうして体震えているの?



どうして泣いているの?



『男と男の約束忘れるなよ?』



琴音の主治医になること――



『うん。』



『今からお父さんくるから…拓也のことも頼んだから…お父さんがきたらこれを渡してくれる?』



渡されたのは茶色い封筒



後ろには桜先生の名前が書いてある



『もうすぐお父さん来るから…それまで拓也君のそばにいて。』



桜先生の声がどんどん細くなるにつれて顔色も悪くなっていた。



『でも先生も顔色が…』



『大丈夫だから…ほら、早く…』



桜先生にそういわれて気になりつつ先生の部屋を出ようとする。



『和也君――』











『今日見たことは秘密だよ。』














桜先生の最後の言葉だった――









『拓也!』



父親がそれから慌てて部屋に入ってきた。



父親が拓也の処置が終わるのを待ってから桜先生の手紙を渡した。



『桜から…?』



いつも怒鳴られてばっかりだったけど



この日はさらに怒鳴られた



『なぜこの手紙をもっと早く渡さない!!』



父親が形相を変えて部屋を出て行った。



いつもと違う二人の態度や表情――



子供でも何かが起こっていることがわかる…



和也は父親の後を追ってみる



『桜!!しっかりしろ!桜!!!』



ほんの少し開いている扉から桜先生の部屋をのぞいてみると父親が桜先生を抱きかかえて呼びかけていた。



だけどもう桜先生の手は床についたまま――



『馬鹿だ…コイツは本当に馬鹿だ…』



なんでいつも怒っているお父さんが肩を震わせているの?



後姿しか見えないけど…桜先生みたいに泣いているの?



じゃあ、桜先生はもう――




『はぁッ…ハァッ…』



急に死に対する恐怖が強くなって



怖くなって走って自分の部屋に戻った。



違う、桜先生は死んでない



ただちょっと気を失っているだけ



父親がきっと助けてくれる、きっと…



きっと助けてくれるって



そう思いたかった――



だけど次の日から桜先生は部屋にこなくなった。



電話しても部屋に行ってもいなかった…



『桜先生…僕をおいて行っちゃったの?どうして…』



“カサッ…”



『これ…』



和也の足元にあったのはあの日桜先生が飲んでいた粉薬の袋



中には少しだけ薬が残っている



『この薬が…』



桜先生をつれていった薬



“ガサガサ…”



本棚にはたくさんの医療の本がある



もしかしたらここから何か手がかりが…



この薬がどんなものか――













『あなた…誰?』











『え…?』



後ろを振り向くと腰まである長い髪、桜色のパジャマ――



『琴音…』



会わないように気をつけていたのに



琴音に会ってしまったんだ――
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