天使に恋をした。

かのん

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二人の夢②

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「…先生。」






「なあに?」






「先生は一目ぼれしたことありますか?」







「フフ、あるわよ。」







「本当ですか?」



「何で好きなのか、どこが好きなのか、友達から始まるわけじゃないからどうして好きなのか説明できないわよね。」






「…はい。」






「先生もね、うまくいえないんだけど、その人に一目ぼれして、その人のこと知れば知るほどどんどん惹かれて…結婚30年目。」







「え!?結婚したんですか?」






「フフ、今でも主人に惹かれているわよ。出会って32年経っても。」



先生はもう50歳は過ぎていた。





先生は外見はハッキリいって普通だった。





雅が相手する女性はいつも身なりがキレイで外見にお金も力も注いでいる女性達ばかりだから余計そう思うのかもしれない。






だけど旦那さんのことを話している先生は、年上なのに可愛くて守ってあげたいような感覚になった。






自分の気持ちを純粋にうちあけ、一途に誰かを思う気持ちはこんなにも人を美しくするのだろうか。



女は外見がよくてお金を自分につぎ込んでくれるモノ





好きという言葉ほど嫌いな言葉はない






どうせ自分から離れるくせに母親みたいに…






王子のキャラを演じて






女が喜んでお金をつかってくれればそれでいい



別に好きじゃなくたって抱ける





キスもできる





甘い言葉もささやける






だって相手はモノだから






感情なんてないモノだと思っているから











でも本当は限界だった












真莉亜にであって






心の奥底のどす黒い部分まであの瞳でみられている気がして







こんな汚い感情を持った自分にも






天使が微笑かけてくれる












今までの自分を取り戻すチャンスかもしれない









「一度きりの人生だから、頑張りなさい!」





「はい…って痛い!」





「もっと元気よく!」





先生はにこにこしながら雅の背中に渇をいれる。






「…はい!」



「先生みてみて!お姉ちゃんのお城すごいよ!」







「本当だね!手先器用なんですね。」







「昔から黙々と作業するのが好きなので。」






真莉亜は子供達に砂場で囲まれていてキレイなお城を作っていた。



「お姉ちゃん…甘い香りがする。」






「え?…あ、これかな?今日作ってお世話になっている看護婦さんたちにあげようと思ったから。」






かばんの中からクッキーを出した。







「すごい!美味しそう!」



「食べたいな…」





一人の女の子がつぶやく。






「これはお姉ちゃんが看護婦さんに作ったものなのよ。」





先生が女の子を優しく諭した。







「今日は病院行かないから、よかったらみんなで食べて。」



「わぁい!やったー」





子供達は喜んで部屋の中に入っていく。






「よかったんですか?」






「明日また焼きますので…それに子供達の喜んだ声がすごく嬉しいです。」






「すごく優しい子じゃない。」





先生が雅に小声でつぶやく。



「お姉ちゃんありがとう!お兄ちゃん、お姉ちゃんとまた遊びにきてね!」







「うん、またね!」






真莉亜が嬉しそうに手を振っている。






「真莉亜、俺車できているから車で送るよ。」






「いいの?じゃあ、お願いしてもいい?」



“ブロロロロ…”






車を走らせると真莉亜が嬉しそうに語りだす。






「今日は本当に楽しかった!雅君、よかったら今度行くとき誘ってもらってもいい?」







「え…」






「…ダメ?」



「…実はあの施設、なくなるんだ。」





「え…あの子達はどうなるの?いつなくなるの?」






「今月いっぱいで…まだ次の施設が決まっていない子もいるんだ。」






「そんな…施設が決まっていない子はどうなるの?あんなにいい子達なのに。」




「でも、そうならないように頑張るって施設長言っていたから、大丈夫だって信じるしかないかな。」






「そっか…雅君も寂しいんじゃない?」






「うん。自分の家がなくなるって感じかな。施設長や先生達は親で、子供達は兄弟みたいな感じだから、家族がバラバラになる感覚もあるよ。」






「家族を失う気持ち、わかるよ。」






そういいながら真莉亜は窓の外をみていた。



(家族のこと想っているのかな…)





真莉亜の横顔をみながら赤信号を待つ。






「また新しく施設を作るなんてどう?私援助したい。」






「いや、真莉亜にそれはさせれないよ。それなら俺がお金をだすよ。それぐらい稼いでいるし。だけど施設長が…」






「施設長が?」



「それはできないって…」








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