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10月10日③
しおりを挟む“ピンポーン”
「え?」
母親ならインターホンは押さない
もしかして恭平?
敦子は満面の笑みで玄関を開ける
“ガチャッ…”
「なぁんだ~」
「なぁんだじゃね~だろ!」
「こうちゃんか…」
「悪かったな、誰か待ってたの?」
幸治は家の中へと入っていく
「お、お母さんかと思ったの!」
幸治は幼なじみで家も徒歩五分
小学校から大学まで一緒だ
幸治に恭平のことがばれたら面倒くさそうだ
「こうちゃんこそ何しにきたの?」
幸治はリビングのソファにドカッと座る。
「誕生日ケーキたべにきた」
「ちょっと!それならその前に言うことあるでしょ~」
「あ~」
「年とったね!」
敦子は幸治の頭を叩く
「いって~」
「こうちゃんだって、あと一ヶ月すれば同じ年になるでしょ!」
敦子は怒りながら幸治の側から離れる
「敦子、こっち来て。」
「何で私が行かなきゃいけないの。用があるならこうちゃんが来てよ。」
敦子は台所の方へ行こうとしていた
“ギシッ…”
「え?」
“シャラン…”
敦子の首にはネックレスがかけられた
「これ、やる。」
幸治が後ろからネックレスをつけてくれたのだ
クローバーの形のシルバーのネックレスだった
「こうちゃん…ありがとう。」
敦子は後ろを向いてお礼を言った時には幸治はソファに戻ろうとして
背中姿しか見えなかった
後姿しか見れないが耳まで真っ赤だった
「大事にするね!
「…」
「ふふ…こうちゃん何飲む?お茶?コーヒー?」
「じゃあコーヒーで…敦子、あのさ。」
「何?」
「俺…」
“ガチャ…”
「ただ今~」
「お母さん、お帰り。」
「ごめんね、遅くなって。あら、こうちゃん久しぶり~今日ご飯食べていく?」
「あ、うん、まぁ。」
「小学生のときは毎日食べていたものね。今日は敦子の誕生日だからご馳走よ。あ、誕生日だから今日来てくれたの?」
「ご馳走とケーキ食べにきた。」
「ふふ、こうちゃんは素直じゃないところは変わらないのね。」
「お母さんもコーヒー飲む?」
「うん、もらおうかな?」
母親がキッチンに入り敦子からコーヒーをもらう
「ん?」
「敦子、なんか服臭うよ?雨降ってた?」
「私が帰ってくるとき降ってたの」
「そんなんだ…着替えておいで。」
「うん着替えてくる。」
敦子は二階へと向かった
「こうちゃん、あのネックレスプレゼントしたの?」
「あ、うん。」
「あなた達付き合ってるの?」
「いや…まだ…」
「こうちゃん、自分の気持ちは伝えないと!こうちゃんが息子になってくれたら、おばちゃん嬉しいわ。」
「うん…でもなんか一緒にいるのが当たり前すぎて、もし関係が壊れたらと思うと怖くて…」
「あーおばちゃんにそんな話するの恥ずかしいんだけど。」
幸治は頭をボリボリかく
「ふふ、そうね。」
敦子の母親は料理をしようとキッチンへ向かう
「あら?」
食卓にあったバラの花をみつける
「バラもこうちゃんが?」
「え?違うよ。」
「…こうちゃん、早く告白したほうがいいかもよ。」
「え?どういうこと?」
「この赤いバラ、蕾でしょ?敦子もしかしたら男の子からもらったのかもよ。」
「え!?どうしてわかるの?」
「花言葉は、純潔、純粋な愛、愛の告白、そして…あなたに尽くします。」
「え…でも敦子の周りにそんな花をあげるような男いないのに…」
「今日誕生日だし、その子告白したのかもよ。」
「まじか…でもおばちゃんもよく花言葉知っているね。昔男にもらったことがあるとか~?」
幸治が冗談半分で言う
「そうね…」
“ガチャ…”
「お待たせ~」
「敦子、ご飯手伝って。」
「え~今日は主役だから手伝いたいくない~」
敦子はブツブツ言いながら台所へ向かう
幸治は敦子の母親が花瓶に刺した赤いバラの蕾を見ながら
あの雨の日のことを思い出していた
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