最後の恋人。

かのん

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許されない恋⑤

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美咲さんの真っすぐに裕也さんを思っている顔



裕也さんのように思っても報われない恋をしている顔




どちらも見ているこっちまで胸がしめつけられるような顔をしているけど



目の前にいる女の子の顔は嫉妬で満ち溢れていて怖い顔――



二人とも片思いで苦しい恋をしているけどいい顔しているけど



目の前の人は怖い……



恋って人を狂わすって本当なんだ。



私は、こんな風な顔をする恋をしたくない。




『美咲さんは告白とかしないんですか?』



『告白……したいけど勇気がなくて。』



『…私もです。この関係が壊れたらどうしようって。』



『わかるよ……この関係を壊さないと前にも進めないのに、壊れるほうが怖くて…ダメだね。』



美咲さんには気持ちを伝えて前に進んでほしいって思う。



だって裕也さんはお母さんのことしか見ていない気がするから――



でも恋に悩んでいる美咲さんを見ていたら…何も言えなくなる。


私も……頑張って前に進みたい。



今度、また今度っていつも告白するのをあと伸ばしにしているから



今日こそ、今帰ったら葵君に言ってみよう!



『痛ッ――』



『ボーっと歩いてるんじゃねぇよ!』



『すいません…』



だって前なんか向いて歩けないよ。



自分と似た人が道路の向こう側で歩いているんだから……



『お母さん……?』



『お母さん!?』



『え…?』



『あ……すいません、あまりに似ているので。』



人違いかもしれない。だけどあまりによく顔が似ているから――



『あなた…名前は?何歳?』



『ミサキです。カタカナでミサキ……』



『もしかしてッ……マリアの施設の子?』



年齢を言う前に相手の女性が答えてしまった。
しかも泣きながら……もう相手の女性が母親なのはわかった。


『まさかこんなところで会うなんて……よかったら家にこない?ここではなんだから…』



女性のあとをついて行くとボロボロのアパートに案内された。



部屋の中にはコップや食器が二つ、男の人のシャツや下着もある。



そっか、男の人と暮らしているんだ。



『今日はあの人いないから、ゆっくりしていって。』



『これ…どこか体悪いんですか?』



『大丈夫よ、ちょっと眠れないだけだから。』



睡眠薬……過剰摂取はよくないと耳にするけど本当に大丈夫なんだろうか?



この人が母親と聞かされて、何となく守りたくなって――



子供ながらこのときバッグに睡眠薬を隠してしまった。



『そういえば、お兄ちゃんは元気?』



『え…?』



『あら……お兄ちゃんもいるわよね?施設に。』



『何のこと…ですか?』



『お兄ちゃんもここにいるからっていったら、あなた喜んで行ったのよ。』



『誰……ですか?』



『葵よ。施設でも葵って名前なのかわからないけど……そうだ、この写真。』



そういって渡された写真は葵君の小さいころの写真で
葵君も隣に母親に抱かれている赤ちゃんにも腕にほくろがある。
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